ヨッシンと地学の散歩 > 散歩道の宝物  > 含レキ泥岩

ヨッシンと 地学の散歩

散歩道の宝物
含レキ泥岩

 レキ岩のように見えますが、レキの間を埋めているのは泥です。全体として泥の方が多いので含レキ泥岩という名前がつけられます。 逆に、レキの方が多ければ泥質レキ岩となります。
 レキ岩のレキの間を基質といいます。この場合「基質は泥質である」といいます。 泥岩もレキ岩もふつうに見られる岩石です。泥基質のレキ岩とかレキを含む泥岩といってしまえば、レキ岩か泥岩の一種のように思えます。それなら、どちらも、堆積岩の代表的なものです。
 それでいいのでしょうか。含レキ泥岩もしくは泥質れき岩は、二つの種類の岩石が混ざったように見えますので、簡単にできていそうな気がします。実際、色々なところで見ることができます。
 ところが、でき方を考えてみると不思議な岩石であることがわかります。というのも、レキ(いわゆる石ころ)は、流れの速いところにたまります。それに対して、泥は流れがほとんどない湖や海、 干潟などにたまります。
 では、含レキ泥岩はどのようなところでたまったのでしょうか。流れが速いと泥がたまらないし、 流れが遅いとレキが運ばれてきません。一方を作ろうとするともう一方が作れないことになります。
 一般に、レキと泥が同時にたまる場合は、洪水などで大量の泥水と一緒に石ころが運ばれてくる場合です。このような流れは、泥流とか、大きな岩石を含むようになると土石流とかいわれています。 含レキ泥岩は、泥流によってできたものと考えられます。
 泥流や土石流で運ばれてきたものがたまってできた地層は、地層の中心部にレキが集まる性質があります。 このことを利用しても、泥流によってできたものかどうかの判断ができます。

分類:堆積岩類 砕屑岩(含レキ泥岩)
田辺層群白浜累層内
(新生代第三紀中新世前期)
産地:和歌山県  白浜町  市江崎

 市江崎の含レキ泥岩を調べてみると、さらに不思議なことがあります。一つは、 基質がきれいな泥であることです。一般に、泥流や土石流の場合、 泥だけでなく砂などの様々な大きさの粒子を運んできます。このような、様々な大きさの粒子を含んでいる状態を、 「淘汰が悪い」といいます。逆に特定の大きさの粒子ばかりでできていると「淘汰がよい」のです。
 背景の砂泥互層は、タービダイト(混濁流)と呼ばれる海底泥流のようなものによって作られます。 タービダイトが流れ込んできて最初にたまるのは、淘汰の悪いレキ砂などです(濃い灰色の部分)。 このように、泥流では淘汰の悪い堆積物ができるのですが、市江崎の含レキ泥岩はそのようになっていません。 原因として、堆積物の供給源に、泥とレキしかなかったと考えざるを得ません。
 二番目の問題として、市江崎の含レキ泥岩の分布のしかたがあげられます。市江崎付近では、 一般的な地層は水平にたまっています。それに対して、含レキ泥岩は垂直な円筒状に分布しています。 また、泥流によって作られた粒子の並びは垂直方向を指しています。
 このことは、含レキ泥岩が、地層の間の円筒形のすき間を上がってきた様に見えます。ちょうど火山の下で、 マグマが上昇してくるように。泥を噴出する火山があり、泥水がマグマのように上昇してきたようです。
 どのようにしてこのようなことが起こるのかよくわかりませんが、考えられることは次のようなものでしょうか。 地下深部に、水分が大量に供給されます。それによって泥が溶かされ流動性を持ち始めます。この泥水が、 泥岩層や水分の通りやすいれき岩層の中を流れレキを含む泥水となります。それが、地下水圧の上昇によって、 地層を突き破って上昇し、当時の地表で泥を噴出する火山を作ります。市江崎の含レキ泥岩は、 上昇途中の泥水が取り残されてできたものと考えられます。



<散歩道の道標>  <散歩道の宝物 目次>
<<一つ前   次へ >>