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おっぱい岩
おっぱい岩
熊本県苓北町西川内

小おっぱい岩  天草下島の北海岸に転がっている岩です。その形から名前がつけられている事は、一目見てわかります。 他にも(たとえばここ)おっぱい岩と呼ばれるものがあります。これほど見事なものはそうないでしょう。 ここには、もう一つ小おっぱい岩というのもありますが、砲弾型のようにも見えます(右写真)。
 成因を考えるヒントを探してみることにします。まず岩の向こう側の面ですが、真ん中がわずかに膨らんでいるものの、ほとんど平らになっています。 それと平行する面に境にして、こちら側では色の違う層が見られます。真ん中あたりから、先端近くにかけてわずかに赤っぽくなっているところです。 また、先端部付近に、リング状の段がいくつか見られます。これも、裏側の面と平行です。
 これらの模様は、地層中の葉理と考えられます。この付近の地層に見られる葉理は、地層面とほぼ並行です。 地層は海側に傾いているもののほとんど水平です。また葉理から、どちらを下にしていたかわかります(背景写真の葉理では正しい向きになっています)。 小おっぱい岩で観察したところ、先端部の方が下だったことがわかりました。こちらの岩(大おっぱい岩)でも同じだったでしょう。
 つまり、先端部を下にするようにして地層中に埋もれたいたものが、浸食によって削り出され、最後は不安定になって折れて倒れたものでしょう。 その後の大きな波によって場所は移動しているかも知れません。
 次に問題になるのは、どうしてこのような形に削られたかということです。地層中の岩石が、地層に含まれるものによって固くなっていることがあります。 ノジュールといいます。そのような場合、ノジュールが浸食から取り残されます。 おっぱい岩の周辺を見ると、地層から削り残された丸いかたまりがたくさん密集しているところがあります。これも、ノジュールの一種と見て良いでしょう。
 ノジュールとすると、丸くなっていないのはどうしてかということと、固くした物質は何かということが問題になります。 その物質が何かということははっきりしません。形から考えられるのは、地下から何かの物質が上昇してきて、 おっぱい岩の地層に入ったときに、広がりながら上昇していったのではないかということです。これで、下の方が狭く上が広いことの説明がつきます。 先端部の尖ったところは、太さが一定のように見えます。これはその物質の通り道だったのでしょう。
 上昇してきた物質については、解説にはメタン菌の関与が書かれています。そのあたりについては、きちんと分析してみないとわからないでしょう。
2017.09.10





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