虹を作りたい
虹を作る方法です。光を虹色に分けるといった方が正しいですね。いろいろな方法を試してみました。きれいにできたもの、今ひとつのものなどあります。
原理的には、波長による屈折率の違いを利用するもの(分散法)、干渉させて作るもの、その他の方法があります。
実際に試したもののいくつかを順不同で紹介します。
分 光 器
太陽の虹を観察する道具として分光器を作って見ました。
回折格子(グレーティングレプリカ)を利用して、虹を見るものです。図の矢印の先の向こう側の面に、細長い溝(スリット)
があって、そこからの入った光の回折現象を利用しています。格子の刻み幅が1mmあたり100本程度のときは、正面に虹が見えます。
回折格子がない場合は、普通のレインボーフィルムでも作れるはずですが、どのように見えるかは試していません。
手前の面の四角く切り抜かれたところに回折格子が貼ってあり、ここからのぞくことになります。
右端の方にスリットが見えますので、この方向に虹に分けたい光の元が来るようにします。
中をのぞいたときの虹ができている様子はだいたい右図のようです。右側の方向にスリットがあります。
内側の目盛りはスリットからの長さです。これを利用して光の波長を求めることができます。
光源に蛍光灯やナトリウム灯を用いると、輝線スペクトルを見ることができます。
改良版の展開図を作りました(右図;2014.6.1掲載)。正面に見える目盛りを、正面からの幅と波長の二つにしました。
用紙サイズB4で出力すると、目盛りがほぼcmと一致します。べた塗りになっていますので、輪転機印刷する場合はメッシュに変えた方がいいでしょう。
外側(左)と内側(右)の二種類です。重ね合わせて組み立てるか、重なるように両面印刷して利用してください。
花子ファイルからpng画像ファイルに変換しましたので、そのままダウンロードして利用できます。
画像上で、右クリックして「名前をつけて保存」を選ぶか、クリックしてでてきたページをダウンロードしてください。
旧来の花子(Ver3)版も残しておきます。目盛りは正しく出力されます。ファイルをLHAで圧縮しています。
フリーの解凍ソフトと花子または花子ビューワ(ジャストシステムのホームページからダウンロード可)を使ってご利用ください。
波長目盛りはありませんが、内面の塗りつぶしはメッシュです。
花子版旧展開図をダウンロードする
透明なものの角で
普通虹を作るには、正三角柱のガラスでできたプリズムを使います。60度の角を通った光が分散するので、40度ほど曲がった方向に虹ができます。
右写真は、六角柱の側面から入った光が一つおいた側面から出ていく様子を示したものです。二つの面の間の角度は60度ですから、
プリズムの角を通り抜けるのと同じです。右から入った光が左下の方向に抜けていますが、左の壁に当たった光がわずかに分散しています。
抜けた光の経路が短いのではっきりしませんが、距離が長いとはっきりとした虹になります。
光が通り抜ける二つの面の間の角度は別に60度でなくても虹はできます。
上の写真は岐阜県恵那市明智町(大正村)にあるおもちゃ博物館の壁にできていた虹です。昔のガラスは厚く、
壁や窓に取りつけるときには縁を斜めに削っていました(右写真)。この角を、通り抜けた光が壁に当たってできた虹です。
同様に透明なもので角があれば虹ができますので、いろいろなもので試してみました。透明なボールペンで作ったことがあるのですが、
透明度の高いものが手に入らず断念しました。かわりに比較的透明度の高いもので、アクリルの定規が目につきましたので使ってみました(左写真)。
定規の目盛り側は、インクのにじみ防止用に鋭角になっていますのでここに光を当てました。定規は左上に立てておいています。
そこから右斜め上方向に写っているのが定規の影です。屈折した光は、まっすぐ右側に伸びていますが、
先の方で虹に分かれているのがわかります。反対側の直角になっている角でもできますが、角度の調節が少し難しくなります。
水と鏡で
水中に鏡を斜めに沈めて光を反射させてみても、透明なものの角を光を通り抜けたのと同じことになります。
鏡の角度は30度かそれより、小さい方がいいでしょう。反射してできた虹がどこにできるのかわかりづらいですが、探すとすぐに見つかります。
初めのうちは、波の影響で揺れています。しばらくすると、波が治まり右のようなきれいな虹が見えます。端が少し曲がっています。
プリズムの虹と同じですが、真ん中の緑色付近が白くなっていることがあります。その場合は、水に鏡をつける量を小さくするときれいになります。
ガラスビーズを使って
透明な丸い物がいっぱいあれば、水滴と同じように、中に入り反対側で反射してから出てくる光は、虹を作るはずです。
右写真のようなガラスの粒が市販されていますので、これを使って実験してみました。方法は、板に貼り付けるだけです。
結果が上の写真です。ピントがぼけているのは、目的の光が、非常に小さく周りに比べて明るいため、ピンぼけにして、
光を大きくし、露出過多にならないようにしています。
結果は、各粒から色のついた光が出てくるものの、てんでばらばらで、全体を眺めてみたときには、あまり色がついているようには見えません。
何となく、上の方が赤っぽく、下の方が青っぽくなっているようにも見えます。
遠くから見たら、虹らしく見えるのかとかはさらに実験を重ねてみないとわかりません。ガラスの粒がいびつであるとか、
ガラスの周りに接着剤がついて悪さをしている、といったことも原因として考えられます。
透明で丸い物といえば他に乾燥剤のシリカゲルの粒があります。この粒を通り抜けた光の写真が右側です。
何も貼り付けずに、そのままおいたものを写しています。やはり少しピンぼけにしています。
丸い粒の右上の部分で光っているのが、反射して通り抜けてきた光です。ガラスの粒に比べて色のついているものが少ないようです。
ガラスの粒に比べて形がいびつなせいなのか、透明度が悪いせいなのか、そのあたりの原因も調査中です。
2015.03.07
水をまくと
一番肝心なものを書き忘れていました。虹が、水滴でできるのなら、実際に水滴をまいていやれば虹ができることになります。
水滴の大きさは、雨粒より大きいもののきれいな虹を作ることができます。写真では、手で撒く代わりに噴水にやってもらっています。
太陽を背にしてまくのがこつです。
2015.03.07
CDやDVDのディスクは
非常に小さく、同じ幅でものがならでいると、そこを通り抜けたり、跳ね返ったりした光は干渉して虹を作ります。
その代表的なものが、CDやDVDディスクの記録面です。写真はDVD−Rディスクのものです。
光源を点光源(太陽や離れた電球の光など)にするか、スリットを通すときれいに見えます。光の当て方や見る位置を変えると、
光り方が変わります。いろいろ試してみるのがいいでしょう。
右写真はDVDディスクの記録面に光を当て、壁に反射光を映したものです。DVDディスクから壁までの距離は30cmほどです。
昆虫の羽の光沢もこの方法でついています。変わったところでは、液晶ディスプレーの表面にも現れることがあります(右写真)。
夕日が当たってるのを撮ったので、青色ははっきりしていません。
2015.03.07
ガラスを重ねると
地学では岩石薄片を作ることがあります。そのとき、スライドガラスを箱から取り出すと2枚以上がくっついていて、
そのすき間に虹のような見ようが見えたり、作りかけの薄片を落とし、石が少しだけはがれたすき間に虹のような模様が見えます。
写真は、無理矢理スライドガラスを押しつけて作った虹模様です。等高線のような模様の中心が押さえつけた場所です。
虹色になるのは、ガラスのすき間をまっすぐ通り抜けた光と、ガラスの表面で反射し「Z」の字型に進んできた光が干渉し、
すき間の幅に合った特定の波長の光が強められ光って見えるためです。
同じ原理で、非常に薄い膜でも見ることができます。その代表的なのが、石けん水の泡(シャボン玉)です(右写真)。
泡の膜の厚みは、重力で水分が下に降りていく関係で、上の方が薄くなります。そのため下から上に向かって、赤黄緑青(赤)の順番になります。
2015.03.07
偏光板を使って
2枚の偏光板の間にものを置くと、色がついて見えることがあります。写真は、カメラ用の偏光(PL)フィルター2枚の間に、
スチロール製の物差しを入れて撮った写真です。地学をやっている人は、偏光板が真っ暗になるように組み合わせる(クロスニコル)習慣がありますが、
別にどの向きでも虹色になります。セロファンテープをいろいろな方向に何枚か貼り付けるときれいな模様を作ることができます(右写真)。
偏光板やテープを回すと、色が変わったり、明滅したりしてきれいです。
軟質ビニルで構造物の模型を作り、力を加えたときにできる虹模様から、どこに力が集中するかを調べることができます。
虹色になる原理は少し複雑です。物質内を元素が規則正しく並んでいるとき、そのすき間の向きの関係で、光が通り抜けやすい振動方向と、
抜けにくい振動方向ができます。抜けやすい振動方向の光は速く、抜けにくい振動方向の光は遅く進みます。その結果2種類の屈折率ができます。
方解石を通して向こうの文字を見ると2重に見えるのはこのためです(左写真)。この現象を
複屈折といいます。
物体を通り抜けた遅い光と速い光では、波の山谷の位置(位相)がずれます。
そのため光が打ち消し合ったり強めあって干渉しそうですが、振動方向が全く違うので光は干渉しません(「縦−横=斜め」になるため)。
ところが、物体に入る前と出てきてからの光を偏光板を通して振動方向をそろえることで、強引に干渉させることができます。
この方法で見える光の色は、地学では「
干渉色」といい(偏光板を互いに真っ暗になるように置く必要があります)、鉱物の鑑定に使われます。
おまけの話です。偏光板を使うと、部分だけなら虹を強調してきれいに撮ることができます。
何枚かの写真はこのようにして撮ったものです。
逆に消すこともできます。
2015.03.07