0.天気図の用語
ここでは、年間を通してみられる気圧配置について見ていくことにします。この後の気圧配置の解説に使われている用語もあります。
0-1a 気圧の谷
高気圧と高気圧に挟まれた、気圧が低くなっている場所です。(2012年8月12日9時)
日本列島は太平洋高気圧に覆われています。大陸にも高気圧があり、日本海の西側の大陸岸付近では2つの高気圧に挟まれた形となり、
全体的に気圧が低くなっています。このような場所の天気は、すっきりしないものになります。低気圧や前線が発生しやすい場所でもあります。
この後、樺太付近にある低気圧に前線ができ日本海にのびてきた後、日本列島を通過していきました。
樺太付近の低気圧と中国大陸南部の低気圧に挟まれた地域にように読み取ることができますが、
等圧線が北東から南東方向に伸びていて、これに沿って気圧の引く地域が細長く分布することから、高気圧に挟まれた気圧の谷と見ることができます。
<解説文を閉じる>
0-1b 気圧の尾根
低気圧と低気圧に挟まれた気圧が高くなっている地域です。(2006年10月19日9時)
日本海にある低気圧と、日本のはるか南海上にある低気圧とに挟まれて日本列島は、全体的に気圧が高くなっています。
このような場所は、高気圧があるのと同じで、全般的に良好な天気となります。
この場合も気圧の高い地域が東北東から西南西方向に細長く連なっていますので、気圧の尾根と見ることができます。
<解説文を閉じる>
0-1c 高気圧の張り出し
高気圧を取り囲む等圧線が、長く膨らんでいる場所です。(2006年5月16日9時)
日本列島東方海上にある高気圧を取り囲む等圧線が、大きく膨らんで日本列島を取り囲むようにのびています。
そのため日本列島は、この高気圧の勢力圏下に入っていて、いい天気となっています。
このように、高気圧の勢力圏が特定の方向に伸びている場合、高気圧が張り出しているといいます。
気圧の尾根との区別は簡単にはいかないようです。
一般的に、高気圧の南西側では南からの暖かい湿った風が運ばれてくるので、高気圧圏内といってもそれほどすっきりしないことが多いようです。
<解説文を閉じる>
0-1d 切り離し低気圧(寒冷低気圧・寒冷渦)
前線がなく、動きの遅い低気圧です。(2014年5月14日9時)
日本海北部から北海道にかけての地域にある低気圧に注目してください。前線がなく、南東から東の方向にゆっくり移動しているのが特徴です。
右図は、同じ日の5500m付近の天気図です。
先ほどの低気圧の一群があった地域も、等圧線(等圧面等高線)が丸く囲まれていて低気圧となっていることがわかります。
このように地上付近だけでなく、高層でも低気圧となっている低気圧を「背の高い低気圧」といいます。
これに対して、高層ではなくなってしまう低気圧を「背の低い低気圧」といいます。
背の高い低気圧は、川の蛇行が切れて三日月湖ができるように、上空の偏西風が南に大きく膨らんで流れてきたときに、
風の流れが切り離され、低気圧性の渦(左回りの渦;北半球の場合)が作られてできます。これは地上天気図にも低気圧となって現れます。
したがって、偏西風の蛇行が切り離されてできる事から、「切り離し低気圧」といいます。
低気圧はゆっくりと南東方向に(初めは南、南方に来るにつれ東寄りに)移動するのが特徴です。
高層天気図を見ると、低気圧の北西側に隣り合うように「C」と書かれた寒気の中心を読み取ることができます。
このように寒気を伴っているということで「寒冷低気圧」とか「寒冷渦」と呼ぶこともあります。
この寒気は、低気圧の西側では、上空の北風で運ばれ、寒い地域が南に広がっていくのが特徴です。
高層天気図には、等温線が破線で書かれています。これを見ると、沿海州から東海地域にかけて等温線が南に膨らんでいて、寒気が南下しているのがわかります。
低気圧の南東側の地表付近では、南西の風に伴って、暖かい湿った空気が運ばれてきます。
上空に流れ込む寒気とあわせて、大気は不安定になり、ぐずついた天気になることが多いようです。
<解説文を閉じる>
0-1e ブロッキング高気圧
ほとんど動かない高気圧です。(2016年8月30日21時)
オホーツク海にある高気圧はほとんど動いていません。これにあわせるかのように周辺にある低気圧や高気圧の動きもゆっくりになっています。
このように、他の低気圧・高気圧の動きを止めているということで、「ブロッキング高気圧」と呼びます。
この高気圧の出現によって、気圧配置が変化しにくくなることを「ブロッキング現象」といいます。
同じ日の5500m付近の天気図に注目してみます(右図)。地上にある高気圧の勢力範囲とほぼ同じ地域の上空の気圧は高くなっています。
このように上層でもある高気圧を、低気圧の場合と同様に「背の高い高気圧」といいます。背の高い高気圧は、動きが遅くブロッキング高気圧となります。
以上が一般的な説明です。2つの天気図もう少し詳しく見ていくことにします。
これらの天気図でもう一つ目立っているは、日本海にある低気圧です。これは切り離し低気圧である事がわかります。
従ってこの低気圧の動きがゆっくりしているのは、ブロッキングされたからではなく、低気圧が本来持っている性質だからです。
高層天気図でもう一つ目立つのは、等圧線(等圧面等高線)が南北に大きく曲がりくねっていることです。
このようになると、上層の風の流れの位置はほとんど変わらないことがよくあります。
つまり、ブロッキング現象が起こるのは、上空の風の流れが固定され、それに伴って、地表付近の高気圧や低気圧の位置も固定されるからです。
一般的な説明に見られるように、高気圧・低気圧の動きを止めているのはどれかというのを判断するのは難しいし、
動き遅いからといって背の高い高気圧であるとは限りません。気象庁は、「ブロッキング高気圧」は使用を控えることばとしています。
この天気図で、ブロッキングが起こって低気圧や高気圧の動きを止めているいるとしたら、
日本海にある台風の動きが非常に速いことが説明できません。
典型的なブロッキング型の天気図なのですが、ブロッキングということばそのものに問題があるようです。
<解説文を閉じる>
0-1f 低気圧家族
前線上にいくつかの発達段階の異なる低気圧が並びます。(2014年10月23日3時)
日本列島南岸を通過する低気圧を見ていると、日本列島東方海上で発達した後カムチャッカ半島付近で衰えていきます。
この時、この低気圧が持っていた寒冷前線の先端が停滞前線となります。
この停滞前線は先島諸島付近にかかり、ここで北に膨らむように曲がって、新しい低気圧ができていきます。
低気圧が、日本列島南岸を通過してということが繰り返されます。この時、停滞前線ができた頃には、寒冷前線の一部が消滅することが多いようです。
寒冷前線が消滅しなければ、1つの前線上に、年老いた低気圧と若い低気圧が乗ってくることになります。
このように、1つの前線上に並んでいる年齢の異なるいくつかの低気圧のことを、「低気圧家族」といいます。
低気圧が、どこでどのようにしてできて、どのように発達し、衰弱していくかを考えるヒントになります。
<解説文を閉じる>
1.春の天気図
春の天気の特徴は、日本列島上を移動性高気圧と温帯低気圧とが交互に通過していくことです。それによって天気は、晴れたり雨が降ったりを繰り返していきます。
1-1 移動性高気圧(移動性高気圧型)
移動性高気圧が通過しているようすです。(2014年4月24日15時)
高気圧が、日本列島を西北西から東南東の方向に通りぬけようとしています。そのため、日本列島全域で、晴れた天気のよい状態になっています。
雲1つない空になることがあります。このような晴天は日本晴れと呼ばれます。秋なら秋晴れということもあります。
五月晴れも同じように用いられることがありますが、元々は梅雨の合間の晴れた天気を指すことばだったようです。
昼間は、太陽の熱でどんどん気温が上がっていきます。夜間は、逆に放射冷却で気温が下がっていきます。明け方に霜が発生することもあります。
5月になって霜が降りると、せっかく芽吹いたものが、大きなダメージを受け、場合によっては枯れてしまうことがあります。
高気圧の中心が通り過ぎると、南からの湿った空気が流れ込みやすくなり、気圧の低下とあわさってだんだん天気は下り坂となっていきます。
<解説文を閉じる>
1-2 温帯低気圧
日本列島付近を温帯低気圧が通過しているようすです。(2014年3月30日18時)
低気圧の接近に伴って、西からだんだん天気が悪くなっていきます。
天気変化のようすは、低気圧が日本列島のどこを通過するかで変わってきます。それぞれの例で説明します。
一般的に低気圧の通過後は天気は回復しますが、冬型の気圧配置になり北西の冷たい風が吹くようになることが多いようです。
<解説文を閉じる>
1-2a南岸低気圧
日本列島の南側を低気圧が通過していきます。(2014年3月20日12時)
主に春や秋、特に春先に日本列島の南を通過する低気圧のことを南岸低気圧といいます。気圧配置としては南岸低気圧型です。
この天気図では、はぼ日本列島の南岸に沿って低気圧が移動しています。九州から関東にかけての地域で雨が降っています。
これがもう少し日本列島から離れると、太平洋岸で季節外れの大雪となることがあります。
離れすぎてしまうと、天気はそれほど崩れず、雨にならないこともあります。時期にもよりますが、
伊豆大島付近を通過するときに関東−阪神地域では雪になるようです。
この低気圧ができ始める場所は、台湾から先島諸島近辺が多いようです。発生当初は東シナ海低気圧と呼ばれることもあります。
台湾低気圧とか台湾坊主という名称も使われたことがありますが、現在は使われていません。
<解説文を閉じる>
1-2b日本海低気圧
低気圧が日本海を通過していきます。(2014年3月18日06時)
主に春や秋、特に春先に日本海を通過する低気圧を日本海低気圧といいます。気圧配置としては日本海低気圧型です。
中日本・南日本は、暖かい南風が吹くのが特徴です。そのため気温は上昇し、春先でも初夏を感じさせるような陽気となります。
この陽気も1日程度しか続かず、低気圧が通り過ぎた後、寒冷前線の通過に伴って、突風や大雨になることがよくあります。
寒冷前線の通過後は、気温は一転して低くなります。北日本では雨が降り続けます。
南風は、時に突風となります。また、フェーン現象を伴うこともあり、日本海側地域では、気温の上昇が著しくなります。
これに伴い火災が大規模化することがあります。2016年12月22日に糸魚川市で発生した火災はその例です。
この低気圧は、中国北部を東進して、朝鮮半島付近を通過するあたりから発達をし始めるものが多いようです。
<解説文を閉じる>
1-2c二つ玉低気圧
南岸低気圧と日本海低気圧が同時に日本列島近辺を通過するものです。(2016年2月29日3時)
春や秋に2つ並んで通過する前線を伴う低気圧を二つ玉低気圧といいます。気圧配置としては二つ玉型または二つ玉低気圧型です。
この気圧配置になると、日本全域で大雨となります。北日本では雪になることもあります。
場所によっては強風を伴うこともあります。
低気圧通過後に千島列島付近で2つの低気圧が合体し、大きな低気圧となって日本列島に寒い北風をもたらすこともあります。
<解説文を閉じる>
1-3 特異な気圧配置や気象現象
1-3a春一番
冬から春に移り変わる時に最初に吹く、強い南からの暖かい風です。(2010年2月25日9時)
気象庁では、立春から秋分までの間に最初に吹く風速8m/s以上の南寄りの暖かい風のことを「春一番」と決めています。
南寄りの風がこの期間外だったら、その年の春一番は吹かないことになります。この風は、かなりの突風になることもあります。
日本海側地域では、フェーン現象も影響してかなり暖かくなり、大規模火災が発せしやすくなります。
山岳地帯では、気温上昇によって雪が溶けだし、雪崩や洪水を起こすことがありますので、注意が必要です。
日本海低気圧が発達したときに発生します。
暖かい南寄りの強風が、1番目ではなく2番目なら春二番、3番目なら春三番..というように呼ばれることがあります。
春一番が知られるようになったのは、壱岐地方で使われていることばとして1959年に紹介されたのがきっかけとされています。
壱岐地方では、1859年2月13日(旧暦)に、元居浦(郷ノ浦)漁民の春一番による53名にも上る海難事故がありました。
このために慰霊碑や慰霊祭などで広く島民に知れ渡っていたようです。慰霊碑は郷ノ浦港入り口にあり、港入り口の高台には春一番の塔が設けられています(右写真)。
<解説文を閉じる>
1-3b急速に発達する低気圧(爆弾低気圧)
春先や初冬には日本列島を急速に発達しながら低気圧が通過することがあります。(2012年4月4日9時)
低気圧は通過前にはそれほど大きくないのに、通過後は、中心気圧が970hPa以下になったり、
強風半径が1000kmを越えるというように急激に発達するものもあります。
気象庁では、24時間に18hPa程度以上中心気圧が低くなるものを「急激に発達する低気圧」としています。
南からの暖かい風と、北からの冷たい風が混ざることによって低気圧は発達していきます。
この時の温度差が大きいほど、低気圧は急速に発達していくことになります。
低気圧の発達によって、広い範囲で25m/s以上の暴風や15m/s以上の強風が吹きます。
強い風は、1日以上、場合によっては2〜3日にわたって吹き続ける事もあります。
爆弾低気圧ということばはインパクトが強いので、使われているのを耳にします。
爆弾ということばがあまりいイメージを持たない人がいるということで使わないようにしようということになっています。
ことばとの関連性があまりなく、何のことか後付けで説明をしないといけないというのもよくないと思います(個人的感想です)。
<解説文を閉じる>
1-3c菜種梅雨
3月末から4月の初めにかけて、雨が降り続くことがあります。(2015年4月4日6時)
菜種の花(菜の花)が咲く頃に梅雨のような天気になるということで、菜種梅雨といいます。それほど激しくはなりませんが、雨が1週間程度降り続きます。
一時的に太平洋高気圧の勢力が強くなり、シベリア高気圧との力関係が拮抗して、日本列島に前線が停滞します。この前線が、日本列島に長雨をもたらします。
<解説文を閉じる>
1-3d帯状高気圧(ハイベルト)
春や秋でも、晴れた良い天気が続くことがあります。(2009年4月10日9時)
移動性高気圧が東西に連なり、日本列島の上を次から次へと通過していきます。
高気圧が東西に並んだ状態あるいは気圧配置のことを帯状高気圧またはハイベルトといいます。
連続して高気圧に覆われ続けますから、好天が続きます。帯状高気圧の位置が北に偏ると、高気圧が通過し次の高気圧が来るまでの間で雲が広がることもあります。
<解説文を閉じる>
1-3e黄砂
春先には中国大陸から黄砂がやってくることがあります。(2010年3月15日9時)
黄砂がやってくるときに決まった気圧配置があるわけではありません。
黄砂は、中国大陸奥地のゴビ砂漠などの砂漠地帯で巻き上げられた砂埃が、風に流されてやってくるものです。
天気図に示した日の翌日、日本列島の各地で濃い黄砂が観測されました。
日本列島に接近している西からの低気圧は、中国大陸奥地で発生したものです。
この低気圧が突風を発生させ、黄砂を巻き上げた後、そのまま日本列島に黄砂を運んできたようです。
前線を伴わない雨が少ない低気圧なら、黄砂は洗い落とされずいつまでも空中を漂い続けることができます。
<解説文を閉じる>
2.梅雨時の天気図
2-1 梅雨について
梅雨は、春から夏に移り変わる間で、1ヶ月から1月半にわたって雨が降り続く時期です。(2006年7月20日9時)
梅の実がなる頃に降る雨ということで梅雨というのが一般的な説明です。
湿った天気が続き、カビ(黴)が発生しやすくなるので黴雨(ばいう)と書き、それが梅雨と書き換えられたいう説明もあります。
中国や台湾では梅雨(メイユー)と呼びます。
つゆと読まれるようになったのは江戸時代のことのようですが、その語源については明確にこれだといえるようなものはないようです。
梅雨の別名としては、五月雨(さみだれ)があります。旧暦の5月に降る雨のことですが、まさに梅雨時に一致します。
日本列島に梅雨前線が停滞し、その上を小さな低気圧が次々に、西から東に移動していきます。
前線や低気圧の活動によって、日本列島、中国大陸中南部、朝鮮半島に雨が降り続く時期ができます。
オホーツク海高気圧と太平洋高気圧との間に挟まれてできるというのが一般的な説明です。
この説明に対しての見解は
こちらにまとめています。
梅雨の雨といえば、しとしとと降り続くイメージがあります。
実際には、激しい雨が降り続く集中豪雨によって、被害が出ることもあります。
あまり強くない雨が降り続く梅雨を陰性の梅雨、激しい雨が降ったかと思うと晴れ間が広がるような梅雨を陽性の梅雨と区別することがあります。
西日本では陽性の、東日本では陰性の梅雨が多いという傾向があり、梅雨の前半では陰性、後半では陽性になるともいわれています。
<解説文を閉じる>
2-2 梅雨の移り変わり
前後の期間を含めて、梅雨の間はこのよう変わっていくという決まったパターンはありません。また、地域によっても異なることがあります。
一般的にいわれている移り変わりに沿ってみていくと同時に、それから外れたパターンについてもみていくことにします。
2-2a走り梅雨
本格的な梅雨に入る前に、雨が降り続くことがあります。(2009年5月28日9時)
卯の花が咲く頃に降る雨で、花を腐らせるのではないかということで「卯の花腐し(うのはなくたし)」と呼ばれることもあります。
一般的には5月下旬頃に数日間雨が続けば、「梅雨の走りかな」というように使われます。
パターンとしては、早めに梅雨時の気圧配置に一時的になるものと、動きの遅い低気圧が日本列島を通過する場合があります。
前者の場合は、入梅したのかどうかとの区別は難しいでしょう。
図は動きの遅い低気圧が日本列島を通過している例です。日本南岸にある低気圧は閉塞前線を伴っています。
このようになったものは動きが遅いものがよく見られます。この低気圧も動きが遅く、この後3日ほどかけて日本列島付近を通過していきました。
東北地方では、北海道の西にある低気圧との連続通過で、雨が降り続きました。
この時期は、沖縄奄美地方は入梅しているのですが、走り梅雨に伴って前線が北上して一時的晴天が広がることがあります。
天気図の場合は前線の南下に伴って晴れたようです。
<解説文を閉じる>
2-2b梅雨入り
梅雨の期間に入ることを「梅雨入り」とか「入梅」とかいいます。(2006年6月11日9時)
入梅したかどうかの判断は、前後の期間の天気を比べて、この日を境にして雨が多くなったかどうかでおこなわれます。
従って、これで入梅とか、これが入梅の天気図だとかいうものはありません。
少なくとも、連続して雨が降り始める最初の日なので、雨が降った日になることが多いようです。
各地方気象台は、その地域が入梅したと思われる日に入梅宣言を出します。
これも、後日の天気の移り変わりによって変わることがあるので、「入梅したと思われます」となります。正確な入梅日は改めて発表されます。
天気図では、西から低気圧が接近しています。
これに伴って四国以西は前日から、近畿はこの日から、東海関東は翌日以後に雨が降り始めました。
後方にひかえている梅雨前線がその後も停滞し雨を降らし続けると予想できます。
その結果、ここで降り出した雨をきっかけに九州から東北地方まで梅雨入りとなりました。
暦の上では、太陽?経が80度になった日をもって入梅とされています。毎年6月11日前後の日になります。
<解説文を閉じる>
2-2c梅雨前期
梅雨入りした直後は、しとしとした雨が降り続くといわれています。(2006年6月28日9時)
梅雨前線は、南から北上してきます。入梅してすぐくらいの時は、まだそれほど北上しきっていません。
図では本州南岸にそって停滞している状態です。前線のかかっている九州中部や四国、本州太平洋岸地域ではまとまった雨が降っているようように見えます。
主要地点の天気を調べてみたのですが、それほど雨が降っていたようすは見受けられませんでした。
梅雨入りしても前線活動はあまり活発ではなく、弱い雨が降り続くといわれます。
いきなり大雨から始まることもあります。雨がほとんどないときもあります。必ず梅雨はこういう形から始まるのだとは決めてしまわない方がいいでしょう。
<解説文を閉じる>
2-2d梅雨の中休み
梅雨の期間であっても、晴れの日が続くこきがあります。(2012年7月9日9時)
梅雨の期間内に晴れ間が広がる時を梅雨の中休みといいます。梅雨の中休みはない年もあります。
逆に空梅雨といって梅雨入りしたもののずっと晴れ間が続いて気がついたら梅雨が明けていたという年もあります。
晴れ間が続いたら、中休みかなと思うぐらいでいいでしょう。
晴れ間が広がるのは、前線が北か南に大きく離れるか、一時的に前線が消える時です。
天気図は前線が南下したときのものです。この前線の南下によって、沖縄・奄美地方は梅雨明けはしたものの再び雨が続くことになります。
<解説文を閉じる>
2-2e梅雨末期
梅雨もそろそろ終わりに近づいてきました。(2010年7月14日09時)
梅雨前線は日本海を通っています。本州南岸にあったものがかなり北上したのがわかります。
太平洋側の地域は前線から離れてその影響を受けにくくなっていきます。逆に太平洋高気圧勢力下に入り、その影響を受けるようになりつつあります。
前線上を低気圧が通過しています。これによって前線が刺激され局所的に大雨になります。
梅雨の終わり頃になると、このように大雨が降ったり晴れたりを繰り返すいわゆる男梅雨になるといわれています。
実際には、それほど大雨にならないうちに梅雨明けということもありますから、一概にそうだとは言い切れないでしょう。
<解説文を閉じる>
2-2f梅雨明け
長く降り続いた雨もあがりやっと梅雨明けです。(2012年7月17日9時)
梅雨が明けるパターンは2通りあります。梅雨前線が北上して、それ以後は再び接近しなくなる場合です。
西日本や奄美・沖縄地方でよく起こるパターンです。もう一つは、梅雨前線が消滅していく場合です。東北地方でよく起こります。
天気図では、前線が北上し弱まったために、関東以西の地域では雨が降らなくなり、一斉に梅雨明け宣言がなされました。
東北から北陸にかけての地域にかかっている梅雨前線も、日本海にある高気圧が弱まり太平洋高気圧の張り出してくることに伴って、だんだん弱まっています。
前線は、翌日には日本列島から離れ、東北地方でも梅雨明けが宣言されました。
梅雨明けも梅雨入りと同様、前後の天気のようすを見て判断されます。従って、この天気図になったら梅雨明けというものはありません。
これ以後、雨が少なくなると予想できるような天気図は、梅雨明けの候補とはなります。
雷が鳴ると梅雨が明けるということもいわれています。梅雨明け頃になると太平洋高気圧の勢力が強くなり日本列島に張り出してきています。
これにともなって、地表付近は暖かい湿った空気が流れ込んできます。上空にはまだ、寒気の渦が残っていることがあります。
このようなときは、大気が不安定になっていて、激しい上昇気流が発生します。
特に昼間に晴れ間ができ、日差しが差し込めば、地面が暖められ夕立のような雨が降ります。このような雨には雷をともなうのが普通です。
一般的に、雨が激しく降るときには雷をともなうことがあります。梅雨末期に特有といわれる雨にともなって雷が鳴っている場合もあるでしょう。
どちらにしても、これで梅雨明けというのではなく、梅雨明けが近いという目印にはなるでしょう。
<解説文を閉じる>
2-2g戻り梅雨
梅雨が明けてしばらくしてから、雨が降り続くことがあります。(2005年7月30日9時)
一般的な説明では、オホーツク海高気圧が一時的に勢力を盛り返したということになります。
季節の変化はきれいに移り変わっていくものではなく、行ったり来たりを繰り返していきます。
この場合も一時的に梅雨に逆戻りしたということになります。実際には、戻り梅雨なのか、単に梅雨明けしていなかっただけなのかの判断は難しいようです。
<解説文を閉じる>
2-3 梅雨期の特異な天気
2-3a蝦夷梅雨
まれに、北海道で雨が続くことがあります。蝦夷梅雨といいます。17(2016年7月31日3時)
梅雨前線が北上を続け北海道に達する頃には消滅しているのが普通です。そのために、北海道には梅雨がないとされています。
ときどき、梅雨前線が北海道に達しても消滅しないで居座ることがあります。
このときは、北海道でも梅雨のような天気が続くことになります。天気図では、北上した梅雨前線が北海道から南千島にかけて停滞しています。
この前線の影響で北海道は数日間雨が降り続きました。
北海道(札幌)の人たちが、本州が梅雨の時は北海道も天気がすっきりしないといっているのを聞いたことがあります。
これってどこまで本当なのでしょうか。少なくとも、東北地方に梅雨前線が停滞しているとその影響を受けて、からっと晴れ上がらないことはあります。
ちょっと雨が多いかなというぐらいにはなるでしょう。
<解説文を閉じる>
2-3b梅雨寒
梅雨時に気温が下がることがあります。(2016年7月16日6時)
梅雨は、冷たいオホーツク海気団と、暖かい太平洋気団との風がぶつかり合って起こるといわれています。
その考えに従うと、梅雨前線の北側は冷たい気団の領域なので、前線が南下すると寒くなりそうです。実際には、それほど単純ではなさそうです。
天気図には、能登半島の先に低気圧が書かれています。この低気圧はこの数日の間ほとんど動いていません。
このような低気圧は、寒冷渦(切り離し低気圧)によってもたらされたものがほとんどです。
寒気を伴っていますので、この低気圧が、停滞している間は上空の寒気が下りてきて寒くなります。梅雨時にはこのような低気圧が頻繁に発生しています。
<解説文を閉じる>
2-3cやませ
オホーツク海から冷たい風が吹き付けてきます。やませです。(2016年7月24日21時)
千島列島にある高気圧が日本列島に大きく張り出してきています。この影響で、梅雨前線は弱まり、ほとんど消えています。
高気圧の張り出しの南東側は寒気を伴っています。
この寒気が高気圧を右回りに回り込むように東北地方に流れ込み、平年に比べて3〜6℃ほど最高気温が低くなっています。
梅雨時前後に千島方面から吹き付ける冷たい風のことを「山背(やませ)」といいます。
その期間は梅雨明けが長引くと秋の初めまで入ってくることもあります。
この風が暖かい海水とが作用して海上に濃霧を発生させ、海から陸地に流れ込み日照時間を減らしさらに気温を下げることもあります。
やませは、山から吹き下ろす冷たい風に対して用いられることもあります。
<解説文を閉じる>
3.夏の天気図
梅雨が明けると本格的な夏がやってきます。(2012年7月26日9時)
日本の東にある太平洋高気圧が、日本列島の南側に大きく張り出し、日本列島を南から大きく覆っています。
日本列島の南側に高気圧ができる事もあります。小笠原高気圧といいます(気象庁はこの呼び方は使用を控えるとしています)。
これらの高気圧を回り込むようにして、南から南西の暖かい湿った空気が日本列島に流れ込んでいます。日本全体が暑くなっていきます。
「夏型の気圧配置」です。大陸には低気圧があり、南側の気圧が高く北側が低くなっています。このことから「南高北低型」の気圧配置ともいいます。
この気圧配置は長期間安定して持続します。
<解説文を閉じる>
3-1 夏の天気の特異例
夏に注意すべき場合の例と天気図を示します。
3-1a鯨の尾型
太平洋高気圧が黄海付近にまで張り出しています。(2013年8月11日09時)
太平洋高気圧を取り囲む等圧線が黄海で北側に大きく曲がっていっています。
この形が鯨の尾のように見えるということから「鯨の尾型」といいます。南シナ海や黄海付近に高気圧ができることもあります。
この気圧配置になると日本列島は非常に暑くなるので「盛夏型」ともいいます。何日か持続するのも特徴です。
天気図の日は、猛暑日観測地点が297ヵ所ありました。
国内47地点で歴代最高気温の記録を更新、東京都下で歴代2位になる最低気温を記録する場所もありました。
翌日には四万十市で41℃という最高気温も記録しています。この地点では4日連続で40℃越えしています。
<解説文を閉じる>
3-1b冷夏
気温が上がらないまま夏が終わってしまいます。(2014年8月16日12時)
気温が上がらないのは、太平洋高気圧の勢力圏内に入らないからです。言い換えれば梅雨前線が北上しきれていないためです。
梅雨前線はいつまでも日本列島に居座ったまま8月も半ばを過ぎてしまいました。このままいくと、梅雨明けしないまま秋の長雨の季節に突入です。
簡単に言うと天気図上では夏にならなかったということです。
山背が吹いてとかいいますが、その時でも前線はかなり南下しています。夏になっていないことには変わりがありません。
天気図には、寒冷渦は見られません。それでも東北地方には、北海道北東沖にある高気圧から回り込むように冷たい風(やませ)が流れ込んでいます。
西日本も黄海の高気圧から冷たい風が運ばれてきています。この年は例年通り梅雨明けはしたのですが、8月中旬になる前から再び前線が停滞するようになりましました。
<解説文を閉じる>
3-1c上空に寒気が流入して....
上空に寒気が流入して大気が不安定になることがあります。(2007年8月19日9時)
夏の天気予報でよく聞かれるのが、「上空に寒気が流入して大気が不安定になっています」という文言です。
昼間は日射によって下層大気が暖められて上昇していこうとします。この時に、上空が冷たいと、上空と下層で空気の入れ換えが起こりやすくなります。
「大気が不安定」とはこの状態をいいます。この時、暖められた下層の空気は上昇していき、積乱雲を作り、夕立や雷雨を発生させます。
積乱雲は、平地中央より山沿いでの方で作られすい傾向があります。
上空では日本海にある寒気を伴った低気圧(寒冷低気圧)から左回りに寒気が西日本から東日本南部にかけて流れ込んでいます。
これに伴って、午後になって各地で雷雨が発生したようです(日々の天気より)。西日本では時間雨量が30〜60mmに達したところもあるそうです。
<解説文を閉じる>
4.台風の天気図
夏から秋にかけて日本列島に接近するのが台風です。(2015年8月22日09時)
北太平洋の西側で発生した熱帯低気圧の中心付近の最大風速が17m/s以上になったものを台風といいます。日本列島に近づくものもあります。
発生時期によってだいたい進む経路が決まっています。気象庁のページ(http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-4.html)
にだいたいの経路が書かれています(右図:気象庁のものです)。実線は主な経路、破線はそれに準じる経路です。 季節ごとの特徴を見ていくことにします。
台風は北緯5度以上の太平洋上で発生します。発生直後は、西に向かってわずかに北上しながらゆっくり進みます。
ある程度北にやってくると、少しずつ進む向きを変えていき、北東方向に進むようになります。向きが変わると同時に、進行速度も大きくなります。
台風は、上陸するか、井戸の大きな地域にくるようになると消滅したり、温帯低気圧に変わっていったりして、その一生を終えます。
4月頃までは、台風はあまり発生しません。ほとんどのものがフィリピンから南シナ海にぬけていきます。
5月頃から、台風の発生が増えてきます。ほとんどが、南シナ海にぬけて中国大陸南部に上陸して消滅していきます。
一部のものが、東に向きを変え日本列島の南海上を東にぬけていきます。中には、日本列島に接近・上陸するものもたまに出てきます。
7月になると、台風の発生は多くなってきます。台風はだいぶ北側を通るようになります。東シナ海を通って中国大陸に上陸します。
この頃に日本列島に近づく台風については、下の夏台風で詳しく説明します。
9月は、沖縄付近から向きを変え日本列島に接近・上陸するものが増えてきます。
これが、10月になると、日本列島の南海上を東に進むようになり、向きを変えずにはるか南の海上を西に向かって進むものが次第に増えてきます。
11・12月は日本の南海上を東に進んで行くものはほとんどなくなります。
<解説文を閉じる>
以下にいろいろな台風や、台風に伴う現象について説明します
4-1a夏台風
夏に日本列島に接近または上陸する台風です。(2011年7月17日9時)
夏に発生した台風は、太平洋高気圧の南側を西に進み、南シナ海にぬけるものがほとんどです。たまに、日本列島に近づく台風もあります。
このような台風は、太平洋高気圧の勢力圏内で発生したものです。発生した後は、太平洋高気圧に押し出されるようにゆっくりと北西方向に移動します。
台風を移動させる力はほとんど働きませんから、ものすごくゆっくり移動していきます。
ときには、太平洋高気圧の勢力が強くなったり中心域が変わったりして押される方向が変化し、進行が止まったり、向きを変えたりすることがあります。
どのように進むかわからないということで迷走台風ということばが使われたこともあります。今は使用を控えようということになっています。
図は、天気図にある台風6号の進路です(気象庁サイトから引用)。12日に発生してから日本列島接近まではほとんどの台風と同じように動いていました。
本来なら、ここから加速するはずですがゆっくりとした速度を保ったまま北上を続けます。
四国沖でいったん動きが停滞しその後進路を南東方向に変えています。
22日になってやっと向きを北北東に変えて加速し、24日午後に温帯低気圧に変わるまで、複雑な動きを続けました。
複雑な動きをした台風を2例追加します(気象庁web pageより引用)。2016年の台風10号と2017年の台風5号です。
台風5号の経路については暫定値を使用しています。
青線が台風10号、赤線が台風5号です。実線部が台風期間、破線部が熱帯低気圧または温帯低気圧の期間です。
かなりゆっくりした動きで複雑に行ったり来たりしています。日本列島に接近してもそれほど速くはなっていません。
台風5号については、日本の南海上にいる期間が長かったこともあり、長寿台風の第2位として記録(19日)を更新しました。
<解説文を閉じる>
4-1b秋台風
秋になると日本列島に接近する台風は増えてきます。(2014年10月6日9時)
熱帯地域を西に進んでいた台風は、沖縄付近で北東方向に向きを変えると、進行速度が速くなり一気に日本列島に近づいてきます。
ここまでくると海面温度が下がってきますから、中心の気圧が徐々に上がってきます。
といっても速度が速いのでそれほど気圧が下がらずに日本列島に接近上陸となります。
上陸した台風は、水蒸気の供給を受けにくくなりますから、急速に弱っていきます。海面上に出たときにわずかに復活ということもあります。
秋に日本列島に上陸した台風の経路をいくつかあげます。2002年台風21号(赤)、2006年13号(緑)、2008年18号(青)です
(気象庁web pageより引用)。いずれも日本列島に大きな被害を及ぼした台風です。進行方向を変えてから速度が上がっている点に注目ください。
この時期には、日本列島に秋雨前線がかかっていることがあります。この前線を巻き込み、前線を持つようになるものもあります。
天気図の台風はその例です。台風通過後は、からっと晴れ上がったうえに大陸からの涼しい風を引き寄せてさわやかな天気となることがあります。
「台風一過」ということばはこのような現象からいわれています。
<解説文を閉じる>
4-1c2つの台風
台風が一斉に発生し、2つ以上の台風が並ぶことがあります。(2016年8月22日6時)
2つの台風(熱帯低気圧)が並んだときにどのようなことが起こるかを調べた結果わかったことです。次の6つのパターンがあります。
(1) 相寄り型 |
互いに反時計回りにまわりながら接近していき、大きな方に小さな方が吸収される |
(2) 時間待ち型 |
東側の台風が発達しながら北上し、その通過を待って西側の台風が北上を始める |
(3) 指向型 |
1方のまわりをもう1方が反時計回りに回る |
(4) 追従型 |
1方が通過した経路をもう1方が追いかける |
(5) 同行型 |
2つが並んで移動する |
(6) 離反型 |
東側が加速しながら北東に移動し、西側が減速しながら西に移動する |
このような動きは調べた人の名前をとって藤原の効果とよばれてます。互いの台風の風の影響でそれぞれの台風が動くと考えれば説明がつきそうな感じです。
実際にどのような動きになるかについては、個々の事例(位置関係や周囲の気圧配置)によって変わってきます。
気象庁の説明には「台風は他の台風以外にも気圧の谷や高気圧、偏西風などの影響も受ける。
個々の事例については相互作用の程度を明確に示せないことなどから、解説には用いない」として、使用を控える用語としています。
こういうことが起こるんだというように見るのもいいのかも知れません。天気図の台風10号は9号の通過を待って北上しようとしているように見えます。
この間9号はだんだん発達しているのに対して10号は9号が完全に通過するまでは衰弱していっています。
台風9号が北上を終えると。後を追うように再び発達を始めます。これは時間待ち型のパターンに一致します。
<解説文を閉じる>
4-1d湿舌
台風によって暖かい湿った風が運ばれてきます。(2012年6月18日9時)
台風(低気圧)の周囲では左回りに風がまわっています。そのため、台風の東側では南寄りの風が吹くことになります。
この南風によって、南方にある暖かい湿った風が北の方へ運ばれてきます。
運ばれてくる範囲は北側に伸ばした舌の形に似ていることから、この風を「湿舌」といいます。
台風が南西方向から接近しているときに生暖かい風が吹くのはこのためです。
湿舌が高い山の斜面や前線にぶつかると、そこで上昇気流となり大雨になることがあり、注意が必要です。
天気図の日も、宮崎県などで大雨が降ったそうです。
本州南岸から九州南部を通って中国大陸にのびる前線は、台風がなければあまりはっきりしたものではなさそうです。
台風の影響で活動が活発になっているように見えます。
<解説文を閉じる>
5.秋の天気図
秋から初冬への天気変化は、春から梅雨までの変化の逆をたどります。用語については多少異なっていることがあります。
おもな天気図と解説については春の項目を参照ください、梅雨に対応する秋雨についてのみ解説します。
5-1a秋雨前線
秋も雨が降り続ける時期があります。秋雨とか秋霖とかいいます。(2015年8月31日15時)
夏から秋になる間に雨が降り続けます。秋の長雨ということばはここからきています。この雨は、つゆほどはっきりした気候区分としては扱われていません。
梅雨時ほど雨が多くないように思えます。台風シーズンと重なっていることが原因のようです。
台風が接近したことによって、降った雨が台風由来のものになっていたりとか。、
接近した台風に前線がかき乱されていつの間にか消えてしまっていたりすることが多いためです。
下図は2017年10月18日18時から25日15時までの3時間ごとの気象庁発表天気図をタイムラプス動画化したものです。
日付を書き換える等多少手を加えています 2017.10.31追記
18日に低気圧が通過した後、それに続く前線が日本列島南岸に居座り続けました。
この間、大阪では半日ほど晴れ間がみられたたときがあったものの、毎日雨が降り続きました。
22日に日本列島に台風が接近し、台風の周囲では前線が消えていきます。通過後に前線ができた場所は日本列島から離れた場所になっています。
<解説文を閉じる>
2017.09.10 ここまで掲載
6.冬の天気図
日の長さが短くなってくると、気温が下がってきて本格的な冬が始まります。(2015年12月4日3時)
大陸バイカル湖付近に勢力の大きな高気圧ができ冬の間ずっと居座り続けます。これがシベリア高気圧です。
シベリア気団ともいいます。また、千島近海には発達した低気圧が次から次へとやってきて消滅していきます。
そのため、日本列島を横切る等圧線は平行南北方向の線で何本も引かれます。これが「冬型の気圧配置」です。
高気圧や低気圧の位置が多少違っていても、日本付近に南北方向に何本も等圧線が引かれる場合は「冬型の気圧配置」と呼ばれます。
この気圧配置では、西側がわが気圧が高く、東側が低いので「西高東低型」の気圧配置ともいいます。
南北に引かれる等圧線によって、北または北西の風(季節風)が吹きます。また、この時の等圧線の間隔が狭いほど風は強くなります。
南北に延びる等圧線の間隔が狭くなっていく場合、冬型の気圧配置が強まるといいます。この逆は「緩む」です。
冷たい季節風が暖かい日本海の上を通ってくると、海水から水蒸気の供給を受け、だんだん湿った空気に変わっていきます。
これが日本列島の脊梁山脈にぶつかって上昇すると、大雪となります。
山脈の太平洋側では、山から「おろし」と呼ばれる冷たい風が下りてきて乾燥した晴れの天気となります。
<解説文を閉じる>
6-1 冬型の気圧配置のいろいろなパターン
一言で冬型の気圧配置といっても、いろいろなパターンがあります。それぞれについて説明します。
6-1a引き型
日本列島東方海上や千島近海で低気圧が発達します。(2014年12月2日9時)
本州東海上や千島付近で低気圧が発達すると、それに引き込まれるように寒波が流れ込んできます。
これによって、日本列島は、強い北風が吹くとともに寒くなっていきます。日本列島の気圧は低くなります。東日本での天気が大荒れになります。
<解説文を閉じる>
6-1b押し型
シベリア高気圧の勢力が強い場合です。(2009年2月16日9時)
千島付近の低気圧に比べて、大陸の高気圧の勢力が大きい場合です。日本列島での気圧は上昇します。
大陸の高気圧が日本列島に接近していても、同じ様な形になります。この時は寒さが長続きしないようです。
寒波襲来の後期によく見られるます。日本列島での気圧は高めです。西日本の方が風が強くなることがあります。
<解説文を閉じる>
6-1c山雪型
日本海側地域では山間部の方が平野部より雪が多くなります。(2017年12月4日3時)
日本付近の等圧線は南北にまっすぐにのびています。
大陸からやってきた冷たい風は、日本海を渡ってきた後、日本海側の平野部はそのまま吹き抜けていきます。
その後。脊梁山脈にぶつかったときに上昇気流となり雪に変わります。そのため、平野部では雪が少なく、山沿いで大雪になります。
<解説文を閉じる>
6-1d里雪型
日本海側地域での雪は平野部で多くなります。(2015年1月19日9時)
日本付近の等圧線が乱れています。日本海東部に低気圧があるからです。
この低気圧を中心にして寒波が吹き込み上昇気流となって雪を降らせます。
従って低気圧に近い平野部でたくさん雪が降ります。
また、等圧線が北西から南東方向なので、山間部では西寄りの風となり山の並びに平行に吹くようになります。
そのために、上昇気流はそれほど強くなく、山間部の雪は少なめです。
<解説文を閉じる>
6-2 冬の天気の変化
冬によく使われる天気用語です。
6-2a木枯らし
木々についた葉を枯らして、飛ばしてしまう強い風です。(2016年10月29日15時)
10月中旬から11月末にかけて8m/s以上になる初めての風を木枯らし一号といいます。
木々の葉っぱが落ち始めた頃の強い北風が木枯らしといっていいでしょう。葉っぱが落ちてしまえば木枯らしとはいえませんね。
この日は、西日本を中心に強い北風が吹き、木枯らし一号と認定されました。
押しの冬型の気圧配置だったため東日本では、風はそれほど強くならなかったようです。
<解説文を閉じる>
6-2b小春日和
初冬でも、暖かい一日となります。(2008年12月8日9時)
「小春」とは旧暦の10月のことをいいます。現在の11月前後にあたります。
この頃に暖かい穏やかな天気になれば、その天気のことを「小春日和」といいます。
冬の寒さが訪れてきていますが、移動性高気圧の接近によってこのような天気がもたらされます。
昼間は暖かくなりますが、夜間は放射冷却によって冷えていき、明け方はぐっと気温が下がることがあります。
冬の終わりから春先のよく晴れた日に使われているのを見受けますが、正しい使い方ではありません。
<解説文を閉じる>
6-2c三寒四温
冬から春に移り変わるときに、
3日間寒い日が続いたあと4日間暖かい日が続くということを繰り返してだんだん暖かくなっていくという意味で使われています。
元々は、中国東北部から朝鮮半島にかけての地域で、
冬の始まりには3日間寒い日が続いたら次の4日間の寒さはちょっとはましになるという意味で使われていたようです。
このことばが日本に入ってきたあと、日本の気候に合うように使われ方が変わってきました。
春先には、このことばにぴったりと当てはまる時が現れてきます。
ことばからは、暖かい日の日数の方が長いので、何となく暖かくなっていくなという感じがします。
これが、冬の終わりから春先に使われるようになった理由だと思っています(個人的な感想です)。
春や秋の天気は周期的に変わることがあります。その周期は7日ごとになることが多いようです。
そのため、週末になったらいつも雨が降っているといったことが起こります。そのような経験はないでしょうか。
これが冬の始まりや終わりにもあらわれ、天気の変化のようすに影響を及ぼすことがあります。
その結果、だいたい7日ごとに暖かくなったり寒くなったりを繰り返すということが起こります。
過去の記録を調べた限りでは、6日前後の周期のものの方が多いようです。
冬の間も、ずっと同じ形の気圧配置が続くのではなく、繰り返しのパターンがあるようです。
だいたいの形を模式化してみました。
実際には、周期が違っていたり、西方から低気圧がやってきたりと、このとおりのものを見つけるのは難しいようです。
あくまでもイメージとしてみてください。図では前線を省略しています。また、右下の数字は、日本列島がぐっと寒くなってから何日後かを示しています。
それぞれの図について詳しく見ていきます。解説の数字をクリックすると該当日の気圧配置を表示するようにしています。
(1) |
低気圧は千島付近に達し衰え始めます |
(2) |
シベリア高気圧が大きくなってきます |
(3) |
シベリア高気圧が南の方に張り出してくるようになります |
(4) |
華中付近に高気圧ができます。これに伴って、華北付近に気圧の谷ができ始めます |
(5) |
華中の高気圧が東に移動してくるとともに、華北の気圧の谷に低気圧が発生します |
(6) |
華中の高気圧は移動に伴って弱くなり消滅していきます。華北の低気圧は東に移動しながら発達していきます |
(7) |
低気圧が日本海を通過する頃から急激に発達し、日本東方海上へぬけていきます |
中国東北部や朝鮮半島で、三寒にあたるのは、シベリア高気圧の張り出しが強くなってくる頃で、
「押しの冬型」の気圧配置によるものと考えられます。番号でいえば(2)(3)(4)にあたります。
逆に東日本では、低気圧の発達に伴って寒気が引き込まれる「引きの冬型」の気圧配置によるもの、
(7)(1)(2)の頃がピークになります。北に行くほど引きは強くなり、寒い時期が長く続くようです。
西日本では、「引き」始めは早くなるものの、風が収まるのもそれ以上に早くなるようです。
この変化のようすはは、時期によって多少変わります。
真冬では、シベリア高気圧は華中に張り出したまま、大きくなったり小さくなったりを繰り返すだけです。
華中で高気圧が発生することはありません。
それに伴って、低気圧の発生は場所は東に移動し、日本海付近で現れては発達しながら東北日本を通過するということが多くなるようです。
このような変化に対して、冬の初めや春先になると、華中でしっかりとした高気圧ができ、
そのまま衰えずに東シナ海を渡り日本列島にまで達するようになります。
後方の気圧の谷もはっきりしたものができ、華北だけではなく先島諸島付近でも低気圧が発生することがあります。
これらの低気圧は、急速に発達しながら日本付近を通過するようになっていきます。
<解説文を閉じる>
2017.06.10 用語・春編 掲載
2017.07.2X 梅雨・夏編 掲載
2017.09.10 台風・秋編 掲載
2017.10.31 冬 編 掲載