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散歩道のささやき
春の天気の周期変化

 春や秋の天気は周期的に変わります。学校の授業で特定の曜日だけ雨が降り、日曜日になると天気がくずれ、 出かけられなくなるということがよく起こります。春先には暖かい日と寒い日とが繰り返していくうちに、だんだん暖かくなっていきます。 寒い日がだいたい3日、暖かい日が4日続くことが多いので、「三寒四温」と呼ぶことがあります。 この言葉は本来は中国東北部から朝鮮半島にかけての地域で、冬場の寒さは3日我慢したら4日は何とかしのげるという意味で使われていたものです。 日本では、西日本から関東にかけての地域でおこる、周期的な天気変化に用いられるようになっていったものです。 秋は、春の天気と同様に周期的に変化しだんだんと寒くなっていきます。それでは、どうして春や秋の天気が周期的に繰り返されるのでしょうか。
春の天気図 天気図の変化
 暖かくなったり、寒くなったり、はれたり曇ったりといった気象変化が生じるときにどのようなことが起こっているのでしょうか。 一般に天気変化は、天気図で説明されますので、天気図を見ていくことにします。右図は2012年3月21日15時の天気図です(気象庁HPから転載)。 日本列島東の海上に低気圧があり、日本列島から遠ざかっています。また、黄海には移動性高気圧があり日本列島に近づいています。 2・3日前は低気圧の通過により天気は悪く雨が降り、その後ふいた北西の風に冷たい空気が運ばれ気温が下がったものの、 高気圧の接近により風は治まり次第に暖かくなっていることがわかります。翌日も穏やかな天気が続くものの次第に雲が厚くなっていきます。 その後、高気圧の後方にある低気圧が接近するようになると、再び天気は悪くなっていくことが予想できます。
 低気圧の通過により天気がくずれ、高気圧の接近により回復するということ繰り返されることによって、春や秋の天気は周期的に変っていきます。 天気の移り変わりは、低気圧と高気圧が交互にやってくるからと言い換える事ができます。しかしこれではまだ最初の問いの答えにはなっていません。 どうして春や秋にだけ高気圧や低気圧が交互にやってくるのでしょうか。
 高気圧・低気圧が西からやってくることにヒントがありそうです。
偏西風の働き
 西風といえば、偏西風を思い浮かべます。16世紀に始まる大航海時代、帆船で世界中を駆けめぐっていると、北半球の低緯度地域では北東の風が、 中緯度地域では南西の風がよく吹くことがわかりました。そこで北東の風に対して「貿易風」、南西の風に対して「偏西風」と名付けました。 このような風が吹く原因として、地球規模の大気の循環が関わっていると考えられるようになってきました。赤道付近で上昇した大気は、 南北に広がっていくため、赤道付近の気圧を下げます。広がった空気は緯度30度付近に集められ気圧を上げ高気圧帯を作ります。 地表付近で高気圧帯から赤道に戻る風は、地球自転による天候力の影響で向きを西向きに、高緯度地域に向かう風は向きを東向きに変えられます。 この結果、北半球では、北東の貿易風と南西の偏西風が作られます。
 大局的には、赤道付近の低圧帯(赤道収束帯)と中緯度付近の高圧帯(亜熱帯高圧帯)によって風向きの説明が付きますが、 上空の風がどのようになっているかわからない状態で推定している点に注視しておく必要があります。
 偏西風に流されて、移動性高気圧・低気圧が運ばれて来るようにも思えますが、いくつかの疑問も生じます。 もともと、偏西風はこのような低気圧や高気圧が作り出した風のはずです。それが低気圧高気圧を押していくとは考えられません。 もし押されるとしても、動かない高気圧(ふつうは気団といいます)や低気圧との違いは何なのでしょうか。 さらに、移動性高気圧は小笠原の方向に移動し、低気圧はオホーツク海の方向に移動する様にも見えます。 低気圧と高気圧で偏西風の押し方が違うのも何か変です。
上空の風のながれ
 その後、上空の大気の流れがわかってくるとともに偏西風の意味合いが変わってきます。この文章ではこれ以後、初期の偏西風を「古典的偏西風」、 上空の流れを加味した偏西風を単に「偏西風」と呼ぶことにします。
 上空では、地球上どこでも西風が吹いています。特に緯度で30度から60度にかけての地域で強く、これが偏西風になります。 古典的偏西風との違いは、上空を吹く風であることです。偏西風の最も強いところをジェット気流といいます。 また偏西風は、まっすぐ流れているのではなく、南北にうねるように流れています。波の上下運動に似ているので偏西風波動といいます。 このようすは、回転する円形水槽の中心部を冷やし周りを暖めてみる実験で再現することができます。 転向力が働く場合の効率的な熱輸送の方法として説明できます。
 この実験で熱の供給が安定していると、波の山谷の位置は変化せず、 供給のバランスが崩れてくると山谷の位置が水槽の回転方向へ移動して行きます。地球でも同じ事が起こっていると考えられます。 夏冬の太陽熱の供給が安定しているときは、偏西風の流れの位置はあまり変化せず、春夏の供給が徐々に増えたり減ったりしているときは、 偏西風の流れの位置は、少しずつ東へとずれていきます。
偏西風と高気圧低気圧
高層天気図  上空の風の流れを見ることにします。右図は、天気図(ふつうは地上天気図といいます)と同じ日の21時の500hPaの高層天気図です。 線は、等圧面等高線(以後等高線といいます)を表しています。ふつうの等圧線と同じように考え、気圧が低いほど小さな数値となっています。 オホーツク海に上空の低気圧があることがわかります。同じ位置に地上天気図にも低気圧があります。 これ以外の、地上で見られた低気圧・高気圧は見あたりません。低気圧から南に、等高線が南に膨らんでいるところがあります。 青色の帯で示しました。これを気圧の谷といいます。逆に北側に膨らんでいるところを気圧の尾根といい、赤色の帯で示しています。
 おおざっぱに見たところで次に風の流れを考えてみます。
 上空の風は単純で、等高線に沿って東に吹いています。低気圧の周りでは左周りです。気圧の尾根で北に、気圧の谷で南にうねって流れています。 風の強さは、風速記号を省略していますから直接わかりませんが推定できます。地上天気図の場合と同じで等高線間隔が狭いほど強くなっています。 また遠心力の関係で、等高線間隔が同じなら、気圧の谷で速く、気圧の尾根で遅くなります。 そのため、気圧の谷から気圧の尾根に向かうところ(赤帯から青帯)では大気が渋滞しその一部が地上に降りてきて高気圧を作ります。 これが地上天気図に現れている高気圧(移動性高気圧)です。同じ理由で、気圧の谷から気圧の尾根に向かうところに低気圧(温帯低気圧)ができます。
 低気圧・高気圧が移動するのは偏西風波動の東進によって説明できます。 南北にずれて動くのも、偏西風波動の振幅が大きくなることで説明できます(しくみについての説明は省略します)。
春秋の天気変化
 春秋に天気が周期的に変わる原因は、できるだけ短くいうと次のようになります。「日射量の減少増大によって、偏西風波動が東進するようになり、 その下にできる移動性高気圧・温帯低気圧が交互に日本列島を通過するようになるから」

 以上のことをふまえた上で以下の問題に挑戦してみてください。問題は2012年度大阪公立高等学校後期選抜入学検査問題の一部です。
『日本付近では、春と秋には天気が周期的に変化しやすい。その理由を「偏西風」「移動性高気圧」の二語を用いて、簡潔に書きなさい。』
気象予報士の試験ならいいのですが、高校入試なら問題点だらけと言っていいでしょう。ちなみに示された模範解答は以下の通りです。
『偏西風が吹くことにより、移動性高気圧と低気圧が交互に通過するから。』




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