下郷町にある中山の東山麓では、地面を少し掘ってできた穴には冷気がたまります。
これを利用して、野菜などを貯蔵するための穴として使われています。写真の建物はそれを復元したものです。
掘った穴が崩れないよう周囲に石を組み、雨がかからないよう屋根を設けています。
この中に冷気がたまっているため、周囲の暖かい空気が冷気に接するところで冷やされ、薄いもやとなって漂っています。
この付近で冷気がたまるのは、山の東側には崖崩れなどで落ちてきた岩片が厚くたまっているためです。
他の地域と違うのは、岩片の間は土などがつまってなく、隙間だらけであると言う点です(右写真)。
岩片の隙間にある空気は岩片で冷やされ、下の方に冷たい空気がだんだんと集まっていきます。
手を近づけてみれば、ここに見える岩片のすき間からも冷たい空気が吹き出しているのがわかります。
岩片がすき間だらけに厚くたまっているとどうなるかを考えてみます。
冬の間は、冷たい空気が岩片のすき間から入っていって岩片を冷やしていきます。
春先に雪が溶けるとすき間を流れる雪解け水も岩片を冷やしていくでしょう。
夏になるとすき間に流れ込んだ空気は、冷たくなっている岩片から冷やさ冷気となります。
冷気は普通の空気に比べて重たいので、岩片のすき間を通って下の方に下りてきてたまります。
このようにしてたまった冷気は、地面の隙間から出てきて周囲の空気を冷やします。これが風穴です。
冬の間は、この逆のことが起こります。
違うのは岩片によって暖められた空気は上の方にあがっていくので、風穴のあるような低い所にたまったり出てきたりすることがないという点です。
冬の間も風穴のあるところではそれほど暖かくなることはありません。
次に岩片が厚くすき間だらけにたまっている原因を考えてみることにします。
まず第一に地形図から判読できることを考えてみます。下に地理院地図の該当する地域を抜粋して表示しています。
中山の東斜面はほとんど真っ平らな急斜面になっています。その落ち込んだあたりはいったん低くなっていて、さらにその東側に小高い丘があります。
また、東側を流れる阿賀川は押されるように東側に曲がって行っています。
これらのことからわかるのは、中山の東側は過去に地滑りで東側に滑り落ちていることです。
二番目です。貯蔵施設の写真からわかるのは、石組みに使っている石は柱状のものが多いことです。
これは、安山岩などに見られる柱状節理にそって壊されたものです。
この地域の岩石に柱状節理が多いのは、近くに石柱の丘などと名付けられた場所がある事からも推定できます。
この2つのことが重なればどうなるでしょうか。地滑りが起こった山の斜面には傾斜の急な崖が作られます。
ここに真っ直ぐな割れ目のたくさん入った岩石が露出すると、岩石は割れ目に沿って崩れ落ちます。
中山山頂のすぐ東側に見える谷ような地形は、岩石が崩れ落ちた場所のように見えます。
ここから北東方向にふんわりと盛り上がるような地形は、崩れ落ちた岩で盛り上がってできているようです。
崩れ落ちるのは、岩片ばかりで土などはほとんど含まれていません。
崩れ落ちたまったところの岩片は、土をほとんど含まない、すき間だらけのものとなります。
下は出典元サイト(地理院地図)のURL(2020年10月閲覧)です
http://maps.gsi.go.jp/#15/37.287/139.902/
&base=std&ls=std&disp=1&vs=c0j0l0u0f0
この地域では、岩の隙間から(というより斜面から)冷たい風が吹き出してくるため、他では見られないような寒いところで育つ植物がたくさん見られるようです。
風穴そのものよりも、中山風穴地特殊植物群として天然記念物に指定されています。
中山風穴ほど広範囲でなくても、冷たい風が吹き出すところは風穴とよばれます。そのいくつかを紹介します。
岩石の崩落が中山風穴ほど大きくないものです。風が吹き出す場所はそれほど広くありません。
秋田県にかほ市獅子が鼻湿原の風穴
溶岩流の先端部にできています
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長野県小谷村栂池自然園の風穴
溶岩流の先端部?
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2020.11.20
2017.01.25 掲 載
2020.06.15一部追記
2020.11.20 追 記