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ヨッシンと 地学の散歩

散歩道の四方山話 


天体観測をしよう(前編)

 きれいな星空を眺めると、圧倒されることがあります。そうでなくても、一つ一つの星を見るだけでも楽しいものです。 注意事項とかこんな見方もあるよといったことを思いつくままにまとめてみました。
 写真撮影の方法についても解説しています。一般的な写真撮影法についても触れてみます。
内 容

前編(天体観測編)
1.星を眺めてみる
1-1 見えるもの
1-2 星を見る場所
1-3 流れ星を見る
1-4 太陽を見る
1-5 星座を探す
2.望遠鏡を使う
2-1 望遠鏡を使う理由
2-2 望遠鏡のしくみと性能
2-3 光の集め方による望遠鏡の違い
2-4 支え方による望遠鏡の違い
2-5 天体望遠鏡の使い方
2-6 太陽の観測
2-7 双眼鏡を使おう

後編(写真撮影編)の内容

1.星を眺めてみる

1-1 見えるもの(写真をクリックすると解説のあるページにジャンプします)
 望遠鏡などの道具を使わず目で見る場合、肉眼で見ると言います。ちょっと難しく、肉眼観測とか眼視観測といういいかたもあります。 肉眼で見るのがいちばんいいのは、月や星を眺めたい時です。
 月は、秋の月見の時には話題になります。毎日見ていると表面の模様や満ち欠けのようすがわかります。欠けている部分もわずかに光って見えることもあります。 月食があるときは、欠けたりそれが戻っていくようすも見ることができます。
中秋の名月 十三夜 皆既月食
 星は、金星とかアルデバランといったように惑星や明るい星を見たり、北斗七星や夏の大三角というように星の並びを探してみたり、 オリオン座といった星座を探すことがあります。 星座を調べるのには星座早見があると便利です。1つ持っているといいでしょう。 −−作り方はこちらです
惑星直列 土火金水星
北斗七星 夏の大三角 オリオン座
 月と星が不思議な並びになったりすることがあります。月と金星が並んだだけでも見応えがあります。たまに星食といって星が月に隠されたりすることもあります。
三日月・金星・木星 星食(ふたご座λ) 木星食
 夜空の暗いところでは、天の川が見られるかもしれません。残念ながら、大阪府下でははっきりと見られる場所はほとんどなくなってしまいました。 他に暗いところでないと見えない現象としたは、明け方や夕方に見える黄道光や真夜中に見える対日照などがあります。
さそり座と天の川 黄道光
 二つの星がすぐ近くに並んで見えることがあります。二重星といいます。代表的なものは、北斗七星の柄の先から2番目のミザールとアルコアです。 視力がよくないと区別できませんから、視力検査の代わりに使われたりします。このほかにもプレアデスといった星の集団やオリオン星雲といった星雲、 アンドロメダ銀河などの銀河もぼんやりとした光の塊として見えるかもしれません。
ミザールとアルコア すばる食 アンドロメダ銀河
 ごくまれに、肉眼で見えるほど明るい彗星が現れることもあります。尾などの形の変化や、移動していくようすを見るのもいいでしょう。
ハレー彗星 ヘールボップ彗星 ホームズ彗星
 肉眼観測が他の方法に比べて優れているのは、流れ星を見るときです。見たことがない人もいるようですが、結構流れて見えるものです。 他に動いて見えるものとしては、人工衛星があります。日没後や夜明け前にゆっくり動いていくのがよくわかります。
ふたご座流星群流星 人工衛星
 視力が落ちると星の見え方は各段に悪くなります。視力の悪い人は目に合った、眼鏡やコンタクトレンズを用意しましょう。
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1-2 星を見る場所
 まず、空が開けているところが必要です。北斗七星とかいくつかの星座は思ったより大きいものです。 一部分だけしか見えていないとわかりにくいし、見応えも半減します。これを基点にして、北極星とかアークツルスとか、 他の星座や星を見つけていくこともできます。また、星は動いていきます。見える範囲が狭いと、すぐに隠れてしまうでしょう。
 2番目に、暗いこと。暗くなればなるほど見える星の数は増えていきます。 これは、空そのものが暗いばかりではなく、周囲が電灯などに照らされていないことも大事です。電灯の明かりが目に入ると星は見づらくなります。 暗いと、不安になるかもしれませんが、星を見ているとだんだん忘れてきます。
 夜間照明のあるスポーツ施設の周辺は最悪です。Jリーグチームのホームグラウンドから3km以上離れたところに住んでいますが、 その照明のためナイトゲームのある日は夜半過ぎに消灯されるまで眩しすぎて観測できません。 パチンコ屋や大きなガソリンスタンド、高速道路の標識照明など、観測に支障が出るような照明を出す施設が周辺にないか、 場所を選ぶときにチェックしておきましょう。空自体が相当な光を放っています。
 星を見始めてすぐよりは、しばらくしてからの方がよく見えます。目が慣れてくるからです。 そうなると、懐中電灯でも明かりをつけるのはやめましょう。再び目がなれるまでに時間がかかるからです。 携帯電話のアプリに星座を示してくれるものがありますが、この画面を見るだけでも星が見づらくなります。 どうしても光が必要というときのために、懐中電灯に赤いセロファン紙をつけるといいでしょう。赤い光は目に負担が少ないからです。 赤のLEDを電池につないだものを作り使っています。
 月や5大惑星はそんなに暗くなくても見ることができます。街灯などの照明が目に入らなければ、観察には問題はないでしょう。
 3番目は、足下が平らでしっかりしたところがいいでしょう。例えば、ぬかるみの上だと、座ったり、寝転んだりすることができません。 立ったままだと、疲れやすくなりますし、上を見上げたままなので首も痛くなってきます。 最低限座ってみられる場所、できればシートを広げ寝ながら眺められる場所を探しましょう。
 せっかく観測を始めたら、蚊がよってきて気が散ってしまったとか、風が強く対策で何もできなかったということもあります。 それから、長時間の観測の場合は生理現象の対応も考えていた方がいいでしょう。
 暗くなってから、観測場所を探し始めても、地面の状態がどうなっているかなどわからないことがあります。 初めての場所で見るときは、明るい内に観測候補場所を何カ所か見つけておくといいでしょう。 昼間にはわからなかったけれども、意外と街灯や自動販売機の明かりがまぶしく観測に適さないという場合もあります。
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1-3 流れ星を見る
 一度は流れ星を見てみたいという人もいると思います。実際には、一晩の内にも結構な数の流れ星を見ることがあります。 変わったところでは、空の端から端まで5秒以上かかって流れたもの(これだと3回以上願い事は唱えられる)、 流れた跡に雲のようなものができるもの(流星痕)、下から上に上がっていくもの、 夜空の一点が光りだし次第に消えていくもの(静止流星)を見ることもあります。流れ星を見るための要領をまとめてみます。

 流れ星と言っても、明るいのから暗いのまでさまざまです。暗い流れ星は、暗い星の見えるところでないと見えませんから、 夜空の暗いところがいいのは言うまでもありません。月明かりも大きな影響があります。できれば、月のない夜、あっても三日月程度の日を選びましょう。
 また、どこに流れるかはわかりません。視野いっぱいに、できればそれより少し広い範囲の空が見えるところがいいでしょう。 視野より外側は、どうせ見ることができませんから(ちょっとは見えています)、明るくなければ障害物があってもかまいません。
 いつ流れるかもわかりませんから、長期戦に備えましょう。座ったり、寝転がって見るのが最適です(本当に寝ないように)。 時間帯でいえば、夕方より明け方がよく流れることが証明できます。観測に本格的に挑むなら、夜明け前まで粘る覚悟で挑戦しましょう。 明け方は冷え込むことが多いので、毛布などの防寒具も用意しておきましょう。
 年間を通じて、流れ星の流れやすい時期があることがわかっています。 そのとき流れ星は星座の一点を中心にして外側に広がるように流れていきます。 雪が降っている中を走るとき、斜め上を見上げると、雪が一点を中心にして外に広がるように落ちてくるように見えるのと同じ原理です。 放射状に広がる中心にある星座の名前をとって○○座流星群というように呼びます。そのうち、よく流れる3つは3大流星群と呼ばれています。 1月始めの四分儀座流星群、8月中旬のペルセウス座流星群、12月中旬のふたご座流星群です。 よく流れるのはふつう一番多く流れる日の前と後1〜2日程度ですが、ペルセウス座流星群のように前と後10日以上も流れ続けるというものもあります。
 流れ星は、太陽系空間に散らばる塵が地球にぶつかり落下して光っています。 彗星は太陽に近づく度に塵をまき散らすので、彗星の軌道上に塵が密集しています。 そのため、彗星の軌道を地球が横切るときにたくさんの流れ星が流れます。これが流星群の正体です。 最近では理論的に時間まで推定できるようになってきています。彗星が太陽に近づいたときに放出した塵が、彗星と同じようにをまわっている軌道を求めます。 そして、それがいつ地球にぶつかるか計算し、流れ星が集中する時間帯が推定できるようになっています(ダストトレイル法)。 予想は、天文雑誌や天文関連のウェブサイトに載りますので参考にするといいでしょう。たくさん見られそうなときは、新聞やテレビで報道されるかも知れません。
 流れ星の観測になれてくると、記録を取ることに挑戦しましょう。 流れた時刻(時分)・時間(何秒間)と位置、明るさ、速さ、色、流星痕ができたとかいった特徴を書いておくといいでしょう。
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1-4 太陽を見る
 太陽だって観測の対称になります。普段から日の出や夕日を見たりすることが多いようです。 この場合はどちらかというと、太陽の傾きや位置の変化によって空や雲が変わっていくようすを楽しむことがほとんどです。 御来光という信仰的な要素も入ることがあります。
初日の出
 大きな黒点ができたときに、見つけたりすることができるのも、太陽の光が弱くなっているこの時間帯が多いようです。 過去には、上高地で太陽が出現する直前に太陽のプロミネンスが見られたという例もあります
肉眼黒点
 日食や金星の日面通過があると、太陽が変わっていく様子がわかりますので、観測する絶好の機会なのではないでしょうか。
金環日食 金環日食 金星日面通過
 太陽を見る上で注意してほしいことがあります。光は非常にまぶしいので、ちょっと見ただけで目に大きな障害を受けます。 必ず、太陽眼鏡等を使って光を和らげてから見てください。朝日や夕日でも同じです。
部分日食の影  主に日食を観測する道具として太陽観測用の筒を紹介しています。 このようなものでなくても、木漏れ日の作る影を見ると太陽がかけているようすを見ることができます。 穴を開けた板を使うことで同じように観測できます。小さな手鏡で、影になっている壁に反射させてみるという方法もあります。
ここまで2015.05.10掲載
1-5 星座を探す
<星座の探し方>
 星を見るときに星座がわかるのとわからないのとでは、見方が大きく変わってきます。 それ以外にも、天体を探すときには、月や惑星、星座が利用されます。 たとえばオリオン星雲の位置は、オリオン座の真ん中にある三つ星の下に並ぶ縦三つ星の真ん中の星を中心にして周りに広がっているというようなことです。 そのためには、オリオン座を知らないと探せないことになります。 ここでは、特徴的な星のならびをを利用して名前のある星の見つけ方を解説します。 所属する星座を書いていますのでそのあたりに星座があると考えてください。 詳しい星座の形とか、さらに周りにある星や星座については、星座早見や星図を参考にしてください。 星座早見の作り方使い方についてはこちらで解説しています。
 解説に従って星を見る上で、注意して欲しいことが何点かあります。確認しておいてください。
 1点目は、時間だけでなく日付によっても星の見える位置が変わるということです。 たとえば、春と書いてあっても3月頃の日没後ですと、夜空の大半は冬の星座が占めていて、春の星座は、やっと東の空から昇り始めた状態です。 春の星座が頭の真上にやってくるのは真夜中です。明け方になると、春の星座は沈み、夏の星座が頭上に来ます。 これが5月になると、春の星座が頭上に来るのは、夜の8〜9時頃と早くなります。
 春の星座というのは、春に一晩中見えている星座だと思ってください。真夜中ごろに頭上にある星座達ともいうことができます。 この場合、日がたつにつれ、真上に来る時刻はだんだん早くなっていきます。
天体間の距離の測り方  2点目は、星座の大きさの表し方についてです。大きいといっても人によってその感じ方は様々です。 そこで、大きさは、天体と天体の見かけの距離をいう場合に使われる基準を使うことにします。 それは、2つの天体の見える方向の違いを角度で表して示す方法です。 たとえば、北極星の高度はその観測地点の緯度と同じであるといいます。 これは、北極星が観測場所の緯度が35度としたら、その高さは35度だということです。 高さだからといってkmで表さないのです。35度になるのは、真北(地平線上にある)の方向と北極星の方向との間の角度です。 真北の位置に天体はありませんが、もしそこに星があって、北極星以外に他の天体が見えなかったとします。 北極星とこの星がどれだけ離れて見えるか説明しようとしたら、35度という角度を使うのが便利だということがわかると思います。
 それでは、星が35度離れていると説明されたとします。実際に、どれだけ離れて見えているのでしょうか。 そのままではわかりませんね。なにか基準になるものがあればいいのにと思います。 普通よく使われているのは、腕を思いきり伸ばしたときに見える握り拳の幅が約10度、同じ状態で親指と小指を伸ばしたときの指先の幅が約15度という方法です。 35度なら握り拳3個半の大きさになります。この方法は便利なので覚えておいてください。
 3点目は、惑星などが入ってくると星座の形がわかりにくくなることです。星を見る前に、惑星がどこにいるのか調べておくといいでしょう。 星より明るいことが多く、いちばんに見つけることができます。惑星から星座や星をたどっていくこともできます。
 星座を見つけにくいのは、見る空の明るさによって見える星の数が違ってくることと、星座の見える場所が変わること、 それに、見える位置によって星座の形が回転していることに原因があります。このあたりは、星を見慣れるしかないようです。

<北の空>
 星を見るときに方角が問題になるときがあります。 たとえば、星座早見を使って星座を探すとき、星座早見をどちらに向ければいいかとか、望遠鏡をどのようにおこうかといった場合です。 その目印になるのが北極星です。星座を探すときに方位がわかっていると見つけやすくなります。 そのためにも、星を見始めたら、北の空の星座を見つけ、方位を確認しておきましょう。
 下に北の空の星座を示します。
北の空の星座
星座図だけを拡大する   線つき星座図を拡大する
こぐま座  北極星は、いつも真北のだいたい決まった高さの所に見えています。周囲に特徴のある星の並びがないので、確定するのはちょっと大変です。
 空の暗いところでは、こぐま座(右図)の星の並びから判断できることもありますが、ちょっと空が明るくなると見える星が少なくなりわかりにくくなってしまいます。 同じ緯度だと、慣れてくると見える高さから見当をつけることもできます。
 北極星を見つける方法としてよく使われるのは、北斗七星から見つける方法と、カシオペア座から見つける方法です。 北斗七星とカシオペア座は、北日本では北の地平線が開けているところでは、一日中空にでている周極星になっています。 南日本でも、空が開けていればどちらかは必ず見えていますので、いつでも北極星にたどりつくことができます。
北斗七星  北斗七星は、7つの星がひしゃく型に並んでできています。端から端までが20度ほどあります。 最初に見つけたときは意外と大きく感じました。比較的明るい星で構成されていて、周囲に同じくらいの明るさの星がないので、慣れると見つけるのは簡単です。 おおぐま座の腰からしっぽにかけての部分になります。北斗七星が見つかったら、カップの先にある2つの星、メラク(底側)とドゥベ(口側)を結びドゥベ側に、 2つの星間の長さを5倍延ばしたあたりを見ると北極星を見つけることができます。図はこちらにあります。
 カシオペア座は、いびつな「W」の字のような星の配列になっています。実際にこのような形になるのは地平線に近いときで、 カシオペア座 よく見るのは、横向きか、「M」の下側が開いたような形でしょう。大きさは、10度くらいで、北斗七星の半分くらいです。 一つ余分に星があるので、最初はわかりにくいかも知れませんが、慣れればこの星も含めて星座の形をすぐに見つけ出すことができるようになります。  カシオペア座から北極星を探す方法は少し複雑です。「W」の両端の線を延ばし、 交わったところと真ん中の星を結びその長さを5倍したあたりに北極星を見つけることができます。

<春の空>
 春は明るい星が少ないので、星空としては物足りないかも知れません。 1等星は、アークツルスとスピカ、レグルスの3つだけです。実は、南の地平線近くは明るい星がたくさんあります。 低くなると星が暗くなりますから、全体的に星が少ないように見えているだけです。
 5月終わり頃、夜9時頃の頭上の空です。ちょうど頭上になるのは、星を見る場所によって変わってきますが、図では中央より1/4ほど上側です。 下が南になります。半月早いと1時間遅い時刻に同じような状態になります。3月の初めだと1時頃になります。 また、早い時間だと、右側の星座が、頭上に来ていることになります。 空の広い範囲を、図にしたので星座の形がゆがんでいます。周辺部ほどその傾向は大きくなっています。だいたいの形だと思いながら見てください。
春の星座
星座図だけを拡大する   線つき星座図を拡大する
 春の夜空は、暗い星が多く星座の形もわかりにくいものばかりです。そのなかにあっていちばんわかりやすいのは北斗七星でしょう。 北の空、ちょっと見上げたくらいの高さにあります。ここから星座探しを始めることにします。 柄杓の柄のカーブをそのまま伸ばしていくと、橙色っぽい明るい星にたどり着きます。 これがうしかい座のアークツルス(アークトゥルス)です。さらに進めると、もう一つ明るい星にたどり着きます。おとめ座のスピカです。 さらにもう少し伸ばすと、台形に並んだ4つの星に行き当たります。これがからす座です。北斗七星からからす座に至る曲線を春の大曲線といいます。
春の大三角  春の大曲線がわかったら次の星を探すことにします。スピカとアークツルスが底辺になるような正三角形を考えその場所を探します。 春の大曲線の中心側を探してください。ちょっと明るい星が見つかります。2等星のデネボラです。しし座にあります。 この3つの星を結んだ線を春の大三角といいます。
 次に、アークツルスとデネボラを結ぶ線を底辺にしてもう一度、正三角形を考えます。スピカと反対側に作ってください。 頂点から少し外れたところになりますが、ここにもちょっと明るい星があります。りょうけん座のコルカロリです。 アークツルス・スピカ・デネボラ・コルカロリの作る四角形を春のダイヤモンドといいます。
しし座  春の星座で、形がわかりやすいのは、からす座としし座です。しし座を探すことにします。デネボラからアークツルスと反対側に、目を移していくことにします。 デネボラを頂点にした直角三角形の星の並びが見えてきます。これは、ししの腰からおしりの部分にあたります。 さらに目を動かしていくと半円形に並ぶ星とそこから縦につながる星の並びが見えてきます。 ちょうど、「?」を反対にしたような並びになっています。ししのたてがみから肩の辺りに相当し、 この並びを日本では鎌にたとえて、ししの大鎌と呼んでいます。この大鎌と先ほどの直角三角形をつないでみると、 何となくししの形が見えてきます。足の位置が気になりますが、それを探すのは慣れてからにしましょう。

<夏の空>
 春の空から3ヶ月後の空のようすです。春の場合と同じ広さになるように書いています。方位は上が北です。
夏の星座
星座図だけを拡大する   線つき星座図を拡大する
夏の大三角  まず、頭上よりやや東寄りを見てみましょう。ひときわ明るい星が3つあり、結ぶと二等辺三角形になるように並んでいます。 星は、こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブです。 ベガはこの時期最も明るく見える星なので、この星を基準に探していくといいでしょう。この三角形を夏の大三角といいます。
 夏の大三角のデネブから、三角形の向かい側の辺の真ん中あたりに向かって、星が並んでいます。はくちょうの胴体から頭にあたります。 デネブから2つ目のの星から左右に星が並んでいきます。これがはくちょうの羽根になります。 胴体−頭の線と羽根の線は十字架のように並んでいるように見えます。この星の並びは、有名な南十字に対して、北十字といいます。
いて座  デネブからアルタイルの方向にずっと空を追っていくことにします。空の暗いところでは、このあたりに天の川が見えるはずです。 そのまま追っていきましょう。デネブ−アルタイル間の距離と同じだけ(約40度)外側に進んだところに、6つの星がひしゃく型に並んでいるのが見えます。 この星の並びは、北斗七星に対して、南斗六星といいます。南斗六星はいて座の一部になります。
 天の川に沿ってもうちょっと進んで行きます。夏の終わりだと涼んでしまっているかも知れません。 星が「S」字を少し伸ばしたように並んでいるところがあります。 さそり座 このあたりがさそり座になり、この並びを「さそりのS字」ということがあります。さそりの頭−胴体−しっぽに対応します。 S字のいちばんいて座よりの所は急に向きを変えているように見えます。さそりの毒針のようです。 日本では、S字は、釣り針と釣り糸に見立てることがあり、各地でそれにちなんだ名前もつけられているようです。
 さそりの心臓にあたるところにある赤く明るい星がアンタレスです。ここを真ん中にして3つの星が並んでいます。 この並びは、冬に見えるオリオン座の三ツ星に対して、さそりの三ツ星と呼ばれることがあります。 中国の故事ではさそり座3つの星を「商」といい、 オリオン座のものは「参(しん)」といいます。仲の悪い兄弟にたとえられています。

<秋の空>
 夏の空から3ヶ月後の空です。同じ方位、同じ大きさで書いています。
秋の星座
星座図だけを拡大する   線つき星座図を拡大する
やぎ・みずがめ座  秋も星が少なく寂しい感じがします。その中で目立つのが唯一の1等星フォーマルハウトです。南の空ちょっと見上げたくらいの高さに見えます。 みなみのうお座の星にあります。うお座も近くにあるのですが、みなみのうお座と同じように、暗い星が多くわかりにくい星座です。 星座の形については他の星座同様、省略させてもらいます(右写真参照)。
 反対側の北の空でわかりやすいのがカシオペア座です。かなり高いところに見えます。
 次に見つけやすいのが、頭上近くやや西寄りに、四角く4つの星が並んでいます。一辺の大きさは15度くらいです。 ペガススの四辺形といわれます。秋の(大)四辺形という場合もあります。ペガススの胴体にあたる部分になります。
ペガススの四辺形  四辺形の東側の2つの星を結んだ線と、西側の2つの星を結んだ線を延ばしていくと、交わったところに北極星を見つけることができます。
 ペガススの四辺形と名前がつけられていますが、全ての星がペガスス座かというとそうではありません。 いちばんカシオペア座よりの星はアンドロメダ座からの借り物です。 この借り物の星(アルフェラッツ)から、北極星を中心とする円を引いていくと、同じくらいの明るさの3つの星を通ります。 アルフェラッツと最初の2つがアンドロメダ座で、3つ目の星(アルゲニブ)はペルセウス座の星になります。
 この3つの星とペガススの四辺形とを組み合わせると、大きな柄杓の形が描けます。この形を秋の大びしゃくといいます。かなり大きいですね。
 ペルセウス座からカシオペア座にかけては天の川が通っていますが、ぼんやりとしています。空がかなり暗いところでないと見えないでしょう。 空が明るいところでも、秋の空の中ではこのあたりには星がたくさん見えます。

<冬の空>
 秋の空から3ヶ月後の空です。
冬の星座
星座図だけを拡大する   線つき星座図を拡大する
冬の大三角  冬は、再び星が多くにぎやかになります。明るい星も多く、日本から見える1等星だけでも8つあります(そのうちの一つは東北・北海道では見ることはできません)。 この1等星のうち3つを選び出し線で結ぶと三角形を書くことができます。 その中で、最も正三角形に近いのは、おおいぬ座シリウス・こいぬ座プロキオン・オリオン座ベテルギウス(ベテルギュース)を結んだ組み合わせになります。 この3つの星が作る三角形を冬の大三角といいます(右図)。
 このうち、いちばん明るいのがシリウスで夜空で最も明るい恒星です。ベテルギウスは赤っぽい色をしているのでわかりやすいでしょう。
 ベテルギウスを中心にして、1等星を反時計回りに追いかけていくことにします。 シリウスからオリオン座のリゲル、おうし座のアルデバラン、ぎょしゃ座のカペラ、ふたご座のポルックス、そしてこいぬ座のプロキオンに戻ってきます。 この六つの1等星を結んだ線はちょっといびつな形の六角形になります。この六角形を冬のダイヤモンドといいます。 この六角形をいうときに、ふたご座のポルックスはカストルとあわせていっしょに一つのかどにあるとみることもあります。
オリオン座  星座の名前が出てきましたが、この中でいちばんわかりやすいのがオリオン座でしょう。 ベテルギウスとリゲルを結ぶ線が対角線になるような長方形の頂点の位置に2つの明るい星(サイフとベラトリックス)があります。 そして、その真ん中に3つの星が並んでいるのが特徴です。
 次にわかりやすいのが、ぎょしゃ座で、カペラから始まって5つの星が五角形を作っているのが特徴です。 実際には、そのうちの一つはぎょしゃ座に属する星ではなくおうし座のつのの先の星です。 昔は、この星はどちらの星座にも属していたのですが、星座を分けたときにおうし座の方に入ることになりました。
ふたご座  ふたご座もわかりやすい星座で、ポルックスとカストルの真ん中を通る線を中心に、対称に星が並んでいて、 双子の兄弟を表しています。
 星で目立つのが、プレアデス(すばる)でしょう。もやっとした光の塊のように見えますが、よく見ると6−7個の星が集まっているのがわかります。 この場所はおうしでいえば肩の所になります。 すばる おうし座ぎょしゃ座
 また、アルデバランの周辺にもたくさんの星が集まっているのがみえます。 この星の集団はヒアデスといいます。 星は「V」の字に並んでいて、おうしの顔のであごから目にかけての部分に見えませんか。 シリウスとカノープス さらに「V」の両辺を伸ばした先に星があり、ここまでつのがのびています。
 8つ目の1等星を探すことにします。この星は、夜空で2番目に明るい恒星で、カノープスといいます。 見えるときは地平線に近い位置にあり、大気の影響で暗くなっていてそれほど明るくは見えません。 また、空にでている時間はわずかなので、 時間がずっると見えないでしょう。なかなか見ることができないので、この星を見ると寿命が延びるとか言われています。 シリウスから真っ直ぐ南に35度離れた場所にあります。地平線近くの該当する場所で1つだけ見えた星があれば、それはおそらくカノープスでしょう。

2015.12.10この項掲載
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2.望遠鏡を使う

2-1 望遠鏡を使う理由
 望遠鏡を使って、例えば月を見たとします。月は大きく拡大され、肉眼で見えなかった、クレーターがはっきりと見えるようになります。 このように望遠鏡を使う目的は、天体を拡大してみることにあります。ここで、単純に大きく見えるようにしていったとします。 一つ困った問題が発生します。倍率を上げればあげるほど天体は暗くなっていくことです。 天体はもともと暗いものが多く、それ以上暗くなっては見えなくなってしまいます。そこで、望遠鏡にもう一つ大きな役割が必要になります。 それは、レンズなどを使って光を集めるというものです。どちらかと言えば、望遠鏡の目的はここにあります。 適当に暗くならない程度に倍率を上げつつ、光を集めるためのものです。
 望遠鏡を使って観測されるのは、月の他、惑星や二重星、星雲、星団、銀河などです。
 月は、表面にあるクレーターがはっきりと見えるようになります。特にかけ際は、クレーターに影が伸び、形がよくわかります。 比較的大きな天体ですから、望遠鏡に入れやすいでしょう。慣れるまでは月を使って練習するのもいいでしょう。 満月の頃は、ちょっとまぶしいかも知れません。
コペルニクスクレーター チコクレーター 月面×
惑星では金星の満ち欠けのようすや土星の輪といったものをみることができます。大きな望遠鏡では火星・木星の表面模様も見えるようになってきます。
金星 木星 木星(彗星衝突痕) 土星(輪消失)
二重星は、望遠鏡を使うと色の違いがよくわかるようになります。星雲・星団・銀河は、大きな望遠鏡ほど小さなものや暗いものが見えるようになり、 観測対象が増えていきます。
アルビレオ リング星雲 アレイ星雲 球状星団
ただ単に空に向けるだけでも見える星の数は増えていきます。それだけでも、望遠鏡を使う価値はあるでしょう。
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2-2 望遠鏡のしくみと性能
<望遠鏡のしくみ>
 望遠鏡は、1枚目のレンズ(対物レンズ)や凹面鏡(まとめて対物鏡と呼ぶことにします)によってできた像を、 2枚目のレンズ(接眼レンズ)で拡大してみるようになっています。接眼レンズとして、凹レンズを使うもの(ケプラー式) と凸レンズを使うもの(ガリレオ式)の2種類があります。
望遠鏡の仕組み 望遠鏡の原理は右図の様に表されます。左側から星の光がやってきています。接眼レンズが大きいですが作図の関係で大きくなっているだけです。気にしないでください。
 天体は非常に遠いところにあります。そのため図の中に天体を書き込むことはできません。 その代わり、天体から来る光がどの方向から来るかを考えます。たとえば、図で望遠鏡を月の中心に向けたとします。 記入している線は、月の縁からのものと考えてみます。ここから来る光は非常に遠くにあるので、対物レンズのどの位置にも平行に入ってきます(平行光線)。 これが、対物レンズによって焦点位置と書かれている場所に集まります。 レンズの中心を通る光(太線で書いています)は曲がりませんから、光がどこに集まるかがわかります。
 接眼レンズの焦点位置とを対物レンズの焦点位置が重なるように接眼レンズを置いてみます。 この時、凹レンズの場合は焦点位置より対物レンズ側(内側)、凸レンズでは外側に置きます。 こうすると凹レンズでは焦点に向かう光が、凸レンズでは焦点から来る光は平行に出ていくようになります。 そのため、接眼レンズを通った光は平行光線になります。いいかえれば、非常に遠いところからやってきた光のように見えるということです。
 作図方法は、接眼レンズの中心を通る光があると仮定します。その光は、対物レンズを通った光が集まる位置を通ります。 2点を結んでみます。接眼レンズを出る光はこれと平行になりますから、平行線を引くことで光の経路図が書けます。
 入った光は月の縁から来たものとすると、望遠鏡を通してみた月の縁は、接眼レンズを通り抜けた光の来る方向に見えることになります。 どちらの方式の場合でも、対物レンズに入る光の角度より、接眼レンズを出る光の角度の方が大きくなっています。これは、拡大されていることを示しています。
 ケプラー式では、そのまま拡大されて見えますが、見える範囲が狭く、それほど倍率が上げられないのが欠点です。 オペラグラスはこの方法で拡大しています。ガリレオ式では、上下左右が逆になって(180度回転して)見えます。 星を見た場合、逆さまになっているとかはわかりませんから、別に問題とはなりません。そのため、天体望遠鏡ではガリレオ式のものがほとんどです。 ただし、動かすときは苦労します。地上用の望遠鏡では、ガリレオ式を使ったうえで、4枚のプリズムを利用して見える向きを修正しているものもます。
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<倍率>
 望遠鏡の倍率はどのように求められるかを考えてみます。再びケプラー式望遠鏡の原理図です。 望遠鏡の倍率 注目して欲しいのは、二つのレンズの中心を結ぶ線(光軸といいます:太い一点鎖線で書いています)、それに焦点位置で直角に引いた線(太線)、 対物レンズ(緑線)・接眼レンズ(赤線)の中心を通る光線が作る直角三角形です。対物レンズを通る光と接眼レンズを通る光は別のものですから、 2つの三角形がかけることになります。見える大きさは高さで考えればいいのですが、同じ距離でどれくらい違うのかを考える必要があります。 同じ大きさのものでも近いと大きく見えますからね。対物レンズの三角形に合わせることにします。 接眼レンズの三角形は、対物レンズの焦点距離を接眼レンズの焦点距離で割った大きさだけ大きくしないといけません。 もともと、同じ大きさ(高さ)だったものもそれに比例して大きくなります。どれだけ大きくなったかというと、三角形を大きくした分と同じです。
 結論を言うと、望遠鏡の倍率は、対物レンズの焦点距離を接眼レンズの焦点距離で割って求めることができます。 従って焦点距離の短い接眼レンズを使うと倍率が大きくなります。天体望遠鏡では、接眼レンズを交換できるようになっていて、倍率を変えることができます。 この時、対物レンズの焦点の位置に接眼レンズを置かないといけないので、接眼レンズを交換する度にピントを合わせ直す必要があります。

<最高倍率>
 倍率はいくらでも大きくできそうですが、回折現象という現象のために限界があります。 一般的な最高倍率は、対物レンズ(鏡)の直径(口径)をmmで表した数値かその2倍くらいといわれています。 たとえば、口径6cmの望遠鏡では60〜120倍が限界です。これ以上あげても細かいところの見え方は変わりません。 やたら大きな倍率が強調されている望遠鏡が売られていますが、そこまではっきりと見えることはありません。 さらにいえば、レンズが変形していたりするような性能のよくないレンズですと最高倍率はさらに下がります。

<分解能>
 2つ並んだ星が、1つにくっついて見えない最短距離をいいます。ドーズの公式というのがあって、115.8"を口径(mm)で割って求めます。 性能のよくないレンズではこれより大きくなります。
 星からの光は、地球の空気の動きによって揺らいでやってきます。そのため、星の像がゆらゆらしたり、ぼけて見えることもあります。 この現象も、分解能に影響します。大きな望遠鏡が高い山の上に作られる理由の一つはここにあります。

<集光力>
 天体望遠鏡は光を集めるために使われます。その能力を表す数値です。 対物レンズを通る光の量が、人間の瞳(直径は7mmくらい)を通る量の何倍あるかで表します。 それぞれの面積の比になりますから、対物鏡の口径(mm)を7mmで割った数値を2乗して求めます。口径7cmの望遠鏡では100倍になります。 倍率や集光力、分解能がカタログに書かれていますが、実際の測定結果でなく口径から求められたものなので数値としてはあまり意味がないものです。

射出瞳 <射出瞳径>
 どれだけ明るく見えるかを表す数値です。口径(mm)を倍率で割って求めます。大きなものほど明るく見えます。 望遠鏡を接眼レンズ側から見たとき、接眼レンズの中に見える対物レンズの像を射出瞳といい、これの直径を測ることでも求められます。 右写真は、双眼鏡のものです。接眼部に見える丸い穴のようなものが射出瞳になります。 対物レンズで集められた光が接眼レンズを通るときにこの大きさにまで絞らることになります。 これが人間の瞳より大きな場合、人間の瞳によって周囲の部分がカットされ、無駄になります。明るく見たい場合はこの値が7mmを越えないようにしましょう。
 ゆれる船上で双眼鏡を使ってみるとき、射出瞳径が小さな場合は、絞られた光が人間の瞳から外れやすくなるので見づらくなります。 ホエールウォッチなどで船上に持ち込むときの参考にもなります。
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2-3 光の集め方による望遠鏡の違い
 光を集める方法は、大きく2通りあります。レンズを使うものと、凹面鏡を使うものです。

<屈折(式)望遠鏡>
 凸レンズを使って光を集める望遠鏡を屈折(式)望遠鏡と言います。レンズの直径(口径といいます)が10cm以下のものはだいたいこのタイプです。 作りやすいのが利点ですが、プリズムで虹ができるのと同じ原理で、色収差という、星の回りに虹みたいなものができたりするのが欠点です。 そのため、色消しレンズという別の種類のガラスでできた凹レンズを組み合わせたり(その分焦点距離が長くなる)、 蛍石という虹ができにくい素材でレンズを作ったりと工夫されています。

反射望遠鏡の形式 <反射(式)望遠鏡>
 凹面鏡を使って光を集める望遠鏡を反射(式)望遠鏡といいます。 1m位までならそれほど作りにくくならないので、口径が10cmをこえるような望遠鏡はだいたいこのタイプです。 望遠鏡は比較的軽く、焦点距離の短いものの作りやすいのですが、風の強いときは筒の中にできる空気の乱れ(筒内乱流)によって像が乱れたり、 コマ収差といって、周辺部の星がいがんで見えたりすることがあります。一番問題なのは、覗こうとするとどうしても反射鏡に覆い被さってしまうことです。 焦点の近くで、反射鏡によって光の経路を直角に曲げてみる方法(ニュートン式)、鏡筒を支える軸のところで直角に曲げ光を軸の中に導いてくるもの(ナスミス式)、 鏡筒の入口に凹レンズを置き光をUターンさせドーナツ型になった反射鏡の穴の中に光を導くもの(カセグレン式)等があります。

<反射屈折式望遠鏡>
 反射式望遠鏡のコマ収差を軽減するために、鏡筒の入口に補正板という特殊な断面形を持つレンズの一種をつけたものもあります。 タイプの望遠鏡は反射屈折式(カタディオプトリック式)望遠鏡とよばれます。反射鏡や補正板の形によって、シュミット式とかマクストフ式といった種類があります。 これらの望遠鏡も反射式と同様、覗く位置が反射鏡に影を落とすという問題が生じます。 反射鏡と同じように、ニュートン式などの方法で光の経路を曲げる必要があります。 一番よく見られるのは、シュミット式とカセグレン式の組み合わせでのもで、一般にはシュミカセと呼ばれています。 非常にコンパクトに作れるのが特徴です。口径20〜30cmクラスの望遠鏡ではこのタイプのものがたくさん見られます。

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2-4 支え方による望遠鏡の違い
 望遠鏡で星を見るとき、倍率を上げると望遠鏡のぶれの大きさも倍率に従って大きくなっていきます。 星が動き回って非常に見づらくなります。望遠鏡を固定すればいいのですが、向きを変えられるようにしないと、見たい星を見ることはできません。 望遠鏡を空のいろいろな方向に向けるためには、直角に交わる2つの軸を使って回転させる必要があります。 望遠鏡はこのような軸を持つ台(架台といいます)の上に載せられています。 この時、望遠鏡を回転させる軸の取り方によって、経緯台(儀)式架台と赤道儀式架台の2通りがあります。
経緯台式架台構造
<経緯台式架台>右図
 水平方向と垂直方向の2つの動かし方で、望遠鏡の向きを変える方法です。カメラ用の三脚の動かし方はこの方法になります。 構造が簡単で、星の方向に向けやすい利点があり、初心者向けの望遠鏡はこのタイプのものになります。 欠点は、星の動きにつれ両方の軸を操作し望遠鏡を動かさないといけないことと、動かすのと同時に星が回転していくことです。 すばる望遠鏡など超大型の望遠鏡は全ての欠点はコンピューター処理で回避できるので、経緯台式架台を使っています。
ドブソニアン望遠鏡模型 また、口径30〜50cm位の大きさのニュ−トン式反射望遠鏡では、ドブソニアンという形式ものが非常に簡単に作れて操作が簡単だということで使われています。 右図はその構造を示す模型です。

赤道儀式架台構造 <赤道儀式架台>
 望遠鏡を回転させる方向の一つを星の動きにあわせる方法です。この時の一つの回転軸は天の北極(北極星)を向きます。この軸は極軸といいます。 いったん星を入れてしまえば、星が動いていってももう一つの軸(赤経軸)だけを操作すればいいので、簡単に元のように見えるようにできます。 赤経軸をモーターを使って星の動きに合うように回転させれば、いつまでも星を入れておくことができます。 欠点は、最初に軸の向きを正確に合わせるのが難しいこと、バランスが悪くなるので、おもりをつけたりと構造が複雑になることです。 バランスを取る方法によって、ドイツ式やフォーク式などの架台があります。一般的に見られるのはドイツ式の架台です。右写真はその構造です。

太陽望遠鏡構造模型 <太陽望遠鏡>
 太陽を専門に観測する望遠鏡は、違った発想で作られています。いろいろな大きな機材をつけるために望遠鏡を動かすのは大変です。 そこで、反射鏡を使って光を望遠鏡に入れるという方法とっています。その構造を示す一例の模型を右図に示します。 一枚目の鏡で、太陽の光を望遠鏡正面にある二枚目の鏡に跳ね返るように置けば、望遠鏡に光を入れることができます。
 この時1枚目の鏡を星が動くのと同じ向きに、半分の速度で回転するようにしたのがシーロスタット望遠鏡です。 博物館などにある現在の太陽像という展示はこの方法で投影されています。 太陽像が回転しないのが利点ですが、春や秋には、二枚目の鏡の影が一枚目の鏡の上に落ちるという欠点があります。1枚目の鏡は左右に2枚必要です。
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2-5 天体望遠鏡の使い方
<組み立て>
 望遠鏡のマニュアルに従って正しく組み立ててください。架台部分のねじはしっかりと止めてください。ぐらついていると星がゆれて見づらくなります。

<バランス調整>
 望遠鏡の回転軸に対して、バランスが取れていないと、鏡筒が勝手に動いて星を入れにくくなります。 特に、星が見えるようになってからクランプ(止めねじのこと)を締めるまでの間に向きが変わってしまうとまたはじめからやり直しになります。
 まず、クランプを緩めて鏡筒を水平にします。頭が下がっていくようでしたら、鏡筒の置く位置を後ろにずらしバランスが取れるようにします。 バランスが取れたら鏡筒をしっかり固定してください。入門機では、軸に固定されているものがあります。 この場合なにかをぶら下げるか、タオルなどにおもりになるものを巻いて縛り付けるなどするといいでしょう。
 経緯台式架台では、バランスを取る軸は鏡筒の乗っている軸一つだけですが、赤道儀式架台ではふたつの軸両方とも一つずつ順番にバランスを取ってください。 鏡筒の乗っている軸(赤緯軸)は鏡筒の位置をずらすことで、架台に近い側の軸(極軸)はウェイトの位置で調整します。
 バランス調節のできない望遠鏡でも、双眼鏡をぶら下げるとかの方法でバランスを取るようにした方がいいでしょう。

<ファインダー>
 望遠鏡の横についている小さな望遠鏡のことです。ファインダーと望遠鏡の見えているところが同じになるように調整します。 遠くの景色を利用すると調整が楽にできます。ファインダーを固定している3つのねじの内2つを互いに反対向きに同じ速さでゆっくり回していきます。 回すねじの組み合わせを変えながら、望遠鏡の視野(見えているところ)の中心にあるものとファインダーの+の交点にあるものが同じになるようにしてください。
 ファインダーが望遠鏡に固定されている場合は、望遠鏡の視野の中心はファインダーではどこになるのかを確認しておき、 目的物をそこに持ってくることで見ることができます。

<極軸あわせ>
 赤道儀式架台で必要な作業です。経緯台式架台では必要ありません。
極軸望遠鏡視野  赤道儀式架台には、極軸望遠鏡がついていることがあります。極軸望遠鏡を使った方法から説明します。 まず、極軸を大まかにあわせます。次に鏡筒を東西方向水平になるように向けます(赤緯軸が真ん中の0度ならこの通りでなくてよい)。 極軸望遠鏡のキャップを外し、接眼レンズ側につけられている、月日と時刻の目盛りを現在時刻にあわせます。 視野内の指示された場所に北極星が見えるようにすれば、後は極軸を固定するねじを締め、極軸望遠鏡のキャップをして完了です。 右図は極軸望遠鏡の視野の例です。「+」印が天の北極で上側の目盛りの位置に北極星を入れるようになっています。
 極軸望遠鏡のない場合、磁石と分度器、ひもにつるした五円玉を使って極軸の方向を調整しても実用的にはそれほど問題にはなりません。 磁石で極軸の方向を真北にあわせます。磁石は真北より7〜8度西の方向を指しますので、その分ずらしてください。 角度は、軸に合わせて分度器を置き、五円玉をぶら下げたひもの指す角度が90度−緯度(緯度の補角)の値になるようにします。
 もっと正確に合わせる方法も書いておきます。北極星が見えない場合でも使えます。まず、南北方向の調整です。南の空の星を視野に入れます。 この星を極軸(赤径方向)だけで追いかけていきます。段々上の方にずれていくようでしたら、 軸は北から西にずれていますので右へ回転させます(天頂プリズムは使わないでください)。
 極軸の角度(高さ)の調整は、東の空の星を入れて行います。星を追いかけて上の方にずれていく場合、軸が寝すぎていますので、立たせるようにしてください。 西の空を使ってもできますが動きと軸の傾きの関係は逆になります。両軸とも、ずれがでなくなるように調整してください。
 赤経軸側にモーターがつけられているときは動くようにしてください。これで星を追い続けることができるようになりました。

<星の導入>
 望遠鏡の視野に星を入れることをいいます。まず、接眼レンズを、できるだけ低倍率(焦点距離の長い)ものにします。 ファインダーに目的の星を入れ、中央に持って行けば、接眼レンズを覗けば見えているはずです。 ぼんやりとした光のかたまりが見えるようでしたらピントがずれていますので、ピントをしっかり合わしてください。 見えない場合はピントが外れすぎているか、ファインダーの調整ができていないかのどちらかです。 ピントを端から端までゆっくり動かしても見えない場合は、ファインダーの調整からやり直してください。 遠くの景色であらかじめあわせておくのもいいかもしれません。 接眼部につける部品が足りなかったり、余分につけすぎていたりするとピントが合わないこともあります。何が必要かマニュアルを確認してください。
 望遠鏡を動かすときに、注意しないといけないのは、必ずクランプ(固定ねじ)を緩めてから動かすことです。 無理に動かすと、締め付けが悪くなったり、がたつきができたりして望遠鏡が思った方向に固定できなくなることがあります。
 ファインダーに星を入れるだけでも、結構苦労します。ファインダーで見る明るさは、肉眼で見る明るさと違っていますから、 目的の星かどうかわからないこともあります。簡単に入れるとっておきの技がありますから紹介します。体得してみてはどうでしょうか。 それは、右目でファインダーを覗きながら、左目で星(空)を見る方法です(逆でもよい)。 ぼんやり眺めていると、夜空の中にファインダーの丸い円が見えてきます。 その円の中心に目的の星がくるように望遠鏡を動かすと、ファインダーに星が入ってくるのが見え、真ん中付近で2つの星がぴったり重なります。 真ん中で重ならなければ他の星です。もう少し動かしてみましょう。 重なって見えるとき、ファインダーの向きは合っていますので、この状態で接眼レンズを覗いても星が見えるはずです。 この方法はなれるととても便利です。口径10cm以下の屈折望遠鏡で20〜30倍程度なら、ファインダーなしで直接導入できます。 望遠レンズを使って写真を撮るときにも応用できます(ファインダー側の星が見えなくてもかまわない)。 飛ぶ鳥のような動くものの写真を望遠レンズで撮るときにも使えます。
 惑星などもう少し倍率を上げたいなという場合は、目的の天体を視野の中心に持って行ってから接眼レンズを交換してください。 暗いものを見ているとき、いきなり高倍率にすると真っ暗になって何も見えなくなることがあります。 倍率は段階的に上げていってください。接眼レンズを交換する度にピントを合わせ直す必要があります。 気をつけてほしいのは、倍率を上げたからといって、細かいところまで見えるとは限らないことです。ピントが合わずぼやけたものしか見えないことがあります。

ここまで2015.06.10掲載
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2-6 太陽の観測
 望遠鏡で太陽を直接覗いてはいけません。金環食とか内惑星の日面通過とかどうしても見たい場合があります。こんな時のための方法があります。 それには準備するものがあります。望遠鏡のマニュアルにあるの方法は以下のものです。
 対物レンズキャップについている小さなキャップを外して口径を絞った状態で、対物レンズキャップをつけます。 次に接眼レンズのカバーを外し、太陽フィルターをつけます。ファインダーにキャップをしたまま、望遠鏡の影を使って太陽を入れて観察します。 この方法ですと、いくら口径を絞っているといえ、強い太陽の光が接眼レンズに集められますので、接眼レンズは熱くなります。 また、熱で太陽フィルターが破損する危険があります。長時間の観測には絶えないでしょう。あまりおすすめできません。
 減光を、接眼側ではなく対物側で行うと接眼部が熱を持つのを防ぐことができます。市販されている減光用フィルムは、バーダー社のアストロソーラーフィルムがあります。 対物フードにかぶせられる筒を作ってそれにはりつけるか、対物キャップの穴に貼り付けるのがいいでしょう。。 作は後者の方が簡単ですが、口径が絞られるという欠点があります。倍率によっては暗くなりすぎるかもしれません。 使用前には、光の漏れがないか確認しておきましょう。
太陽投影板を使った観測  太陽を観測観測しようとしたときに、ふつうおこなわれるのは、投影板に太陽像を写す方法です。投影板は、6〜10cmクラスの望遠鏡についていることがあります。 なくても、別売の付属品として販売されていることがあります。メーカーのカタログを確認してください。 注意して欲しいことは、接眼レンズはできるだけ熱に強いものを使うことです。 高級なレンズに多いのですが、色ずれをなくすためにいくつものレンズを樹脂でくっつけているものははがれることがありますので避けてください。 レンズに書かれている焦点距離の数値の前にHとかHMという文字が書かれてものがいいとされています。 差し込み口(接眼スリーブ)とレンズの直径が合わないときは、アダプターもありますので利用してください。 写っている方位も複雑なので書いておきます。南中時の場合です。 それ以外の時刻では、太陽の動いていく方向(この方向が西と定義されています)を基準にしてください。 矢印で示しています。スケッチする場合はこの方向も必ず記入してください。
	  肉眼では  望遠鏡で  投影すると
	      N            S          N
	  E●W→  ←W●E  ←W●E
	      S            N          S

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2-7 双眼鏡を使おう
 星を双眼鏡を使って見るのも楽しいものです。比較的大きめの天体に威力を発揮します。 プレアデスやヒアデスといった星団、オリオン星雲などの星雲、アンドロメダ銀河などの銀河などです。
プレセペ 二重星団 プレアデス
土星の輪はちょっと無理ですが、木星の衛星や月のクレーターならじゅうぶんに見えます。月なら表面の模様を見るのもいいでしょう。月食の時に使って見てください。
月面南縁 晴れの海・危機の海 皆既月食
一番適しているのは、彗星の観測です。尾が延びていなくても独特の色から彗星とわかります。 尾の長い彗星なら、視野からはみだしていても、横方向に移動させて全体を見るのは簡単です。
オースチン彗星 ヘールボップ彗星 パンスターズ彗星 アイソン彗星


<選び方>
 基本的には明るく視野の広いものを選んでください。明るさは射出瞳の大きさで選びます。7mmにできるだけ近いものが適しています。 よく使われるのが、口径5cmで7倍のものです(射出瞳径は7mm)。これ以外には、5cm10倍、3cm5倍、8cm11倍というのも使われます。 あまり倍率が大きいと手ぶれの元になります。10倍前後が限界でしょう。大きな双眼鏡も腕がだるくなりますので、長時間の観測は無理です。8cmが限界です。 これより大きなものは、展望台にある双眼鏡の様に台が必要になります。
射出瞳  もう一つ、視野の広さも問題になってきます。一般に使われるのは見かけの視野が50度くらいのものです。 オペラグラスは視野が狭いのであまり使われませんが、それでもその効果は結構あります。
 双眼鏡には、口径、倍率、視野の広さが書かれています。それを参考に選んでください。右写真を例にすると、10×50と書かれています。 これは口径が50mm(5cm)で、倍率は10倍を示しています。ちなみに射出瞳形は5mmになります。2段目のFIELD 5.5゚ とあるのは、見えているのは実際の景色の5.5゚の範囲内です。これは3段目に書かれているように、1000m先の96mのものが視野いっぱいに見えるということです。 双眼鏡をのぞいたときに見えている直径は55゚(=5.5x10)あることになります。

<使い方>
双眼鏡を何も調節しないで使ったり誤った使い方をすると、期待通りの効果が出ないことがあります。最低限あわせておきたい項目をあげておきます。

双眼鏡軸幅合わせ 軸幅合わせ 二つの接眼レンズの間隔を目の幅に合っていないと、片方のレンズを通った光だけしか見えなくなります。 せっかくの双眼鏡の意味がなくなってしまいます。中途半端に合っているとゆれる度に見える目が移り変わって見づらくなり、 片方のレンズだけで見てしまうということにもなります。
 双眼鏡の二つの望遠鏡軸は、つながっている軸部でちょうつがい状になっていて、角度を変えることによって軸幅が調節できるようになっています。 覗いてみて、両目ともしっかり見えるように軸幅を調整しましょう。

ピント合わせ 双眼鏡の接合軸部にある調節ねじで行います。普通はここまではすることが多いのですが、もう一つすることがあります。 それは、左右の目の視力に合わせてピントの調節をすることです。自分一人で使う場合は一度やっておくと当分の間は調整は不要です。 まず、右目を閉じた状態(対物レンズを隠てもいい)で、調節ねじを回してピントを合わせます。 次に、左目を閉じた状態で接眼レンズを回し、右目のピントを合わせます。次に両目で見てまだぼけて見えるようでしたら、 接合軸部の調節ねじでピントを合わせます。さらに左目を閉じてピントを合わせるという作業を繰り返し、クリアに見えれば調整は終わりです。

ビノホルダー <ビノホルダーを使おう>
 ビノホルダーは双眼鏡を三脚に取り付けるためのねじです。小さな双眼鏡では取り付けられないものがあります。 右写真左側の2つがビノホルダーで、右側が三脚に取り付けたときの状態です。 ビノホルダーのねじを双眼鏡軸部のねじ穴(キャップがついていることがある)にねじ込み、ビノホルダーのねじ穴に三脚のねじを入れます。 双眼鏡の固定はバンドで縛るタイプのものもあります。双眼鏡が固定されることで、ゆれを押さえることができるだけではなく、 スケッチなどした後見直したり、だれかに確認してもらったり、 他の人に見せたりすることもできるようになります。 一脚(一本足の三脚)をつけただけでも、視野のゆれは激減します。見づらい方向が増えるのが欠点です。
 三脚の固定ハンドルは、写真では手前側に来るようにつけていますが、双眼鏡をのぞくときにあたることがあります。 向こう側にした方がよいのですが、締め付けたり緩めたりするために回す方向が逆になります。どちらでも自分の使いやすい方向で使ってください。

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2015.05.10 第1節4項まで掲載
2015.06.10 第2節5項まで掲載
2015.07.10 第3節  まで掲載
2015.08.08 第4節5項まで掲載
2015.09.10 第5節3項まで掲載
2015.10.12 第6節4項まで掲載
2015.11.11 第6節6項まで掲載
      第4節6項 を 加筆
      前編 と 後編に分割
2015.12.10 第1節5項 を 加筆

後編(写真撮影編)に続く




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