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海成粘土



海成粘土

 大阪近辺の丘陵地にある地層を作っている泥岩には2種類あるのが知られています。 泥岩といっても硬い石のようではなく、粘土細工の粘土を少し固くしたような固さなので見た目通り粘土と呼んでいます。 この粘土の内、一つは明るいい青色で崩れにくくて垂直な崖を作る粘土と、暗い色をしていて崩れやずく緩やかな傾斜の崖になる粘土との2種類です。 後者からはチヨノハナガイやシズクガイといった海に住む貝化石、場所によってはカキ化石が地層を作るほど密集して含まれていることもあります。 このことから、後者は海でたまった粘土ということで海成粘土とされています。前者はこれに対して淡水成粘土といいます。 粘土を洗ってにごり成分を捨てた残りを顕微鏡で見ると珪藻の化石が入っていることがわかります。 この珪藻の種類からも海にたまったものなのか湖や沼でたまったものなのかがわかります。 背景画は隠岐の海成の珪藻土の拡大です。
 写真では草が生えていないところが見えます。この部分に海成粘土が露出しています。 海成粘土の大きな特徴は、風化してくると表面に硫黄や石膏の結晶が噴き出してくることです。鉄の錆のようなかたまりも見えることがあります。 結晶は、粘土中に含まれていた黄鉄鉱(硫化鉄)が酸化されてできたものです。酸化によって亜硫酸イオンや硫酸イオンが作られます。 これらのイオンによって粘土は強酸性を示すようになります。 このために、植物が育たなかったり、地中に埋めた鉄管が急速にさびるといったことが起こります。 写真では植物が育ちにくいために裸地になっています。
 海成粘土にたくさん含まれる黄鉄鉱は、細かい粒子だと黒っぽい色をしていますから、風化を受けていない粘土は黒っぽく見えることになります。 海といった環境でたくさんできるのは、酸素のない状態では海水に含まれる硫酸イオンに含まれる酸素を使って有機物を分解する生物が増えるからです。 この過程で、硫酸イオンから酸素の取り除かれた硫化物イオンが作られ、水中の鉄イオンと反応して硫化鉄(黄鉄鉱)ができます。 淡水中では、硫化鉄の代わりに青い色をしたリン酸鉄(藍鉄鉱)が作られることが知られています。
 大阪府南部から香川県にかけて分布する和泉層群の最下部にある泥岩でも、細かく割れたり硫黄の析出といった海成粘土と同じような特徴が見られます。 このような特徴は、丘陵地の地層に限られないようです。


分 類:堆積岩類(砕屑岩類)
岩石名:  泥    岩  
産 地:大阪府茨木市南春日丘




 海成粘土が作る地層は、一度に広範囲で作られることが知られています。 このような地層があると、離れた地点でも同じ時期にたまったものと判断できます。 同じ時期にたまった地層かそうでないかを調べることを「地層の対比」と呼んでいます。 海成粘土層があると、同時期にできたということがわかります。このように同時期かどうかの判定に使われる地層を「鍵層」といいます。
 海成粘土ができた時期は、大阪近辺では何回かあることが知られています。 各時期ごとにできた地層に対して、第一粘土層(Ma1層:Maはmarine clayの略)、第2海成粘土層 ……… と名前がつけられています。 海成粘土層を鍵層とするには何回目のものかは見た目では区別できないので、少し物足りないところがあります。
 写真の海成粘土層は、真ん中くらいの段になったところにアズキ火山灰層が挟まれていることから、 第3海成粘土層(Ma3)であることがわかります。火山灰は約87万年前に北九州耶馬渓で噴火したものが風に流されてやってきたこともわかっています。

2023.06.14





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