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繊維状蛇紋岩

繊維状蛇紋岩
 蛇紋岩という岩石から説明していきます。一般にマントルを構成しているかんらん岩が何らかの理由で上昇してくるとき、大量の水分を含むと、 かんらん岩に含まれているかんらん石という鉱物が蛇紋石に変質します。この蛇紋石がいっぱい詰まった岩石が蛇紋岩です。 蛇紋岩の特徴は、緑っぽい色をしていて、表面につやがあり何となく軟らかくぬるぬるしていることです。 この特徴が蛇のぬるぬるした感じに似ているので蛇紋岩といいます。一説には、蛇のような模様があることからつけられたともいわれています。 蛇紋岩と思った岩石の、ぬるぬるしているのは表面だけで、うまく割ってみると中はかんらん岩であることがよくあります。 また、ぬるぬるの面をよく見てみると一方向に筋が見えます。この筋は岩石が滑ってできたもので、 その面に沿って水分が供給されその面の近くのかんらん岩が蛇紋岩に変わってできたためです。
 繊維状蛇紋岩は、このようにしてできた蛇紋岩の一種です。蛇紋岩が滑りあっているとき、蛇紋石がくるくると丸まって、 非常に細い管状になります。この管状の蛇紋石が並んでできたのが繊維状蛇紋岩です。実際には管ではなく、 糸状のものが集まっているように見えるからです。写真にも、細かい筋がいっぱい見られます。力を入れてこすっていると綿のようになります。 これを石綿といいます。昔、平賀源内は、これと似たような石からとれる糸を利用して耐熱性の布を作りました。 その後も、この岩石は耐熱性の素材として利用されてきました。その頃も問題となっていたのは、 繊維が管状になっているため、赤血球に刺さると管を通って中の液が血清中にしみ出してきて、赤血球が破壊されるという問題でした。 最近になって、肺ガンや中皮腫の病気を引き起こすとされ、ついに使用が禁止になってしまいました。
 さてこの岩石の標本は処分すべきなのでしょうか(どうやって?)。岩石中にあるときは、 管がくっついていて刺さったりすることがないので無害だといいますが。
 昔は重宝されていたのに、今は厄介者扱い。そんな岩石です。

分類:火成岩類 深成岩 超塩基性岩
   変成岩類に分類されることもある
産地:京都府福知山市大江鬼が茶屋

産地の名前から思い出すのは、大江山の鬼退治伝説。平安時代には大江山は地の果てで、 得体の知れないものが住んでいるところというイメージだったのでしょうか。この付近に産出するかんらん岩・ 蛇紋岩などは地下深くマントルで作られる岩石で、いまだに人間の手の届かない世界で作られたもの。 大江山は昔も今も見知らぬところを想像するのに欠かせない場所のようです。



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