静岡県伊東市南部の海岸沿いにある崖に穴が開いています。この穴からは潮を噴き出すことがあるので、汐吹穴と呼ばれています。
よく吹き出すのは、満潮に近いときと波が大きな時です。両方の条件が重なればもっと大きなものが見られるでしょう。
見にいったときは満潮に近かったのですが、波が小さかったためにあまり大きなものが上がりませんでした。
見ていると、波が打ち寄せてしばらくしてから穴の入り口から空気が勢いよく吹き出すのが見えました(右写真)。
波が洞窟内に侵入すると、内部に閉じ込められた空気が圧縮され、波の勢いが弱くなったときに吹き出しているようです。
この時に、入り口近くにじゅうぶんな量の海水があれば、霧状の潮となって吹き出しているようです。
この過程を、コマ送り動画にしてみました。下の[進める>][<戻す]ボタンをクリックしてみてください。
干潮で波が低いところにあたっていると穴の中に海水は入りませんし、潮位が高すぎると穴の中に空気が入りません。
適当な高さの潮位があるようです。また、波の高低差が小さいと波が穴をふさげず、圧力が高くなる前に空気が逃げてしまいます。
大きなものができるためには、かぎられた条件にあうことが必要なようです。
2018.12.15
海岸の岩に波が打ち寄せるのにあわせて、岩の隙間などから海水を霧状にして噴き上げる現象は各地で見ることができます。
このような場所は、「しおふきあな」とか「しおふきいわ」と呼ばれています。
「しお」には「汐」や「潮」の字が、「ふ(き)」には「吹」や「噴」の字が充てられているようです。
そのほとんどのものは伊東市の汐吹穴と違って、潮を上方に噴き上げます。
下の写真は宮崎県日向市
サンパーク公園の潮吹き岩のようすです。
岩の割れ目に沿って後方10mくらいの所に海があります。潮は割れ目の底から斜めに噴き上げているようにみえます。
この後、潮の吹き出し口から海水がでてきて、そのままの勢いで割れ目の奥まで進んで行きます。その時のようすが右写真です。
噴き上げた霧状のしぶきがまだ残っています。
波が引いていくとともに、割れ目に入った海水も引いていきます。まだ完全にぬけきらないうちに次の波がやってくると、潮が吹き上がります。
内部はトンネル状になっていて、押し寄せてきた波がトンネル内の空気を反対側に押し出していると考えられます。
この時に、空気の出口側に海水が残っていると一緒に巻き上げるようです。
このようすを上と同じようにコマ送り動画にしてみました。
次に来る波が小さな時は、空気が押し出されないので、潮は上がりません。
また、小さな波の後に大きな波がやってきても、海水を巻き上げることがないので潮が上がらないようです。
このタイプの潮吹き岩を紹介します
岩手県宮古市崎山の潮吹穴
|
|
宮城県気仙沼市岩井崎の潮吹岩
2ヵ所からでています。3枚の写真を合成
|
|
福井県越前町銭が浜の潮吹き岩
岩を越えてきた海水が噴き上げられているようです。(2023.06.14掲載)
|
|
2019.02.20
もう一つ違ったタイプのものです。潮を噴き上げているところの写真はありません。穴のみを示します。
沖永良部島(鹿児島県和泊町)の
フーチャ(潮吹き洞窟)です。
ふだんは穏やかな洞窟なのですが、冬の季節風や台風の風が強いときなどは、海水を霧状にして70mも噴き上げることがあるようです。
霧は内陸に運ばれ作物に大きな塩害を起こします。そのためほとんどのものは壊されました。
影響をあまり引き起こさなかったこの一つのみが残されています。
左側に海があります。海岸線はほとんどまっすぐで、ほぼ同じ高さの崖が続いています。
この付近の岩石は琉球石灰岩(隆起珊瑚礁)です。その上面は海の方に向かってわずかに傾いています。
石灰岩は、二酸化炭素を含んだ水に溶かされます。波が砕けることによって水の表面積が大きくなり、二酸化炭素をたくさん溶かし込んでいきます。
海の波のあたるところまで石灰岩が溶かされます。あたる高さは一定ですからまっすぐな海岸線ができたのでしょう。
その海岸線にぶつかるように強風が吹きつけると、砕けた波が強風に流され陸地側にまで飛んでいくことがあります。
風が強いと波も大きくなりますから、砕けたしぶきもたくさんできます。
右写真は、佐賀県唐津市の七ツ釜でのようすです。強い風が吹きつけ、砕けた波が霧状になって陸地側に流されているようすがよくわかります。
海岸に洞窟がありその奥で洞窟の天井が開いているとき、洞窟の中を風が吹き抜けていきます。
その風に流され、砕けた波が霧状になって高く噴き上げることになります。
天井の穴が小さければ、そこから吹き抜ける風は強くなります。しぶきが舞上げられるのもその分高くなります。
七ツ釜では、海食洞が奥までぬけていませんから、岩壁にそってしぶきが噴き上げられているようすだけがみられます。
ところで、フーチャのような穴はどのようにしてできたのでしょうか。
ほぼ同じ高さの崖が続くところまでは話をしました。波は石灰岩を溶かし続けます。
海面から一定の高さの所までがえぐられるように溶けていきます。ノッチといいます。
フーチャの写真の左上側、海岸線近くにそのようすを見ることができます。
帯岩のページにもそのようすをあげています。参考にしてください。
ノッチの奥行きにわずかに違いができたとします。奥に一番深いところに波が集まってきますから、ここで砕ける波も大きくなります。
そこだけさらに奥に深く溶かされていくでしょう。だんだん大きな洞窟となっていきます。
波が大きくなると、高くまでしぶきが上がりますから、洞窟の天井も高くなっていきます。
天井が地表に突き抜ければフーチャのような穴ができます。
このようにしてできた穴の例です。潮吹き洞窟ではないものの、一時期そのようになっていたかも知れません。
条件がそろえば、潮を噴き上げることもありそうです。
宮古島(沖縄県宮古島市)東平安名崎の洞窟
海の方につながっています。草が枯れていませんから潮を噴上げていないことがわかります
|
|
徳之島(鹿児島県天城町)犬の門蓋
洞窟の底は海面より高くなっています。よっぽどの高潮でないと潮を噴き上げないでしょう
|
|
徳之島(鹿児島県伊仙町)みやどばる
天井が完全に落ちています。入ってくる波は穏やかで、大きく砕けることもありません
|
|
2019.02.20
2018.12.15 掲載開始
2019.02.20 追加記載
2019.09.22 写真追加
2023.06.14 写真追加