島根県玉造温泉では、弥生時代から平安時代にかけて勾玉などが作られていました。その材料となったのが、この玉造石です。硬くて緻密で、
割れ口もなめらかで鋭く、緑色をしているのがよく使われます。石器時代に旧石器の材料として用いられたものもあったようです。
顕微鏡で見ると石英の非常に小さな結晶でできています。このような岩石は一般に玉随と呼ばれます。玉随の中で透明に近いものが瑪瑙、
不純物を多く含むため緑色となったものを碧玉(ジャスパー)といいます。なお、玉随・瑪瑙・碧玉といった名前は、鉱物名として扱われています。
玉造温泉では、レキ層中のレキとして産出するようで、岩石がどのように作られたものかわかっていないようです。一般に瑪瑙は、
火成岩中のすき間にでき、中心部に空洞があったり、空洞の形と平行に縞模様があったりするので、岩石中のすき間を、珪酸分を含む高温の熱水が流れ、
そこに含まれていた珪酸分が沈着してできると考えられます。玉造石も縞模様が見られることもありますので、
同様にもう少し不純物の多い熱水によってできたと考えられます。
ところで、糸魚川市根知のフォッサマグナジオパークには、枕状溶岩の露頭があります。ここの枕状溶岩のすき間には碧玉が挟まっています。
この様な産状から考えてみると、碧玉は枕状溶岩が地層になってからできたものではないと考えた方がよいでしょう。
海底火山が噴火時した時に、溶岩に熱せられた海水は、水圧で蒸発できないため非常に高温になります。そのため海水には、
マグマの成分である珪酸分などが溶け出し、高濃度で含まれることになります。それが冷却の過程で、再び沈殿することによって碧玉ができました。
ひょっとすると熱水が、溶岩が流れたところに吹き出してきていたのかも知れません。
玉造石の場合、地下深くでできたのか、海底でできたのかどちらかを決める決定的な証拠がありません。不純物を多く含んでいたことを考えると、
マグマ冷却の最終過程でできる熱水に含まれる不純物とはあわないので、海底火山の噴火によると考えた方がよいのかも知れません。
ただ他にも、純粋な瑪瑙も見つかることもあるので、ふつうの熱水起源としてもよい可能性もあります。
分 類:火成岩(火山岩)
岩石名: 玄 武 岩?
産 地:島根県玉造温泉
碧玉・玉随は鉱物名として扱われていますので、岩石名として用いるのには適当ではありません。枕状溶岩に挟まれることから玄武岩としておきます。
それでも碧玉のとれる花仙山周辺には玄武岩がなく、安山岩が露出していますので、安山岩質マグマが海底から噴出したときにできたのかも知れません。
それなら、岩石名は安山岩となります。また、海底に放出された熱水から直接沈殿したものなら堆積岩類のチャートと呼ぶことができます