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ウグイス砂



ウグイス砂

 釣浜の海岸にでて砂浜の表面にある砂の色を見ると、暗緑色をしているところがありました。この色をしている砂を「ウグイス砂」といいます。 このようなものは、父島北東部の入り江にある砂浜で見ることができます。初寝浦のもののほうがきれいなようですが、体力不足で行きそびれました。 南東部にもあるようですが、ガイド同伴でないと立ち入ることができません。
 暗緑色の砂が、部分的にかたまってあるのどうしてでしょうか。よく見ると、暗緑色をしているところでもいろいろな色の砂粒でできています。 他のところと比べて、暗緑色の粒が多く含まれているに過ぎません。暗緑色の砂粒は、他の砂粒と比重がわずかに大きくなっています。 波がなんども砂を洗っていく内に、他の粒がたくさん流され、暗緑色の粒が多く残されていったからです。 砂鉄が集められ砂浜が黒くなっているところができるのと同じ原理です。
 暗緑色をした砂粒は、正式には頑火輝石という鉱物になります。 この鉱物を含む岩石が風化してとりだされたものです。
 頑火輝石(がんかきせき)は、古銅輝石(こどうきせき)と呼ばれていたことがあり、古びた銅の色、言い換えれば緑色が語源となっています。 透明感のある緑色をしていて、やや細長い形が特徴です。マグネシウムを多く含む輝石の仲間です。 他の鉱物の割合が少なく、主体として含まれている岩石は、日本列島本土では、わずかしかありません。讃岐岩にたくさん含まれていますが、 粒は、顕微鏡でみないとわからないくらい小さく、この岩石自体も愛媛県から愛知県にかけて集中してあるものの非常に珍しいものです。 これが風化して砂浜で集められてとしても、暗緑色の砂を作るということはありません。
 父島には、無人岩と呼ばれる独特の岩石が分布しています。小笠原諸島の別名である無人諸島が命名の元になっていますから、 ここにしかないものであると容易に推察できます。父島では普通に見られるようです。岩石の特徴は、斜方輝石(この場合頑火輝石)を主体として、 他に単斜輝石やカンラン石を含み、 長石類を含まないガラス質の安山岩です。比較的大きな鉱物も含まれています。
 ガラスは比較的風化しやすく無くなってしまいす。そのあとには頑火輝石が残されます。長石がふつうに含まれていれば長石が残ったかもしれません。 無人岩の場合は主体が頑火輝石になります。他に作られた砂と混ざったとしても、その中には、頑火輝石がたくさん含まれています。 このような砂が、波で洗われている内に、頑火輝石の成分がだんだん多くなっていくところができます。 そうなるとそこの砂の色は、緑色がかって見えるようになります。このようにしてできたのが、ウグイス砂です。
 無人岩は、父島にしかない岩石だけれども、普通の人が見て(ちょっと岩石学をかじったくらいでも)わかるものではありません。 しかし、このウグイス砂を見れば、この特殊な岩石の存在が想像できます。


分 類: 堆積岩類 砕屑岩(物)
岩石名: 砂岩(砂;ウグイス砂)
産 地:東京都小笠原村父島釣浜



 ハワイの、海岸の砂は、典型的な色として3色あります。白と黒と緑です。白は珊瑚や貝殻の破片、黒は溶岩の破片からできています。 緑(グリーンサンド)は、きれいな緑色をしていますが、溶岩中のカンラン石が洗い出され、波の働きで濃集したものです。 周辺の岩石が変われば、できる砂の色も違ってくるようです。

 無人岩や讃岐岩は、マグネシウムをたくさん含んだマグマから作られます。プレートの沈み込みが関係しているといわれています。 フィリピン海プレートや日本列島が作られ始めたときに、マグマの噴出によってできた特殊な岩石です。何か共通の事件があったように思えます。 何があったのかは推測になりますが、大陸の切り離しが起こっているようにも見えます。無人岩についてはこちらの項で、 讃岐岩についてはこちらの項で検討してみました。
2015.02.11





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