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火山豆石凝灰岩

火山豆石凝灰岩
 灰色をした岩石の中に、丸い形をした構造物が見えます。壁紙はその拡大です。 中に同心円状の模様が見られますので、何かの生物が作った化石のようにも見えます。 丸い構造物の中心はその外側と同じものですので、生物が作ったものでないことがわかります。 これと似たものは、時々観察されます。たとえば、1977年の有珠山噴火の時に、小雨が降っている中を落ちてきた火山灰は、 直径1mmくらいの丸い固まりとなって落ちてきました。火山灰粒子が、雨の水滴と合わさって固まりとなったためです。 小麦粉の中に水滴をたらすと、水滴を中心に丸い固まりができるのと同じ原理です。 このようにしてできた火山灰の丸い固まりを火山豆石 といいます。 形が上下に扁平なのは、地層の重みでつぶされたからです。
 一般に、雨と一緒に降ってくる火山豆石は、水滴くらいの直径1mm程度のものが多いようです。 また、この時雨が強いと、火山豆石は地面に落ちた後崩れてしまうので残らないと考えられます。
 ところで、写真の岩石の火山豆石はどうでしょうか。直径が1cmもあります。 小麦粉の中に水滴を垂らしただけでこの大きさの固まりは作れそうにありません。この火山豆石の断面には、同心円状の模様が見られます。 このことは、細かい粒、少し粗い粒が交互にくっついていったことを示しています。 そのためには、火山豆石の核になる部分がぬれてかたまりとなった後、噴火口から立ち上る噴煙中の中で、 細かい火山灰の多いところ、少し荒い火山灰の多いところを行ったり来たりする必要があります。 さらに、火山灰をくっつけるために水分が必要ですが、多すぎても火山灰がくっつかないので、 水分の多いところで水分をためこんで、少ないところで火山灰をくっつけてということを繰り返してできたことになります。
 こんなことが、吹き飛ばされてまっすぐ落ちてくる間に起こっているとは考えられません。 吹き飛ばされ落ちてくる間に、噴煙の流れに乗って吹き上げられ、ということを何度も繰り返しました。 積乱雲の中で氷の粒が何度も巻き上げれ大きくなって、雹(ひょう)や霰(あられ)ができるのと同様です。
 ものすごい勢いで噴煙が立ちのぼっていたでしょう。その上端は成層圏にまで達していたと思われます。 噴火口の上空では、大量の火山灰が落ちてこれずに空全面を覆う暗い雲を作っていたでしょう。 昼間であったとしても、太陽の光は地表に届かず真っ暗な世界となっていたでしょう。
 この石にはもう一つ不思議なことがあります。大きな噴火の場合火山灰は、地下でマグマが爆発し、マグマを粉々に壊して噴き出して起こります。 従って、大きな噴火の場合、火山灰にはマグマが壊れたかけらである火山ガラスが含まれます。
 ところが、この火山灰はほとんどが火山の地下の岩石のかけら(異質岩片といいます)でできています。地下深くのマグマだまりで、 火山ガスがマグマから急速に分離し、周りの岩盤を壊しながら一気に噴出したようです。 吹き出した大量の火山ガスは膨張することや上空の冷気によって冷え、主成分である水蒸気が水滴にかわり、 火山豆石を作る材料となりました。火山灰の量も、相当なものであると考えられることから、噴火口も非常に大きなものであった可能性があります。

分類:堆積岩類 火山砕屑岩類
産地:奈良県宇陀市室生口大野
 この岩石が作る地層の直上には、室生火山岩の中心となる火砕流堆積物が堆積しています。 火砕流堆積物の厚さは奈良県の宇陀地域では、500m以上もあります。このことから、 非常に大規模に火砕流を噴出する噴火があったことがわかります。 おそらく噴火の後には、直径が10kmを超える大きなカルデラが作られたでしょう。
 この凝灰岩は、地層の重なりの様子からその先駆け的な噴火によってできたものと考えられます。
室生火山岩の火砕流堆積物については、ここのリンク先に詳しく書いています。



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