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散歩道の宝物



石  門
石門
山梨県甲府市昇仙峡

 岩できれいな門ができています。石門といいます。パンフレットによると、左側の岩と上の岩との間にはわずかなすき間があり、 それが謎なのだそうです。
 謎を解いてみようと考えてみると、不思議なことがいくつか出てきます。例えば下の岩を取り去ったと考えてみると、 上の岩は大きくせり出しているのがわかります。このような形になっているところは、小さな物も含めて昇仙峡内にはありません。 さらに川の両側が狭くなり切り立っているのも、このわずか下流から仙娥の滝までの間だけです。
 全ての疑問点をつなぎ合わせて石門の成り立ちについて考える事にします。
 この付近の岩石は花こう岩でできていて、所々に安山岩の岩脈(登竜岩など)が貫入しています。花こう岩には直角でまっすぐな割れ目 (方状節理)ができやすく、川幅や川岸のようすも、この方向と関係して広くなったり切り立ったりします。川の流れの方向を見ると、 石門の下流400mのところで、より下流が西南西、上流が南と向きが変わっています。荒川が西南西に向きを変える所より上流部で、 南北方向に流れがあるとき、両岸が切り立つと考えられます。さらに、川の流れを西南西−東北東方向の伸ばして考えると、 さらに小さな川が続いていくのがわかります。明らかにリニアメントを形成していて、昇仙峡下流部は活断層上にできたと考えられます。 この断層によって北側が隆起したと考えると、石門より上流部の勾配が急で両岸が切り立っているのがより容易に説明できます。
 川岸が切り立つことによって、岩が崩落しやすくなります。花こう岩特有の方状節理に沿って岩が外れずり落ちたようです。 節理は上流側から見るとよくわかります。その主方向は北北西−南南東方向なので石門の向きは、川の流れに対して斜めになります。 傾斜方向が川側になっていますから、崩落した岩の上につながっていた岩はかろうじて残り、衝きだしたような形になったようです。 対岸でこのような崩落があった場合、上の岩石は持ちこたえず、同時に崩落し、このような形にはならないと考えられます。
 ずり落ちた岩は川側に開くように傾き、出っ張った上部の岩に引っかかって止まったようです。その後、落ちた岩の底が侵食されるか、 底にあった石が締まって縮んだりして下側の岩がわずかに下がったため、上側の岩との間にすき間ができたと考えられます。

2013.01.03



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