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日没のいちばん早い日は

 冬至の日は、昼間の長さが一年でいちばん短い日となっています。それでは、その日が、いちばん日の出が遅く、日の入りが早いのでしょうか。 何となくそうではないように感じます。プラネタリウム表示ソフトで確認してみることにします。
 場所を、兵庫県明石市に設定し、午後4時50分の太陽の位置を2011年11月15日から12年1月4日まで5日おきに表示させてみました。 下図上段のようになります。
冬至の太陽
方位角・高度目盛りは2度おきに入れています。太陽の位置は、右(北)側から左(南)上まで順番に変化していきます。 6番目の太陽がほとんど沈みかかっているのがわかります。これは12月5日の太陽ですから、12月5日頃の日の入りが最も早いことになります。 冬至は最も南(=左:斜め右下に沈んでいくことも考えて)の最後から3番目頃にあり、実際には22日ですから20日近く前になります。
※この高さを太陽が沈むのに明石で約13分かかります。

 冬至の日が1年で最も昼間の長さが短い日ですから、冬至の日の入りが最も早くなければ、日の出の最も遅いのも冬至ではないことになります。 上の図下段に12月10日(右上)から1月29日(左=北)までの午前7時10分の太陽の位置を示します。 最も低いのは右から6個目1月9日のものですから、この頃の日の出が最も遅い事になります。

 冬至の日でこのようなことが起こるのであれば、日の出が最も早い日、日の入りが最も遅い日が夏至の日とずれることが考えられます。 同様に作図させた結果を下に示します。
夏至の太陽
 上段は5月15日から7月14日までの5日おきの午前5時の太陽、下段は、 6月5日から7月25日までの5日おきの19時5分の太陽の位置を示しています。 最も高い位置にある日から、日の出が最も早いのは6月14日頃、日の入りが最も遅いのは6月30日頃だとわかります。
※緯度によっても、図の形は変わりませんが、傾きが変わってきます。 そのため、日の入りや日の出の最も早くなったり遅くなる日は緯度によって多少変わってきます。

 どの図を見ても気がつくのは、太陽の動きが往復運動ではなく、楕円を描くように動いていることです。 日の出に対して日の入りの動きは、110度ほど右に回転させた図になります。 そこで、ちょうど真ん中の楕円が直立する正午の位置を、1年間通して書かせる事にします。その図が右の図になります。 アナレンマ 緯度は北緯35度で作図させています。8の字を描いています。この模様をアナレンマといいます。このような模様からわかることは、 太陽は正午に南中するのではなく、南中する時刻が日によって違うことを示しています。

 明石(東経135度上)で正午と太陽が南中する時刻との時間差を均時差といいます。均時差は最大で15分程度あります。 冬の日の入りが最も早くなる日は、太陽が南によって沈むのが早くなっていく割合と、 均時差によって太陽が時計より早く沈む割合とのかねあいで決まります。

 均時差については別の章(均時差を求めてみた)で詳しく説明しています。 本格的な解説はそちらに譲るとして、ここでは概略を解説します。
 1日の長さは、地球の自転周期とその間に太陽が公転によって動く長さで決まります。 この時に太陽の動きが一定なら1日の長さが一定になります。ところが太陽の公転速度は日によって微妙に変わります。 そのために1日の長さが変化します。1日が長いと、太陽は少しずつ遅れ、それが積み重なっていきます。こうして均時差ができます。
太陽の動き  公転速度が変わる原因は2つあります。一つめは地球−太陽の距離が変わることです(左図上段)。 太陽に近いほど速く動き、さらに速く動いて見える効果もあって、太陽に近い1月はじめが最も1日が長くなります。 太陽から遠い7月始めが最も短くなります。
 南中時刻のずれは、11月初めに1日の長さが平均の長さになり、以前は短かったものが長くなるように変っていきます。 進んでていた太陽が遅れ始めますから、このときに進みが最大となります。同じように5月の始めに太陽の遅れが最大になります。 1月始めと7月始めには、時間の遅れは0となります。
 二つめの原因は、地球の自転面(図下左赤線)が公転面(同暗黄色線)に対して傾いていることです。 太陽が南の空にくる頃では、公転で動く方向は、夏至・冬至の頃は真横なので1日は長く、春分・秋分の頃は斜めで1日は短くなります。 時間の遅れは、同じように考えて、立夏・立冬の頃に最も進み、立春・立秋の頃に最も遅れます。春分・夏至・秋分・冬至の頃は0です。
 以上をまとめてグラフにすると下のようになります。9月始め頃から太陽は進み始め、均時差がないときよりも早く沈みます。 これが最大になるのが11月始め頃で、年内いっぱいはその影響が残ります。
均時差グラフ
 冬至の頃の日没時刻を考えてみます。均時差がない場合です。この頃は太陽は天の赤道と平行に公転しています。 2〜3日違ったところで南中高度(赤緯)は低いままあまり変化はありません。 これに伴う日没時刻の変化はわずかです。
 これに対して均時差の変化は進んでいたものが遅れていくように急速に変わっていきます。 冬至の日とその前日でみると,赤緯変化による日没時刻の変化はごくわずで、均時差によって日没時刻は前日の方が早くなります。 日をさかのぼっていくと、赤緯変化による日没時刻の遅れはだんだん大きくなり、均時差が大きくなって早く沈む割合はだんだん少なくなっていきます。 どこかで、逆転するところがありますから、その日が日没が一番早くなる日となります。冬至の何日か前になります。

 実際に何日にどれくらい早くなるか求めることにします。冬至の日を基準にします。 日没時刻は緯度によって変わってきます。緯度と太陽の赤緯がわかれば、均時差がない場合の日没時刻が求められます。 これに均時差の影響を加えると実際の日没時刻が求められます。
 別章(秋の釣瓶落とし)で、 真太陽の中心が地平線上と重なる時を日没として日没時刻を太陽の赤緯によって日没時刻を計算する式を示しています。 また別章(均時差を求めてみた) では、2023年の軌道要素を使って、均時差と太陽(太陽からみた地球)の赤緯を計算しています。 これらを使って緯度別に日没時刻がどれくらい早くなっているかを求め、グラフにしてみました。下の図です。
 赤道上では、赤緯による日没時刻の変化はありません。均時差に従って日没時刻は変動します。意味がないので省略しています。 緯度が66.6度以上では冬至の日には太陽は昇ってきません。基準が設定できないのでグラフにはできません。
 グラフで、一番早くなるのは、グラフの線が最も上にあがっているときです。北緯35度なら、12月始め頃が一番早くなることが読み取れます。
日没時刻の早まり方
2011.12.01 掲 載 
2020.09.20 一部加筆
2023.09.03 後半書換



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