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高温型石英



高温型石英

 二酸化ケイ素(SiO)を元素組成とする鉱物として知られているのは石英(セキエイ)です。 石英は、573℃より高温では結晶構造が変化し、外形の異なる高温型石英(高温石英、β−セキエイ、ハイクォ−ツ)に変化します。 これに対して、ふつうの石英は、低温型石英(α−セキエイ)と呼んで区別することもあります。 他にも、非常に圧力が高くなると、セキエイ(以後カタカナ表記は二酸化ケイ素組成を持つ鉱物全てを表すものとします)はスティッショフ石やコース石にも変わります。 このように、元素組成が一緒なのに、外形の違う鉱物同士の関係を多形(同質多形、同質異像)といいます。 石英(低温型、以後漢字表記は低温型とします)と高温型石英は互いに多形であるとか、多形の関係にある、というような使われ方をします。
 石英がきれいな形になったものが、水晶です。その形は両端の尖った六角柱になります。 石英はたくさんあるのに、水晶が少ない理由は2つあります。 一つめは、マグマが冷えていく途中で、石英は最後の方にできるので、どうしてもすき間を埋めるような形(他形といいます、読みは同じです)になることです。 二つめは、マグマが冷えて固まるときの温度は、低く見積もっても700℃で、高温型石英のできる温度であることです。 水晶ができるのは、マグマが固まったあと、残された揮発成分が岩盤中を移動するときであるといわれています。 詳しく書いていると本論から外れていくので、また、別の機会に書くことにします。
 石英が水晶になるのに対して、高温型石英はどのような形になるのでしょうか。 水晶は細長く伸びますが、高温型石英は全く伸びないで、両端の尖ったものが合わさった形になります。 底面で貼り合わさった六角錐型です。上から見れば六角形、横から見れば菱形になります。 比較的きれいな形のものを選んだのですが、半分に割れていたりとかで少しわかりづらかもしれません。
 マグマが冷却固結する温度は、高温型石英のできる温度であると書きましたが、それでは、高温型石英が見られないのはどうしてでしょうか。 大きな理由は、固結した火成岩の温度が573℃より低くなると、構造がふつうの石英に変化するからです。 そのため、形のはっきりしない高温型石英は、ふつうの石英と判断されてしまいます。 これに対して、形のわかるものは、本当はふつうの石英なのに、高温型石英の形をしているというへんな鉱物になっています。 このような場合、正確には高温型石英の仮晶という言い方をします。 形のはっきりした高温型石英が少ないのは、水晶の場合の二番目の理由と同じです。
 地下深くに大きなマグマの塊(マグマだまり)があったとします。これがある程度冷えてくると、いろいろな鉱物ができはじめます。 高温で結晶し(固まり)始める鉱物は、速く大きくなります。大きくなった分だけ速く沈んでいきます。 また、大きな鉱物(結晶)があると、そのまわりにあるマグマでは鉱物を作る成分は、結晶を大きくするために使われ、小さな結晶を作れなくなります。 そんため、時間がたってくるとマグマだまりの中は上の方から順に、小さな鉱物ができ始めているところ、少し大きくなった低温でできる鉱物がゆっくり沈んでいるところ、 大きくなった高温でできる鉱物が中心となって沈んでいくところ、落ちてきた鉱物がふわっとたまっていくという順番に分かれていきます。 二酸化ケイ素分の多いマグマの場合、高温でできる鉱物は黒雲母・斜長石などで、低温でできる鉱物が高温型石英に相当します。
 このマグマだまりの一部から、マグマが上昇し始めたとします。 一番上の部分からは、鉱物はないかあっても小さい火山岩ができます。 二番目の部分からは、大きな鉱物(二酸化ケイ素分が多いマグマの場合は高温型石英)の結晶が含まれる岩石ができます。 溶食形 大きな鉱物のすきま(石基といいます)には、マグマがあったのですが、深いところで固まる分だけゆっくりと冷えて小さな鉱物ができ始めます(右写真;クロスニコル)。 このような構造を持つ岩石の仲間を「半深成岩」と呼んで区別することがあります。半深成岩に属する岩石は、二酸化ケイ素分が多いものから順に、 斑岩、ひん岩、輝緑岩があります。
 マグマが再び上昇すると、圧力が低下しますから、鉱物の融点が下がります。そのため、いったんでき始めた鉱物が溶け始めます。 右の写真の真ん中にある鉱物(高温型石英)の形が、葉っぱを虫が食い荒らしたような、いびつな形になっています。 これは、鉱物ができた後、再び溶けてででたものです。この形を「溶食形」といいます。 また、大きな鉱物(斑晶)の周囲は、なんとなく他と質の違う部分が薄く取り巻いているように見えます。 これは、斑晶の周囲の化学組成が溶けた鉱物の成分によって変化するためです。
 このようにしてできた岩石が風化すると、斑晶だけが残されます。鉱物は溶食形をしていますので、 壊れやすく、きれいな形のものは少ないようです。
 二酸化ケイ素分の多いマグマが、地下深くで573℃を下回らない温度まで下がり、十分時間がたってからその一部のマグマが上昇し初め、 固まってできた岩石から風化作用によって斑晶だけが取り残されてできたものです。


分 類 :  酸 化 鉱 物
鉱物名 : 高温型石英(仮晶)
産 地:大阪府箕面市政の茶屋
入っている岩石は、火成岩−半深成岩類−石英斑岩



 高校教科書には、ケイ酸塩鉱物の分類として、ケイ素四面体の並びによって分けられるとし、そのうち立体構造を持つものの例として、 セキエイがあげられると書かれています。そのほか、いろいろな記述を見ていくと、何となくセキエイがケイ酸塩鉱物であるかのような印象を受けます。
 そもそも、ケイ酸塩(鉱物)というのは、珪酸(珪酸イオン)という酸とカルシウムイオンなどの塩基の中和生成物を表します。 これに対して、セキエイでは、酸としてはたらいているのは酸素(酸化物イオン)で、塩基として働いているのはケイ素です。 従って酸化物というのが正しい分類になります。このことは、化学組成を二酸化ケイ素と読むことからもはっきりします。

でてきた難しめ(?)の地学用語:多形、他形、仮晶、火山岩、半深成岩、石基、斑晶、溶食形、ケイ酸塩鉱物
2014.07.02





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