この種の岩石は、どこかでお目にかかったことがあると思います。これが、奇妙なのは岩石名をつけてもらえない点にあります。
ふつうにイオウと呼ばれているのでそのように名付けましたが、岩石名としてはふさわしくありません。
一般に鉱石を含む岩石は、鉱石名で呼ばれることもありますが、かんらん岩(かんらん石を主体とする岩石)のように、
岩石名と鉱物名は区別されるべきものです。そこで、イオウ岩とでも呼べばよいのでしょうか。そうでもないようです。
さらにもう一つ問題があります。
イオウというのは元素名であって鉱物名でもありません。金の場合は自然金という鉱物名がありますが、
イオウの場合はそのような名前もありません。イオウという元素名しか認めてもらえない岩石なのです。
さらに、この岩石の所属を考えてみると別の問題が生じます。写真の石は、火山の噴気が岩肌で冷やされ、
イオウの結晶が岩の表面に沈着してできたものです。噴気そのものは火山のマグマと考えてよい(と思う)ので、この岩石は火成岩と考えられます。
また、実際に溶けたイオウが流れ出て固まってできた例もあります。
ところがイオウでよく知られているものは、温泉水から沈殿するものです。草津温泉などで湯の花として売られているものがそれです。
この場合は、水中含有物の沈殿によって作られるので堆積岩と考えることもできます。 温泉水そのものはマグマであると考えれば火成岩でもよいことになります。
ところで、霧島連山硫黄山では、石を積み上げてトンネルを作り、そこに噴気を導いて、内壁にできるイオウを採取していました。
現在では、一直線に並ぶ石組みやその内側にこびりつくイオウを見ることでその名残を伺うことができます。
このイオウは、人工的に作ったものとも考えられますので、岩石といっていいのでしょうか
岩石といってよいのか?このような名前でよいのか?分類はどうなるのか?考えれば考えるほど悩む岩石です。
分類:不明 (火成岩類?)
産地:宮崎県霧島連山硫黄山
このようなものが人工的に作られたものでない場合、岩石として扱うのがふつうです。この石を見ると、縦に
霜柱のような構造が見られます。柱のようになっているは、霜柱同様、鉱物の結晶が急速に成長したためです。
柱の一本一本がイオウの結晶です。このような、鉱物が並んでできる構造を組織といい、組織を持つことは岩石の特徴の一つです。
ところで、イオウの結晶はどのような形になるのでしょうか。右の写真は、イオウの人工結晶です(仁川学園高校米沢先生作成)。
このような形をしたイオウは、イオウ原子の配列のしかたから、ふつうは斜方イオウと呼ばれます。したがって、
鉱物名としてのイオウは、斜方イオウととなります。
(イオウ華という名前もありますが、これを岩石名としていいものか疑問があります)