家の南側の壁と西側の壁では1日の日射はどちらが強いでしょうか。家庭科の住居に関する問題で実際に教科書にのせられているものです。
家庭科の先生からどうして解答のようになるのか説明して欲しいと質問されたのですが、即答はできずその場では、
「ひさしで日が差し込まないからかな」ぐらいに考えていました。
以前に太陽の方位と高度を、太陽の時角と地球の緯度から求めるプログラムを作ったことがあるのでそれを応用して計算してみました。
表計算ソフト(
持っていない人に購入を勧めることになりますのでエクセルとは言いません。
Open Office.org Calcなど何でもいいです)を使います。次のような表を作りました。
| A | C | D | F |
G | H | I | L | N |
1 | 緯度 | | 時角 | x(w) |
y(s) | z(u) | | 南面 | 西面 |
2 | 35.0 | | 0 | 0.00 |
0.20 | 0.98 | | 0.20 | 0.00 |
3 | 赤緯 | | 1.0 | 0.02 |
0.20 | 0.98 | | 0.20 | 0.02 |
4 | 23.5 | | 2.0 | 0.03 |
0.20 | 0.98 | | 0.20 | 0.03 |
5 | | | 3.0 | 0.05 |
0.20 | 0.98 | | 0.20 | 0.05 |
6 | | | 4.0 | 0.06 |
0.20 | 0.98 | | 0.20 | 0.06 |
| <途中の行は繰り返しなので省略します> |
109 | | | 107.0 | 0.88 |
-0.48 | 0.01 | | 0.00 | 0.88 |
110 | | | 108.0 | 0.87 |
-0.49 | 0.00 | | 0.00 | 0.00 |
111 | | | | |
| | | 13.90 | 68.39 |
表の説明 BEJKM列は非表示になっています。各セルの計算式は以下の通りです。
Open Office.org Calcにあわせています。エクセルでは数式中の";"を","に変えてください
まず2行目と[A2][A4][B4]に次のように数式や値を入れます。
[A2] 35 [A4] 23.5
[B2] =A2*PI()/180 [B4] =A4*PI()/180 [D2] 0
[E2] =D2*PI()/180 [F2] =SIN(E2)*COS($B$4)
[G2] =-SIN($B$4)*COS($B$2)+COS(E2)*COS($B$4)*SIN($B$2)
[H2] =COS(E2)*COS($B$4)*COS($B$2)+SIN($B$4)*SIN($B$2)
[K2] =IF(OR(G2<0;H2<0);0;ATAN(G2/SQRT(F2*F2+H2*H2)))
[L2] =SIN(K2) [N2] =SIN(M2)
[M2] =IF(H2<0;0;ATAN(F2/SQRT(G2*G2+H2*H2)))
ここまでできたら、[E2]から[N2]までを[E3]から[N3]にコピーします。
次に[D3]に時角を増やす角度を入力します。ここでは1度にしました。
入力できたら、[D2]から[N3]を選択し、選択枠の右下にあるチョボをマウスで下にドラグし適当なところまで引っ張ります。
これで4行目以後ができます。G列、H列ともに最初にマイナスになるまで作ってください。表の場合時角108度(110行)
でマイナスになりました。以下にできたものは削除しています。
最後にL列N列の総計を求めます。L列は2倍します。
[L111] =2*SUM(L2:L110) [N111] =SUM(N2:N110)
考え方は、太陽が直角に当たっているときの光の強さを1とし、次の時角になるまではその角度に応じた強さであたっているとして、
合計を計算しています。「時角」は、天体が天の子午線(正中線)を通過してからの時間で表しますが、ここでは角度で入力します。1度は約4分です。
刻みの大きさは小さい方がいいでしょう。実際には計算された値に太陽定数(直達日射量)と次の時角に達するまでの時間をかけたものになりますが、
何倍強いかを求めるだけならこれで十分です。
その他の各式の意味は以下の通りです。
[A2][A4]には、それぞれ調べたい場所の緯度、太陽の赤緯が入力できます。赤緯は夏至の頃で23.4度、冬至で−23.4度、
春分秋分で0度です。
[B2][B4][E2]は弧度法に変換する式です。
x(w)は太陽方位の東西方向の成分です(太陽までの距離を1とした時のX座標の値です)。同様にy(s),z(u)はそれぞれ南北、上下方向の成分です。
K列で南壁面に太陽光があたる角度を計算しています。F列がマイナス(太陽が北寄りにある)、H列がマイナス(日が沈んでいる)
の時は太陽光があたっていません。
M列は西壁面の太陽光の角度です。地平線下の時には日が当たりません。
L列で南側の壁面に、N列で西側の壁面に太陽光のあたる強さを求めています。L列で総計を2倍するのは、午前
(太陽が正中するまで=時角がマイナス)も午後と同じように光が当たっているからです。
※表をダウンロードできます ↓
エクセル97形式(他ソフトの互換性のため;wisp03.xls:26.5kb)
open office形式(wisp03.ods;18.4kb)
何がわかったか 計算結果は、夏至の日の大阪付近での様子を表しています。南面に対して西面の方が、
5倍近くも日光に照らされていることを示しています。これはよく考えてみればわかることでした。南向きの壁は3時過ぎには日が当たらなくなるし
(太陽が真西に来るのは表中G列:y(s)が0になるところで、時角で52度、時間にすると3時間半になります)、あたっていても、
光は壁に対して斜めに指している分だけ弱くなっていて、当然の結果と考えられます。
「西日は強い」とよく言われますがまさにその通りの結果となりました
東日も同じように強いはずなのですが、気温が上がっていない分だけ和らげられるようです。
[A4]に−23.4を代入すると冬至の頃の様子がわかります。今度は、南面の方が日光がよく当たります。
西向きの家は、夏は暑く冬は寒いという結果となりました。南向きの家がいいというのはこんなところから言われているのでしょうか。
最後の壁面の角度を自由に変えて、その面への日当たりの強さを求められるようにすれば、太陽電池パネルの発電効率のよい置き方といったものがわかるはずです。