日食観察のための観測機材を作ってみました
黒点観測などにも使うことができます
太陽を間接的に見るために考えたのが針穴式の観察装置です。これでじゅうぶんに観察できるのですが、実物を見ているという実感がありません。
そこで、この装置以外にも直接見るための装置も紹介します。
日食中の太陽を直接見るには、何らかの方法で太陽の光を弱める必要があります。かっては、すすをつけたガラス板を通してみるとか、
下敷きを利用するとかいった方法が紹介されました。最近ではこれらの方法は赤外線を弱めないため目に悪影響を及ぼすということで、
使わないようにと警告されています(国立天文台のHPより)。CDやFD(フロッピーディスク)、ビデオテープ(書かれていないがFDと同等、
通して太陽を見ても結構明るい)も使えないようです。
太陽光を遮光するのに何がいいのかについては国立天文台のHPには書かれていないのですが、一般的に使われているのは、
バーダー社のアストロソーラーフィルムです。天体用品の専門店で入手できます。A4サイズのものが3000円弱で手に入ります。
後半の直接見るための装置では、このフィルムを使っています。
内容
1.針穴式の装置です
2.レンズによる投影装置です
3.フィルムを使っためがねです
4.カメラ・望遠鏡へのフィルム取り付け方法です
材料は、筒状のボール紙、アルミ箔、頭の大きいピン、厚紙です。
筒状のボール紙は、布地の芯を使いましたが、印刷用原紙(マスターロール)やサランラップの芯なども使えます。
長さが長いほど、太陽像は大きくなります。理論的に筒の長さの100分の1の直径の太陽像になります。
30cmの長さの芯では、直径が3mmですが、直接見るより大きく見えるので、これでもだいじょうぶです。
作り方はまず、筒状のボール紙に、太陽像を見るための穴を端から10分の1の位置に開けます。
じょうぶなボール紙の場合は、のこぎりで斜めに切り込みを入れてから、まっすぐくりぬきます。
樹木を切り倒すときに最初に入れる切れ込みのような感じです。できた切り口はカッターナイフなどできれいにします。
薄手のボール紙(サランラップの芯など)の場合は、直接カッターナイフで切り込みを入れてください。
次に、厚紙を筒の直径の倍くらいの大きさの正方形に切り抜き、切り込みを入れた側の端に貼り付けます。
これが太陽像ができる場所になります。筒に付ける側を白く塗っておくちとよく見えます。
筒の内側は、黒く塗っていなくても大丈夫なようです。気になる方は黒く塗っておいてください。
筒の反対側の端はアルミ箔をかぶせます。接着剤で固定してください。
かぶせたアルミ箔のちょうど真ん中に、出来るだけ小さく針で穴を開けます。大きく開けると太陽像はぼやけます。
小さいと像は暗くなりそうですが、それでもじゅうぶんな明るさになります。
最後に、筒のアルミ箔側にピンを刺し、その真下の厚紙に印を入れて完成です。
使い方は、筒のアルミ箔側を太陽の方に向けます。筒の影ができないように向きを調節し、
ピンの頭の影が厚紙の印と重なったときに、筒の切り込みから中の厚紙をのぞくと太陽像が見えます。
大きな黒点なども見ることができるはずですが、
この装置を考案してからまだ観察されるような黒点は現れていません。水星の日面通過は確認できませんでした。
一般的な太陽面の観測方法は、天体望遠鏡に太陽投影板を取り付けてみる方法です。
同じ原理を使って、投影する装置を作ってみました。100均ショップでうられている双眼鏡を使えばできそうですが。
接眼レンズに凹レンズが使われていますから投影には使えません。カメラつきフィルムのカメラレンズがあったのでそれを利用しました。
焦点距離は長くなりますが、ルーペなども利用できるでしょう。
対物レンズ部、鏡筒部、投影部の3つの部品を作ります(左図)。
対物レンズ部は、広口キャップつきの紙パックの底を切り落としました。
使ったレンズでは太陽が投影できる状態の時、2つのレンズ間の距離は18cmでしたので、もう5cmほど長くした方がよかったようです。
100均ショップの双眼鏡対物レンズをフタに丸い穴を開けたところに差し込んで固定しています。
鏡筒部は、牛乳パックの底と上部を切り落として筒状にします。これだけでじゅうぶんつかます。
拡大率が大きくなるので、太陽の動きが速くなるために、ドブソニアン型の台も作りました。
牛乳パックとの固定部は、ペットボトルキャップとそれにぴったりはまる円筒ボール紙があったので、台と鏡筒別々に固定しています。
ペットボトルの口にあるねじの所でも利用できそうです。
作ったものは、固定位置を下の方につけすぎていました。投影部が1/3程度はまった状態で上下に回転できる高さにした方がいいようです。
投影部は、キャップつき紙パックのフタに穴を開けてレンズを貼り付けています。
キャップの表面に対物レンズを通った太陽の光が焦点を結んだ状態で当たりますので、光を反射するようにアルミホイルを貼っています。
底部の側面を四角くくりぬき、投影された太陽像が見えるようにします。内部側面は念のため黒く塗っています。しなくてもいいでしょう。
内部の底には大きさをあわせて白い紙を貼っています。
牛乳パックに広口紙パックがぴったり収まります。鏡筒部に接眼部と投影部を差し込みます。
太陽がでている状態で鏡筒部の影が一番小さくなる状態にすると太陽が導入できます。
接眼部か投影部をスライドさせるとピントを合わすことができます。その状態が右写真です。
太陽めがねの工作方法として一番簡単なのは、3D立体視用の赤青めがねと同じように作る方法でしょう。ただ問題なのはフィルムが銀色で、
鏡のようになって目のある側のものを写して見えるため、光を弱められた太陽が暗く見づらくなってしまうのが問題です。
そのため、めがねの枠を大きくする、光の漏れそうなすき間をなくす、できるだけ顔に密着できるようにする等の工夫が必要です。
上の写真のめがねでは、鼻の部分を切り取らずに外側に折り出すことによって、ここから入り込む光を少なくなるようにしています。
また、横に大きく出ている部分を人差し指と中指の間(中指と薬指でもよい)に挟んでみると、横から入る光を防ぎ見やすくなります。
右の写真は、内側からの反射を押さえるために、眼鏡に取り付ける可動式のサングラスの外側にフィルタを貼ってみたものです。
横から入る光をさえぎるといった工夫は必要なくなります。サングラスは100円ショップで入手しました。
ガラスの面は曲面なので、平面のフィルムは貼りづらいのですが、フィルムの周囲を接着剤をつけた紙で強引に固定するようにしています。
レンズ部分だけを覆うと周囲から光が入ってきて太陽を見づらくなります。レンズの間のすき間からは太陽が直接見えてしまうことがあるので、
ここに紙を貼りさえぎるようにしています。慣れてくればこれでじゅうぶんですが、できれば周囲も広めに覆っておいた方がいいでしょう。
使い方は、太陽と違う方向で眼鏡をセットし、顔全体を太陽に向けてから見るようにします。
見つからなければ何回かやり直してください。太陽の方向を眼鏡を外して探してはいけません。
カメラのフィルタとしては、減光用のフィルタが売られていますから利用することができます。使ってみた感じでは、
ND8が2枚とND400の合計3枚の組み合わせで適正露出になるようです。交換レンズ毎にこの組み合わせのフィルタを用意していると、
相当な金額になります。また、この減光方法では直視には向いていません
*1ので、ファインダーをのぞく事はできません。
また、皆既日食撮影の場合、すぐに外したりつけたりできる必要があります。
これらのことを考えてみるとソーラーフィルムでフィルタを作ったほうがよいのでしょう。
*1 この組み合わせでは、700nm前後の波長域が基準の8倍程度透過されているようです
(天文教育普及研究会の報告より)。さらに青色系のフィルターを加えれば基準内になる可能性があります。
ソーラーフィルムの取り付けで一番簡単なのはレンズキャップを利用する方法です。これでは、撮影範囲が狭ばまりそうな気がしますが、
太陽の撮影では絞りが絞られていることが多いのでだいじょうぶです。右のフィルムでは70mmレンズでもF3以上の絞りでは問題にはなりません。
300mm以上の望遠レンズにはフードがついていますが、フードの外側にフィルタ枠をつける場合、フードは動かないようにしておきましょう。
レンズキャップがない場合、太さの合う空き缶などを利用することもできます。太さがちょうどあう空き缶などが見つかったら、
底を適当な大きさに切り抜きます。直接ソーラーフィルムを貼り付けると、フィルムが傷つくことがあります。そこで、厚紙でドーナツ型の円盤を作り、
フィルムをここに貼り付けます。円盤の内径は、カン底をくりぬいた大きさより少し小さめにしておくのがよいでしょう。
携帯用にしている小型デジカメでは、ペットボトルのキャップがちょうどよい大きさでした。ところがプラスチックキャップは光が通り、うまく写りません。
そこで、黒ペンキをぬり光が入らないようにしました。
天体望遠鏡には、キャップについている太陽観察用の絞りあなを利用することができます。
接眼レンズをのぞくときに太陽が目に入ることがあり危険です。天頂プリズムを使うなど太陽の方に顔を向けないように工夫してください。
また、使う前にフィルムの穴が空いていないか入念にチェックしてください。
双眼鏡への取り付け方法です。写真の双眼鏡は100円ショップで購入したものです。双眼鏡ではキャップの予備がありません(キャップがない場合も)。
カンなどを使って外れたりすると非常に危険なので、枠から自作するしかないでしょう。厚紙を適当な幅に切り対物レンズの枠の周囲を2周させます。
このとき、1周目と2周目とはのりなどでしっかり接着します。次に、こうしてできたリングの外周より厚紙の幅分半径の大きな円盤に切り取ります。
この円盤には、リングの内径より小さな穴を開けます。また、リングの外径より外側は菊の花のような形に切り取ります。リングと円盤を重ね、
円盤の菊の花びらの部分を折り曲げリングに接着します。これにさらに外側に合うように同じような円盤を作り、間にフィルムを挟んで接着します。
側面は、厚紙のテープで固定すると完璧です。もしこの双眼鏡を太陽観察専用にしようと思うのなら(安いものなら簡単に割り切れますね)
対物レンズの枠に直接固定するのが一番簡単です。
できた双眼鏡を使って太陽をのぞくと、接眼レンズの脇から太陽光が目に入ってきます。
これでは見にくいし危険なので、接眼レンズの周囲を覆うように遮光板をつけておきましょう。
写真の状態でも手で隠す部分とあわせて太陽をさえぎることができます。
少しでも穴が空いていたり、どこかから太陽の光が入りこんでくると大変危険です。ちょっとでも明るいものが見えたら使うのをやめましょう。
太陽の方向を確認するために、直接太陽を探してもいけません。
2007.07.29 日食観察器 掲載
2020.06.15 レンズ式投影装置記載