この石は、白い粒(軽石)と黒い粒(岩のかけら=岩片)が集まってできています。 写真の茶色っぽいところは風化によるものです。
手前の面をよく見ると、白い粒が細長くなっていてやや右下がりの筋を作っているのがわかります。 これは、まだ固まりきっていない軽石が、
押しつぶされ扁平になってできたものです。この構造から、堆積したときは、軽い石が溶けるような高温であったことがわかります。また、
軽石が含まれていることから、この石は火山灰が積み重なってできた岩石(火山砕屑岩)のなかまということす。その内、
軽石が堆積後の熱で溶けている様なものを、溶結凝灰岩(ウェルデットタフ)と呼んでいます。一般に軽石はマグマが空中に放出され、
空中で発泡しながら固まったものと考えられています。それが、ほとんどその状態から冷やされずにたまっていますので、
軽石が火山ガスなどと一団となって押し寄せてきてできたものと考えられます。このような軽石などが押し寄せてきた流れを火砕流(軽石流)といいます。
溶結凝灰岩は、火砕流によって作られるものと考えらます。
ところが、この石がどのように露出しているか(産状といいます)を調べてみると、ふつうに地層を作っているのではなく、
ある種の火成岩と同じように 地下にできた大きな割れ目に割り込んできたように見えます。このような産状は一般に岩脈と呼んでいます。この岩石は、
地表をなめるように走ってきた火砕流で作られたものではないことになります。地下深くから吹き上がっているときには、
すでに火砕流のような状態になっていたことを示しています。だから、溶結凝灰岩と区別してタファイトと呼んでいます。
火砕岩と呼ばれることもありますが、この言葉は火山砕屑岩をさすのに使われていますので適切ではありません。
従来、地下からマグマが上昇し発泡して軽石などが作られるのは、ほとんど地表に出てからだと考えられていました。
タファイトが発見されたことによって、マグマが地下深くにある時にはすでに発泡し、
固まった状態のものが上昇してくることがあるのがわかりました。噴火口が開いて圧力が下がり、急速に泡ができ、
それが急激に膨張を始め、断熱冷却で冷え固まり、ガスの勢いで粉々になりながら火道を通って一気に吹き出そうとしたのでしょう。
おそらくマグマだまりにたまっていたマグマの大半は放出されたでしょう。よく振ったビールの栓を開けたときのように(この時泡は固まりませんが)。
噴火口は何kmも続く割れ目です。地表では、誰もが経験をしたことがないような凄まじい噴火が起こっていたものと思われます。
噴火が終わり、ガスの放出の勢いがなくなってきたときに火道にあった泡の成分が取り残されてできたものがこのタファイトです。
分類:火成岩か堆積岩かは不明
たぶん堆積岩・火山砕屑岩
産地: 奈良県 川上村 中奥
インターネットを見ていると、火山砕屑岩は火成岩に属するとかかれているものを多く見かけます。逆に、
教科書などでは堆積岩として扱われています。構成粒子は、マグマ起源(本質岩片)のもの以外に、火山体や地下の地層由来の岩片(異質岩片)
を大量に含んでいてよいこと、堆積時の構造(水流によってできたものを含む)が見られることもあるので堆積岩に属すると考えることにします。
背景の岩石は、湖東流紋岩と呼ばれている岩石(溶結凝灰岩)です。