洗濯物を干して取り込みを忘れ、日が傾くまで
出したままにしていると湿ってくるので早く取り込まないといけないという話を聞きます。
この現象はどうして起こるのでしょうか。検討してみることにします。
まず単純に考えてみます。正午を過ぎると太陽の日差しは弱くなってきて、だんだん気温が下がってきます。
一日の内で最高気温を記録するのは午後2時前ころになります。
ここで考えられるのは、気温が下がり露点温度に達した時点で、空気中の水蒸気が凝結して洗濯物を湿らせるのではないかということです。
ところが実際に、露点温度に達するのは一日の最低気温になる頃で、場合によっては露点温度にまで下がらないことがよくあります。
単純に考えてみます。夜中に気温が下がり露点温度に達した時点で空気中の水蒸気は水滴となって放出されます。
最低気温を記録した時点では、大気中の水蒸気量と飽和水蒸気量が同じになります。
その後気温が上昇していくことで飽和水蒸気量が大きくなります。この状態では湿ることはありません。
大気中の水蒸気量は、地面などから供給される水蒸気はあるもののほとんど変化はないでしょう。
水蒸気が供給された分露点温度は上がりますが、たいした変化は見られないでしょう。
結局、再び露点温度に達するのは咲いて気温を記録する夜明け前になります。
これだと、日中に洗濯物が湿ってくるということはあり得ません。
もし何らかの理由で露点温度以下になっていたとします。この場合だと洗濯物以外にも露がついてくるはずです。
たとえば物干し竿といったところです。実際には露がついているのを見かけませんから露点温度まで下がったということはなさそうです。
洗濯物を出しっ放しにしているとどのようなことが起こるか考えてみます。
洗濯物が干されているのは、だいたいは日がよく当たる場所です。
このような場所は、上方には木といった障害物がないところが普通です。このような障害物がないと、熱が逃げやすくなることが知られています。
赤外線を放出して冷めていくことから放射冷却といいます。洗濯物を干す場所は、放射冷却が起こりやすいところになります。
放射冷却が起こりやすい条件としてはもう一つあります。よく晴れているということです。
雲があったりすると、熱が空に逃げていきやすくなります。
このような日は洗濯物がよく乾くということで、洗濯日和ともいわれます。
洗濯物を干したい日は、洗濯物が冷めやすい日ともいえます。
衣類などは保温効果があります。熱を逃がし難いものと思われがちですが、実際には熱を通しにくいものであるともいえます。
放射冷却で表面が冷えても、熱が通りにくいことによって、内部から熱を伝えてきて暖めるという効果が起こりにくくなります。
その分表面は急速に冷えていきます。
このようなことを総合して考えると、太陽の日差しが弱くなってくると、洗濯物の表面温度は急速に下がっていくことがわかります。
日影になっているようなところではその効果が大きくなるでしょう。
一日の気温変化は、地表の温度の変化を受けて起こります。
2時を過ぎて気温が下がりだすのは、このころから気温よりも地表面の温度が低くなるからです。
洗濯物も同じで、意外と早い時間から表面温度が気温よりも低くなります。
ところで、洗濯物が湿っているとか乾いたとかといったことをどうやって判断しているのでしょうか。
ふつうは、冷たければしめっている、冷たくなければ乾燥しているということではないでしょうか。
湿っている洗濯物からは、水分が蒸発するので、気化熱が奪われ冷たくなります。一応、理にかなっています。
それでは、放射冷却で冷たくなった洗濯物を触ったときに、その洗濯物はどうなっていると感じるでしょうか。
冷たいと感じるよりも、湿っていると感じる方が普通でしょう。もちろんこれは間違っています。
結局のところ、「
放射冷却で冷たくなったことを湿っていると勘違いしている」、というのがこの理由でしょう。
2022.06.26