1月1日(正月)は1年の始まりの日です。1年の基準となる日と言っていいでしょう。
それではこの日は何か特別な何かの特徴がある日なのでしょうか。暦の決め方から何かわかるか考えてみることにします。
西暦の1月1日の決め方
西暦の1月1日には全く何の意味もないようです。たまたまそうなっただけのようです。西暦の元となったローマ暦では、
農作業を始める頃にこよみを数え始め、その初日が1月1日だったようです。ローマ暦は太陰太陽暦だったようなので、
春分の直前の新月の日が選ばれていた可能性があります。そこから順に2月、3月、‥‥、10月と続き、
後の60日ほどは農作業のない月ということで、暦を数えるのをやめていました。
この時に使われていた月の名前が現在でも英語での名称として使われています。
化学の物質名を表す時に使われる数詞と比較してみるとおもしろいことがわかります。たとえば、
7=hepta-september,8=oct-october,9=nona-novenber,10=deca-decemberです。ようするに、ローマ時代の7番目の月、
8番目‥‥という言い方をそのまま使っています。その後、1年間暦がないのは不便ということで、december(直訳で10月)
の後にjunuaryとfebruaryが追加され、1ヶ月の長さも30日と31日に決められました。そうこうしているうちに、
januaryが1年の始まりとして使われるようになり現在に至っています。途中で何度か修正が加わっていますが、
januaryの1日を何かの日にしよう、たとえば冬至の日にしようというように決めた形跡はありません。
1年通した暦が完成したときの3月20日頃が春分というのだけが残ったのではないかと考えられます。
春は何月から何月までというのがしっくりこないのはこういったことに原因しているようです。
太陰太陽暦(旧暦)での月日の決め方
西洋の暦はわかりましたが、東洋ではどうなのでしょうか。一般的に旧暦といわれている太陰太陽暦の日(暦日)の決め方を見ていくことにします。
月の動きだけを基準に12ヶ月をとると、1年のながさとは大きくずれます。そのままでは、年月が過ぎると季節と月数が大きくずれ困ります。
そこで基準として、各季節の太陽の位置を決めます。まず、春分・夏至・秋分・冬至はそれぞれ春夏秋冬の真ん中の日と考えます。
そしてそれぞれの季節の始まる日は、二つの日のちょうど真ん中と考え、その日が立春・立夏・立秋・立冬になります。
その前日が季節の変わり目である節分となりますが、実際には立春の前日の節分だけが習慣として残っています。
これだけだと、立春から春分までが約45日、一ヶ月が約30日なので長さが異なります。そこで、約15日ごと、
正しくは太陽が15度動くごとに区切れ目を入れます。そこに、太陽が来る日24日について、季節にあった名前を設定します。
これが24節気です。24節気のうち2つ分で1ヶ月ですから、2つセットで何月かを表し、前の一つが月の変わり目で「節気」、
次の一つが月の真ん中で「中気」となります。これを使って24節気をまとめると次のようになります。
| 正月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
節気 | 立春 | 啓蟄 | 清明 | 立夏 | 芒種 | 小暑 | 立秋 | 白露 | 寒露 | 立冬 | 大雪 | 小寒 |
中気 | 雨水 | 春分 | 穀雨 | 小満 | 夏至 | 大暑 | 処暑 | 秋分 | 霜降 | 小雪 | 冬至 | 大寒 |
これを使って、月の配置を太陽の動きにあわせるようにします。たとえば正月(元日)の決め方は、次のようになります。
正月の中気(正月中)は雨水です。この日は月の中日ですので、必ず正月(1月)にあるようにします
※1。そこで、
雨水の日も含めてその直前に朔(新月)になる日を元日と決めると条件が満たされます。雨水の日が元日になることもあります。
同様に春分を使って2月、というように各月を決めていきます。さらに微調整が必要です。新月から次の新月までの長さ(朔望月)は、
節気2つ分の長さに1日ほど足りません。従って、例えば雨水が正月元日にあるとすると、直前にある大寒の翌日が新月になります
(多少ずれることもある)。この時大寒の翌日から始まる1ヶ月には中気が含まれません。これを余分に差し込まれた月ということで「閏月」
とし、直前の月の名前を使って、閏12月というように表します。
中気 大寒←−−− 約30.5日※2−→雨水
朔望月 朔←− 約29.5日※2 −→朔
暦月 12月 晦日|1日←−− 閏12月 −−→晦日|1日 正月
※1 | 何月にするかが決まっているのは春分2月、夏至5月、秋分8月、冬至11月のみです。
ほとんどの年はこのようになると考ることができます。 |
※2 | 数値は平均値なので多少変化します。小寒の頃に地球は近日点を通過するので太陽の動き速く、
閏月の入れ方の決まりとあわせれば、 大寒−雨水間(節気間)の日数は平均より少なくなります。2010年では29.6日です(朔望月より短い!)。
これが原因で2033年には何月か決められないという問題が発生することがわかっています。 |
1年の始まりはいつ
暦で見る限りは、1年の始まりは何となく春かなという感じがします。実際、春の気配が感じられるようになると、
1年が始まったという気になります。ところが、太陰太陽暦では、もともと冬至を11月にするのが基準となっていました。
大事なのは春よりも冬のようです。冬至の日は1年でいちばん昼の長さが短い日です。北欧など緯度の高い地域では、
この日を境に昼の長さが長くなり、太陽の高さも高くなっていきます。弱まっていた太陽の力が復活していくように感じられるでしょう。
1年の始まりとしてふさわしいような気持ちになるでしょう。
土地柄によって、1年の感じ方が違うようです。西洋人の書いた本には春の始まりは春分であると書かれているものがあります
※3。
これだと1・2・3月は冬になります。太陰太陽暦(旧暦)を使っていた東洋では、立春が春の始まりで、
これに基づいてもうけられた旧正月は春節として祝われます。1年の始まりは、長年使っていた暦によって決まってくるようです。
※3 カエルや魚が降ってくる J.デニス 新潮社 1997年
2011.10記載