流紋岩は、火成岩のうちの主要な6種類の一つです。従ってありふれた岩石のように思えます。
一般的には、斑状組織を持っていて(火山岩類である)、二酸化ケイ素の含有量が63%以上(酸性岩類)の岩石というように習います。
流紋岩という名前は、流れたような模様が見られる事からつけられています。
実際には、この模様は流れによってできたのではなく、溶岩中に取り込まれた物質が細く引き伸ばされてできたものです。流理構造といいます。
昔は定義にあうような岩石の内、流れたような模様を持つものを流紋岩としていました。
そうではなく、鉱物の粒(斑晶)が目立つ岩石は石英粗面岩と呼ばれていました。 観光地の古い解説板ではこの名前を見かけることがあります。
現在ではこの2つを区別しないというようになっています。
石英粗面岩と呼ばれていた岩石の中には、その後の研究によって溶結凝灰岩であることが分かったものも多数あるのも関係しているかも知れません。
これとは別に、二酸化ケイ素含有率が63%から70%位のものを、最近ではデイサイトと呼ぶようになっています。石英安山岩と呼ばれていたこともあります。
石英があまり含まれていないものもあることから、カタカナの方の名前を使うのが一般的です。
デイサイトは流理構造を持っていないことが多いようです。 ここでは、流紋岩とデイサイトを区別して考えることにします。
日本列島の火山から噴出する溶岩を見ると、流紋岩でできているものはありません。デイサイトの火山は多数見かけます。
デイサイト火山の噴火の様子を見ると、溶岩に含まれた気泡が膨張破裂することによって、何かの振動をきっかけにして溶岩が爆発的に壊れることがあります。
このようにして発生するのが火砕流です。この現象は、二酸化ケイ素の含有率が大きくなるほど顕著になります。
流紋岩質の溶岩を出す火山の噴火がどうなるか想像してみます。溶岩の性質として、デイサイトより爆発性が強くなります。
マグマが地下深くにあるときは、岩盤の圧力によって爆発はおさえられます。マグマが上昇してくるにつれて、岩盤の圧力は小さくなります。
ある程度の深さまで上昇してきたときに、急激に爆発を起こすでしょう。砕かれたマグマは火山灰となって一斉に噴火口から吹き出してくるでしょう。
このように考えてみると、流紋岩は溶岩となって流れ出してこないことになります
ところが、国内を見ると流紋岩溶岩を見ることができます。そのうちの1つが、この隠岐の島(島後)です。
島後で、流紋岩溶岩が流れ出ることができたわけを考えてみます。ポイントとなるのは、溶岩の元素組成です。
島後の火山岩は、日本列島の他の地域のものと違って、二酸化ケイ素組成の割には、ナトリウムやカリウムといったアルカリ金属がたくさん含まれています。
このような火成岩は、アルカリ岩類と呼ばれます。これができたのは、日本海が裂けてできた事と関係します。
このとき、マントル物質が、周囲の圧力が下がることによって大量に溶けはじめます。
このようにしてできたマグマの二酸化ケイ素組成が、次第に大きくなって流紋岩を作るマグマができていきます。
日本列島の火山のマグマは、沈むプレートによって運ばれてきた水分によって、マントル物質の融点が下がり、マントル物質が溶けてできます。
そのため、火山のマグマには大量の水分が含まれています。このマグマが地表近くに上がってきたときに、マグマから水分が分離し気泡となって出てきます。
気泡は、地表近くにきたときに急激に膨張し爆発を起こします。
マグマのでき方から考えると、隠岐の島の流紋岩マグマにはそれほど水分が含まれていないと考えられます。
そのため、マグマ中には気泡ができず、爆発的な噴火を起こさなかったものだと考えられます。
ナトリウムと二酸化ケイ素の合わさってできたケイ酸ナトリウムは常温では液体です。水ガラスといいます。
つまり、ナトリウムが含まれることによって岩石(石英=ガラス)の融点が下がります。
アルカリ岩は、同じ二酸化ケイ素組成の他の火山岩に比べて粘性が小さく気泡が残されにくいのも、
アルカリ岩に流紋岩が多く見られる原因になっているのかも知れません。
分 類:火成岩 火山岩類 酸性岩類
岩石名: 流 紋 岩
産 地: 島根県隠岐の島町 奥津戸
日本列島には、アルカリ岩ではないマグマからも流紋岩ができていることがあります。
基本的には、気泡が含まれていなければ爆発的な噴火をせず、流紋岩となることができると考えられます。その仕組みを考えてみます。
1つは、地下の圧力で発泡がおさえられた場合です。そのまま地下で固結しますので、岩脈となって出てきます。
この場合、岩石は均質になりますから、はっきりとした流理構造はできません。 流紋岩らしくない流紋岩になります。
もう一つの場合です。いったんできたガス(気泡)が何らかの方法で抜けてしまった場合はどうでしょう。
神戸市六甲山の北側の地域(裏六甲)の何カ所かに流紋岩が見られます。これらの流紋岩は、同じ組成を持った溶結凝灰岩の上に流れているのが特徴です。
何が起こっていたか考えてみましょう。マグマが上昇してきたときに、マグマから気泡が発生します。
気泡をたくさん含む部分は軽いので、上の方に集まります。ビールの泡が上にたまるのと同じ原理です。下の方は気泡が少ないマグマになります。
気泡の多いマグマは、爆発を起こし、一気に噴出して火砕流を発生させます。この時の噴出物が溶結凝灰岩になります。
下の方に残っていた気泡の少ないマグマは、その後ゆっくりと上昇してきて、流紋岩溶岩となって出てくるのでしょう。
2016.04.25