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吹割の滝
吹割の滝
群馬県沼田市追貝

 吹割の滝は滝幅が広く、滝面が馬蹄形に曲がっていることから、日本のナイアガラと呼ばれることがあります。 国土地理院の地図には、その広さのためなのか、滝ではなく吹割瀑と書かれています。 曽木の滝 滝幅が広いのは、滝の上面が平らになっているからです。同じような特徴を持つ滝としては、鹿児島県伊佐市の曽木の滝があげられます(右写真)。 こちらも日本のナイアガラと自称しています。どちらがナイアガラの滝に似ているでしょうか。
 どちらも共通しているのは、滝を作る岩盤の岩石が比較的新しい時代の溶結凝灰岩であることです。 溶結凝灰岩は、巨大な火砕流によって作られます。大量に流れてきた火山灰・軽石などがたまります。 その時には、まだ相当な熱さになっています。その熱で、火山灰や軽石が溶けます。溶けるといっても高温の飴のような状態でしょう。 これが接着剤の働きをして、火山灰を固くかためてしまいます。溶結部と呼ぶことがあります。 同じ火山灰層でも上の方は空気によって冷やされますから、それほど高温になりません。 飴のようなものでかためられていないので、削られやすくなります。
 火砕流で流されてきた場所が川によって削られればどのようになるでしょうか。 溶結部の上面まで削られたあとは、横方向に削られていき平らになっていきます。 このようにして、滝上部の千畳敷と呼ばれるような平坦面ができます。
 今度は削られ残された溶結部に注目します。たまったときは、非常に高温でした。それが冷えるに従って収縮していきます。 縮まった岩石の中には、垂直に立った柱状の割れ目ができます。これが柱状節理です。 柱状節理は火山岩に特徴的なものですが、溶結凝灰岩にも見られます。 柱状節理があってその下がえぐられると、節理に沿って柱が倒れるように岩石が崩れていきます。 川岸には柱をたくさん並べたような、大きな切り立った崖が作られます。同時に川幅も一気に狭くなります。
 吹割の滝には、柱状節理のような構造は見られません。温度が低かったとか、かなりゆっくり冷えたのが原因でしょう。 それでも、目に見えないような節理があるようです。両岸の崖は切り立っています。 そう考えても、向こう側の崖を見ていて気になるのが、滝の下面も同じ岩石のように見えることです。あまり下がえぐられているようにも見えません。 同じ岩石は下流にある鱒飛の滝まで続きます。火砕流が何回かに分けて流れ、 二つの滝が作る段の所に、溶結が弱くちょっと柔らかいところが挟まっているためなのかも知れません。
2016.6.10 掲載



 他にも日本のナイアガラといえそうな滝はいくつかあります。その例を挙げてみます。 滝の高さの割りに滝幅が広く、上流側の谷底が平坦な場所を選んでいます。どの滝も火砕流堆積物の溶結部を流れ落ちています。

 神川大滝です。
 鹿児島県錦江町にあります。
 滝の幅はそれほど広くありませんが、地下水が柱状節理のすき間から湧きだしているところが広い範囲にみられます。 岩石は、入戸火砕流堆積物(シラス)です。
神川大滝

 関之尾の滝です。
 宮崎県都城市関之尾にあります。
 滝のすぐ上流側で用水を取っています。実際の水量はもっと豊富なようです。
 滝を作っている岩石は、曽木の滝と同じ加久藤火砕流堆積物です。
関之尾滝

 とどろ滝です。
 熊本県山都町中心部にあります。町中を五郎ヶ滝川が流れていて、そこにかかっています。
 高さは1mちょっとと滝としては小さく、堰堤のようにも見えます。流れ落ちるところに岩が並んでいること、 上流部の川底にも同じ岩質の岩が点在していることから、自然にできたものといえます。
とどろ滝

 鮎返の滝です。
 熊本県南阿蘇村栃の木にあります。阿蘇カルデラ南谷を流れる白川がカルデラ出口の近づいたところにできています。 側面の崖が大きく崩落しています。熊本地震によるものです。 ここに見られる地層と比較してみると、下の方にある固そうな岩石の上面から流れ落ちています。 火砕流堆積物の溶結部のようです。
鮎返の滝

 夫婦滝です。
 熊本県南小国町田の原にあります。ほぼ同じ高さから2本の滝が落ちています。 これは水流が二手に分かれたものではなく、別の川に由来します。左側が田の原川にできた雄滝、右側がその支流の小田川にできた雌滝です。 川の合流点にできた珍しい形の滝です。
 川に挟まれた尾根部や川の両岸の上面はほぼ同じ高さで平らになっています。岩石は阿蘇山からの火砕流堆積物(Aso-4?)です。
夫婦滝

 鍋釜滝です。
 熊本県小国町の下城公園にあります。上流側から見ると規模を小さくした吹割の滝のようです。 名前の由来は、鍋や釜のような形をした窪みが見られることによります。
 滝の下流には、落差の大きい下条の滝があります。 岩石は阿蘇山からの火砕流堆積物(Aso-4?)です。
鍋釜滝

 鍋ヶ滝です。
 熊本県小国町黒渕にあります。滝の裏側、下の方は未固結の堆積物でできていて、滝の飛沫によって大きく浸食されて洞窟のようになっています。 滝の裏側にまわることができ、そこから滝を眺めることができます。
 岩石は、阿蘇山からの火砕流堆積物(Aso-4)です。
鍋ヶ滝

 原尻の滝です。
 豊後大野市緒方町にあります。ここも日本のナイアガラと称しています。
 上流部の平坦な部分の広さは唯一です。水量も多いようです。水流を右側に寄せていますので、滝は右側中心になっています。
 岩石は、阿蘇山からの火砕流堆積物(Aso-4)です。
原尻の滝

 沈堕の滝です。
 豊後大野市清川町にあります。雪舟が「陳田瀑図」として描いたことで有名です。
 発電用水を取るために、滝の流れが全くなくなっていた時代がありましたが、現在は復活しています。 滝のすぐ上に、用水を取るための堰が作られています。
 岩石は、阿蘇山からの火砕流堆積物(Aso-4)です。
沈堕の滝

2017.7.26 2018.7.15追記




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