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鬼の舌震
鬼の舌震
島根県奥出雲町 大馬木川

 大きな岩がたくさん積み重なっています。伝説では、上流に住む姫が夜な夜な川をさかのぼってくるワニを嫌って、川に大岩を投げ込み、 せき止めて上がって来られないようにしてできたとされています。名前と伝説が正反対の印象を受けます。「鬼(ワニ)が慕って」という意味だそうです。
 この巨岩はどのようにしてできたのでしょうか。解説には、「両岸の岩壁は、節理面そのものが急崖をなし谷底に傾斜しており、 谷底には巨礫が累積しています。この巨礫の中には平らな面が残されているものが多く見られますが、これは崩落以前の節理面の名残です。 (原文のまま)」つまり崖崩れによって上から落ちてきたことになります。
 節理とは、岩石中にできている割れ目を言います。この付近の岩石は花こう岩で、方状節理といって直角に交わる3つの面に平行に節理ができます。 従って、岩が自然に割れると真四角(直方体)になります。写真右上の岩は、真四角のなので節理面に沿って割れてできたものだとわかります。
 写真の場所では、巨岩がたくさん積み重なっています。付近一帯では、岩の多いところ、少ないところとに分かれているようです。 中くらいの量の所がないところを見ると、多いところでは何回も落石を繰り返し、岩をたくさん積み重ねたのではないようです。 大規模な斜面崩壊を起こし、一度に大量の岩を落としたと考えられます。崩れ落ちた岩で川がせき止められ、天然のダムが造られました。 川の水は岩を乗り越え流れていました。岩の上面に水の流れが削って作った甌穴に似たお盆状のへこみがたくさんあります。
 また、岩の多いところは、写真のように両岸が切り立った崖になっています。あまり節理らしきものは発達していません。 このようなところは、岩盤が硬く崩れにくいのが特徴です。逆に節理が多いと、岩石が風化しやすくなるので、大きな岩を崩すこともありません。 ちょうど転がっている岩の大きさと同じ10m間隔くらいで節理が入っている所が大規模に崩れやすいのでしょう。 写真を撮った位置から奥にいくほど節理が発達するようになり、少し入ったあたりにそのような場所があるのでしょう。

2011.06.26



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