昭和新山は、昭和19年から20年にかけて地下からほぼ固まったマグマが上昇してできた火山です。
山体は全体として赤っぽい色をしているのが特徴です。始めに火山を見たとき、この赤いところが溶岩であると思っていました。
近寄って見られるところがなくなりましたが、近くで見ると、赤いところは写真のような状態で、非常にもろく溶岩のように見えません。
写真の色をモノクロにしてみると砂岩と全く区別がつきません。実際に昭和新山の少し高いところでは、この石以外にレキ岩みたいなもの、
泥岩みたいなものがしっかりとした地層のような模様を作っています。
ところで、粘土(泥岩)を採ってきて酸化状態にして炉の中で熱してみると赤い色をしたレンガができます。この石もこれと同じように、
砂岩、レキ岩、泥岩といった岩石の作る地層が、地下から上昇してきた溶岩の熱で温められ、赤く変色してできたものです。地層のように見えるのは、
始めにあった地層が、乱されることなくそのまま持ち上げられているからで、まさしく地層そのものだからです。
火山の熱によって、レンガのように、岩石が赤く変色してしてできたものなので、このような岩石を火山レンガと呼ぶことがあります。
赤く見えるのは、岩石中に含まれる鉄分が酸化して酸化鉄になったためといわれています。実際には、土中の褐鉄鉱(FeO(OH)・nH
2O))
から水分が抜けて赤鉄鉱(Fe
2O
3=酸化鉄)に変わる反応が起こっています。これは酸化反応ではなく脱水反応です。
赤鉄鉱の色はふつう黒色なのですが、非常に小さな粒や条痕色は赤色に見えます。褐鉄鉱の色は茶色なので、溶岩の熱を受ける前のうす茶色から、
赤色に岩石の色が変化します。
昭和新山で赤く変色している岩石のある場所は、中腹までの高さのところになります。昭和新山を横から見ると、2段になっているのがわかります。
三松正夫さんの観測記録(「昭和新山」1988年三松正夫記念館発行)や三松ダイヤグラムを見ると、全体が盛り上がってから、
その中心部が高くなっていくのがわかります。中心部が高くなり始めた頃の記録には噴煙の中に溶岩塔が見えると書かれています。つまり、
段の低い方は元々の地面が溶岩の上昇に引きづられて盛り上がってできたもので、溶岩は最後にその真ん中出現した事になります。
低い方の段は、元々の地面を作っていた岩石でできています。その岩石が溶岩の熱で赤く変色したため昭和新山は赤く見えます。
分 類:堆積岩類
岩石名: 砂 岩
産 地:昭和新山
一般に、マグマの熱で元あった岩石の鉱物が別の鉱物に変わった岩石は変成岩といいます。
火山レンガの場合も新しい鉱物ができているという点で変成岩のように見えます。ただ、できた鉱物が非常に微細で顕微鏡では見えないこと、
化学反応が、日常でも見られるという点で変成岩には入れられていません。