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パン皮状火山弾

パン皮状火山弾
 石そのものは、ふつうの火山岩と区別がつきません。しかし、この石で見立つのは、表面にできた細かいひび割れでしょう。 このひびは、表面だけで石の内部には達していません。鏡餅やフランスパンの表面にできるひび割れに似ています。 パンの皮のようだということで「パン皮状」と名付けられています。
 このひび割れはどのようにしてできたのでしょうか。パンのひび割れはパンを焼くときにできます。 はじめはパン釜の熱で表面がかたまります。しだいに熱がパン生地の中まで伝わってくると、生地の水分が蒸発し始めます。 表面がかたまっているため、水蒸気は逃げ場がありません。そこで、水蒸気はパンをふくらませようとします。 そうしてふっくらとしたパンができあがります。このとき、パンの表面がしっかりかたまっているとどうなるのでしょうか。 パンがふくらむことによって表面積が増えます。パンのかたまった部分は大きくなりませんから、 表面積の増えた分だけひび割れができます。
 この石のひび割れも同じようにしてできたと考えられます。火山噴火で火山からマグマのかたまりが吹き上げられます。 かたまり同士がぶつかることによって割られて、写真のような四角い形になります。 空中に飛ばされることで表面が冷やされかたまります。それが地面に落下しますが、内部はまだ熱いままで、軟らかい状態です。 徐々に温度が下がるにつれて火山ガスが分離し、泡となって内部からふくらもうとします。 その力によって、表面に細かいひび割れができます。
 この石をよく見ると、面が平らでなく真ん中がふくらんでいます。このことからも、 石が投げ出されてからもふくらもうとしていたことがわかります。
 暖められてかたまるか、冷やされてかたまるかの違いはあるものの、名前そっくりの方法でできた石です。

分類:堆積岩類 火山砕屑岩(物)
小豆島層群寒霞渓累層三都溶岩類
(新生代第三紀中新世)
産地:香川県 小豆島町 権現崎

 現地では、このような火山弾を含む岩石としてみられます。高校の教科書には「大きな火山砕屑物を含む岩石は凝灰角礫岩とよぶ」 と書かれている物が多いのですが、この火山弾を含んだ岩石は集塊岩と呼ばれる物に属しています。 凝灰角礫岩は、火山灰の中に火山が壊されてできた岩石のかけら(岩片)を含んでいる物をいいますので、教科書の記述は正確とはいえません。




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