ここで紹介するものは
1.
観測用懐中電灯
2.
星座早見
です。
観測用懐中電灯を作ろう
普通、天体観測をするときに使う懐中電灯は、赤いセロファン紙をつけて、まぶしさを和らげます。
セロファン紙が一枚ぐらいだと光はそれほど赤くならず、かといって重ねすぎると暗くなってしまいます。
そこで、赤色LEDを使って、懐中電灯を作ってみました。回路は単純で右図のようになります。
材料として必要なのは、LED、乾電池(単3を2個使用)、電池ケース、ボタン型のスイッチ、抵抗、導線(7cm)になります。
抵抗の値は、LEDの仕様によって変わりますので計算してそれに近いものを選んでください。
ちなみに、使ったLEDの仕様は、2.8V400mAだったので、
(3−2.8)÷(400÷1000)=0.5Ω
最初の3は乾電池2個の電圧、最後の1000はmAをAに換算するためのものです
0.5Ωの抵抗はないので、これに近い0.47Ωを使いました。
組み立ては回路図に従って、ハンダ付けします。LEDの向きに注意してください。また、導線はできるだけ短くしてください。
スイッチとLEDはホットボンドで固定しています。写真は組み立てた様子がわかるように骨組みのみを示しています。
実際には、紙を丸めて作った筒に入れて使用しています。このままだと何かにぶつけた拍子にLEDの向きが変わってしまいます。
電球にかぶせているような、反射板のたぐいは必要ありません。このままで先だけを照らしてくれます。
使ってみていいなと感じたのは、LEDの指向性が高いので、照らされているところは十分に明るく、これに対して周りは暗いこと、
それと電池が結構長持ちすること(数年になるのにまだ一度も交換していない)です。
※赤色のライトがいい理由
目の中には弱い光を感じる細胞(桿体細胞)と色を感じ細胞(錐体細胞)とがあります。
星の光は非常に弱いので、基本的には桿体細胞が感じ取っています。
ここで問題となってくるのは、光を感じる細胞が強い光の刺激を受けた後、再び弱い光を感じ取れるようになるまで時間がかかるということです。
この過程を暗順応といいます。桿体細胞は錐体細胞に比べてこの暗順応に時間がかかります。
天体観測で目が慣れるまでは、暗い星まではっきりと見えないというのはこのことに関係しています。
桿体細胞を刺激しないで錐体細胞に反応させることができれば、その分だけ明るく見えることになります。
調べてみると、光の波長が長くなりほど桿体細胞の感度は急激に小さくなります。
赤色の光では2種類の細胞どちらでも感度はそう変わりません。これが赤色の光を使う理由になります。
※LEDライトの色について
天体観測の時に何かの作業のためにライトをつける場合、赤色の光が良いといわれています。
この考えにしたがって赤色のLEDでライトを作った次第です。
最近、赤色光のLEDは適していない、オレンジ色のLEDがいいという議論があります。
議論を初めて読んだのは(https://hpn.hatenablog.com/entry/2018/11/29/224645)です。
これもSky&Telescope-Jun2016(Robert Dick:Is Red Light Really Best?)がもとのようです。
確かに赤色LEDで物をみたときは少しぼやけて見えます。理論上は視力が0.58倍になったのと同じです。
この点は、その分だけ近づけてみればいいだけです(老眼にはつらいですが)。
報告に書かれた図面などからわかるのは、赤色光では相当強力な物でない限りは、星への影響は全くないといえます。
逆にオレンジ色LEDには、桿体細胞を10倍から100倍近くも刺激する波長の光がたくさん含まれています。その分だけ明るくはできません。
もっとも、赤色セロファンを貼った懐中電灯には影響力の強い光がもっとたくさん含まれていますから、これよりは明るくすることができるでしょう。
要は星への影響や明るさをとるか、みやすさをとるか(橙色でも視力は80%に落ちている)のどちらを選ぶかという問題になります。
2018.12.15補足追記
星座早見を作ろう
これは
「両面式星座早見の項」で書いたものです。原図が掲載できるようになりましたので、
改めて、作り方と合わせて載せることにします。元々は教材用に作ったものなので、国内全域には対応していません。
緯度ごとに対応させたいのですが、現時点ではできていません。経度の違いに対応させるには、構造(工作)が複雑になりそうです。
とりあえず、できている分で公開します。
観測地点として大阪府高槻市南部を想定していますが、大阪府・奈良県北部、京都府南部なら問題なく使えると思います。
おおざっぱなものでいいのなら、中部地方南西部から中国・四国地方東部でも問題ないでしょう。
−−−− 作り方 −−−−
まず、次の3つの型紙をダウンロードしてください。画像かファイル名の上で右クリックし、「リンクの保存」を選ぶことでできます。
全部で743kBあります。
ダウンロードできたら、プリンターで印刷してください。A3サイズでも十分印刷できますが、これほど大きくなくていいでしょう。
夜の湿気にあたって意外とふやけてくることがあります。できるだけ厚手の紙に出力してください。3枚目の図は薄紙でも大丈夫です。
3枚とも同じ縮尺で印刷してください。windows8のエクスプローラーから右クリックの印刷を選んだときは、
「写真をフィットさせる」のチェックを外すとうまくいきます。
次に、黒く塗った部分をカッターナイフやはさみで切りぬいてください。2枚目の外枠は使いますので、捨てないようにしてください。
星座図の外周円は、2枚目外枠の内周をガイドにして動きます。どちらもできるだけなめらかに切り取ってください。
1枚目と2枚目外枠は、線に沿って切り離してください。全部で6この部品ができます(左図)。
切り抜いた型紙を貼り合わせます。枠になる4枚は左端図の順番に角を合わせて貼り合わせます。1枚目と4枚目は外側を向いています。
できれば内側の2枚の面は全面のり付けしてください。1枚目と4枚目はのりでくっつかないようにしてください。
星座図2枚も、背中合わせになるように全面のり付けします。このとき、外側リングについている目盛りが、同じものが重なるようにしてください。
ずれていると、表面と裏面を切り替えるときに調整し直さないといけないといけなくなります。貼り合わせにはクリップなどで固定して、
半分ずつのり付けするとうまくいきます。うまく貼り合わせたときに、すかしてみた様子を左に載せます。
外枠に星座板を入れると完成です。このとき、北と書かれている側に中心付近に「こぐま」のある面を、
南と書かれている側に中心付近に「はちぶんぎ」のある面が来るようにしてください(できあがりが最初の写真)。
−−−− 使い方 −−−−
<時刻合わせ>
星座の見える位置は、季節と時刻によって変わります。そのため、何月何日かということと、何時何分かという二つの情報を合わせる必要があります。
また、1日遅くても、約4分だけ早ければ星は同じ位置に見えます。いいかえれば、同じ位置に星が見える月日と時分の組み合わせは、いっぱいあります。
そこで、星座早見では、どの組み合わせのグループにはいっているかの調整は、月日と時分の目盛りを合わせることで行います。
具体的に例を挙げながら説明します。
外枠に時刻の目盛りがついています。間に挟まった星座板には月日の目盛りがついていて、外枠に開けられた窓から見えるようになっています。
星座板を回転させることによって、この二つの目盛りを向き合うように持って行きます。
たとえば1月22日午後9時(21時)なら、
1月22日の枠と、21時の目盛りを向き合うようにして合わせます(右図)。このとき二つのことに注意してください。
一つ目は、月日を読み取るのは引かれている線と線の間のどこでもいい(年によって多少ずれるため)ので枠という表現にしています。
もう一つは、月日の枠と時刻の目盛りは、数値が大きくなる向きは互いに逆向きだということです。
南天用の面と北天用の面では大きくなる向きが反対になりますので注意してください。時刻の目盛りを基準にすれば、
月日の目盛りの大きくなる向きがどちらかがわかります。月日の目盛りは、5の倍数の日の終わりを太い(少し長めの)線で、
月の変わり目を太い長い線で記しています。右図の場合、1月の左にある太い長い線の右隣に太線がありますので、
この二本の太線で挟まれたところは、1月31日を表しています(1月1日なら太線で挟まれない)。
あと逆向きに日数を数えていけば、22日の枠がどこになるかがわかります。
うるう年の2月29日の枠はありません。2月と3月の境界線に合わせてください。
<星座早見の見方>
表面と裏面で見ている考える空の方向が変わります。南と書いてある面は、南側(ただし高度は75度まで)の空用で、
北と書いてる面は北側の空(南側の35度より高い空を含む)用です。どちらでも見方はほぼ同じです。
まず星座板が、外枠によって隠されるぎりぎりのところ(外枠の切り抜いた縁)が地平線にあたります。
外枠の地平線のすぐ下に5度おきに目盛りをつけています。これは方位を表しています。
腕をいっぱいに伸ばしたときに見える握り拳の幅はやく10度ですから、めもり二つ分にあたります。
北から、右に9つ目が北東の空、18こ目が東の空になります。
目盛りは斜めに入っていますが、この線の方向が、まっすぐ上に見上げる方向になります。
まっすぐ伸ばしていくと、すべての目盛りの延長が集まるところがあります。ここが天頂(頭上のこと、南天用では天底=真下)です。
北天用では、ここより上(地平線と反対側)は南の空ということになります。
地平線と天頂との間の長さを90度として地平線から求めた長さが、星までの高度になります(南天用では天底と反対方向に伸ばして求める)。
最初の完成版の写真で見ると、北東から東の空、高度10度から40度あたりにかけて、
ベガ−デネブーアルタイルの作る夏の大三角が見えることがわかります。
<日の出日の入りの時刻を求める>
星座早見を使って、日の出日の入りのおおよその時刻を求めることができます。そのためには二つの段階が必要です。
一番目は、太陽の位置を求めること、次にそれを使って、日の出日の入り時刻を求めることです。10月12日の例も合わせて順番に説明します。
<太陽の位置>
普通、星座早見の星座板には、日にちごとに太陽の位置が記入されていますが、いくつかの問題があったためにこの星座早見では別の方法で表しています。
まず、太陽が毎年通るところは決まっています。ここが黄道です。星座板には破線(- - - の線)で記入し、横に黄道と記しています。
探してください。両面にあります。
次に、何月何日には太陽がその線上のどこにいるかを求めます。そのために、星座板の外周にある日付目盛りにあるもう一つの目盛りを利用します。
日付目盛りの外向きのものは、時刻合わせのためのものですが、内向きにも、それとは少しずれた目盛りがあります。これが太陽に位置を求めるためのものです。
目盛り間隔は5日おきに入っています。目盛りは外枠に開けられた窓から見ることができます。
この日付の位置をまっすぐ星座板の中心方向に伸ばし、黄道と交わったところが、その日の太陽のいる位置です。
10月12日の例を右に示します。太陽の位置に
◉印を入れています。参考にしてください。
<日の出時刻>
次に、日の出時刻を求めてみます。先ほど求めた太陽の位置を、東の地平線上に来るように星座板を回転させます。
できたら、それがその日の何時何分のものかを知るために、日付(外向きのものです)に向き合う時刻を読み取れば日の出時刻が求められます。
日の入り時刻は西の地平線に持って行くことによって求められます。
右に、10月12日を例に日の出時刻の求め方を示しています。先ほど求めた太陽の位置に◉印を入れています。
これを、東と書いてある側の地平線と重なるように星座板を重ね合わせ、10月12日の枠に向き合った6時5分が日の出時刻と読み取っています。
実際の日の出時刻は太陽の上端が地平線に接した時刻と決められています。そこまで正確に読み取ることは不可能なので、
この方法で求められた時刻はおおよそのものになります。
2015.2.11