ヨッシンと 地学の散歩
散歩道の風景 写真集(No.21)
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マッドボール
鹿児島県西之表市犬城海岸
レキ岩層が露出しています。レキは丸い泥岩でできています。ちょっと奇妙なのは、このレキは周りにある砂岩よりも柔らかそうです。
地層ができたときは泥のかたまりだったように思えてきます。このことからこのレキはマッドボールと呼ばれています。
普通の地層でも、できるときは下の地層を削りながらたまっていくことがあります。
ここの地層は、下にあった泥の層を完全に削りさったようです。それが運び去られずに残って砂の中に埋まってマッドボールが作られました。
腐れレキ
大阪府箕面市才が原林道
崖にレキ岩層が露出しています。ここのレキはスコップで削れるほど柔らかくなっています。
このようなレキを腐りレキとか腐れレキといいます。
柔らかくなったのは風化されたためです。地層が浸食されたり土砂がたまったりして新しい地表面ができ、
それが長期間にわたって放置され続けることがあります。だいたい数万年から十数万年といった年数です。
地面から地中深くまで風化作用が進んでいって地層や地層中のレキが簡単に削れるかたさになります。
ここのレキをよく見るとチャートのような風化されにくい岩質のレキはそのまま残っています。
どのような岩質のレキが風化しているかということを利用して、地表が放置された年数を他のレキ岩層の場合と比較することができます。
断層擦痕
熊本県天草市鬼海が浦展望所
断層は、地盤を作っている岩石が割れ、できた割れ目にそって両側の岩石が違う方向に動いてできます。
この時できた割れ目を、断層面といいます。断層面に沿って岩石は再び割れやすいため、野外では断層面が露出しているのを時々見かけます。
断層面に沿って岩石が動くとき、相手の断層面上に傷を残すことがあります。これが断層擦痕です。
写真では、左上から右下に向かう無数の筋としてみることができます。
この場合、向こう側の岩石が左上方向か右下方向のどちらかに動いたことがわかります。
ヘリグマイト
熊本県球磨村球泉洞
ヘリグマイトは、ふつうは、鍾乳洞の床面にできる曲がりくねった管状のものか、石筍にくっついて伸びるひげ状のものをいいます。
ヘリクタイトが天井付近にできるのに対して使われます
看板の矢印の先にあると書かれています。できはじめの場所が天井近くのでヘリクタイトかヘリグマイトか微妙なところです。
どちらかというといきなり上向きに伸びていますので、ヘリグマイトとしておきましょう。
まわりには、ヘリクタイトがたくさんできています。
ベルホール
熊本県球磨村球泉洞
鍾乳洞の天井にできる丸い穴です。ここでは7個ほど見えています。
形が西洋のベルを下から見上げた形に似ていることからこのような名前がつけられています。
どのようにしてできるのかはよくわかっていません。鍾乳洞が水没したときに天井付近を流れる水流が石灰岩を削ったという説明もされているようです。
新鮮な空気と水がないとこのようなことは起こりそうもありませんから、この説明は決定的ではないように思われます。
ここでは、コウモリのねぐらになっているようです。穴の奥にコウモリの足がつけた黒いしみのようなものができています
オニキスマーブル
熊本県球磨村球泉洞
鍾乳洞の地下水から石灰分が再結晶してよってできるものを、一般的にはトラバーチン(例:タイトル背景)と呼びます。
そのなかで、縞模様のきれいなものに対してオニキス(例:ページ背景)ということもあります。読み方の違いでオニックスと呼ぶこともあります。
オニキスは普通はケイ酸質のものに使われる用語のようです。石灰質のものに使う場合は、オニキスマーブルと区別することがあります。
ここのものをよくみると、全体的な形はフローストーンになっています。その断面を見て岩石を特徴から名付けるとオニキス(トラバーチン)となります。
基底レキ
沖縄県与那国町南牧場
青っぽい色をした岩石と茶色っぽい色をした岩石があります。
どちらも砂岩のようで、岩質は似ています。岩石の色が青から茶色に変わったように見えます。
実際にこの左側の続きでは、岩石に割れ目(節理)にそって岩石が茶色くなって、中心部に青っぽい岩石が残されているところもあります。
風化してできただけの場合は、茶色い筋は真っ直ぐつながり、中心の青っぽい色をした岩石は整然と並びます。
写真では、上に行くほど丸い塊が雑然と並んでいるように見えます。そのすき間に、小さな硬そうな岩石も挟まっています。
このことから、上の茶色いところは、青い色の岩石が地表付近で風化を受け崩れ落ち、小さな石ころを挟み込むようになったと考えられます。
このようなことは、古い地層の上に新しい地層が、不整合でたまり始めるときのものに見られます。
不整合面上に見られる、古い地層が崩れ落ちてできたレキの事を基底レキといい、基底レキの作る地層の部分を基底レキ岩層とか基底礫層といいます。
傾斜不整合
沖縄県与那国町南牧場
やや右に傾いた層理のような筋がはっきりした青ぽい色の地層と、ほとんど塊のような茶色っぽい色をした地層とが接しています。
青っぽい色の地層は、1600万年ほど前にたまった砂岩の多い八重山層群です。
茶色っぽい色の地層は、10万年ほど前にこのあたりで珊瑚礁を作っていた岩石で、琉球石灰岩と呼ばれています。
2つの地層のできた時代や環境は、大きく異なっています。地層ができ時代の間に、大きな休止期が見られる地層同士の関係は不整合と呼ばれます。
この、八重山層群と琉球石灰岩との関係は不整合ということになります。
さらに、八重山層群は右に傾いていますから、この不整合は傾斜不整合といえます。
アカホヤ火山灰層
宮崎県高原町鹿児山
日本の広い地域で見つかる火山灰層の一つに、アカホヤ火山灰層があります。
今から、7300年ほど前に九州の
薩摩硫黄島近くでカルデラを作るような大噴火がありました。
その時に風に流されてきた火山灰がたまったものです。
崖の上端近く、黒い地層に挟まれた赤茶色の地層がアカホヤ火山灰層です。その下の明るく筋になってみえる地層は、17000年ほど前に、
霧島山韓国岳から飛ばされてきた小林軽石層です。
姶良丹沢火山灰層
東京都八丈町末吉石積ヶ鼻
1950年代頃、神奈川県北部から東京都中部にかけての地域で、よく目立ちどこでも見つかる火山灰層があるのがわかりました。
丹沢地域を中心に見られるということで、この火山灰層は丹沢火山灰層と名付けられました。
この地域で、見つかる火山灰は噴出源が富士山とかといった具合にだいたい特定されたのですが、この火山灰層だけはなかなか特定されませんでした。
だんだんと西方に起源を求めている内に、九州のシラスを作った噴火によって流されてきたものだとわかりました。
シラスを作った火山は姶良火山(あいらかざん)という今は形が残っていない火山であることから、前にその名前をつけ姶良丹沢火山灰と呼ばれるようになりました。
姶良火山から、八丈島まで800km以上離れていますが、ここにまで火山灰をつもらせる噴火の大きさに驚きます。
シラス(入戸火砕流堆積物)
鹿児島県日置市江口蓬莱
南九州には、シラスと呼ばれるこの地方独特の土が見られます。シラスは、厚いところでは100mを越えることもあります。
シラスを切り込んだ谷や海岸では、垂直な切り立った崖が普通に見られます。これが大雨が降ったときなどに、大規模な崖崩れを起こすことで問題になっています。
シラスは、錦江湾(鹿児島湾)の北半分で発生した入戸火砕流(いとかさいりゅう)という大規模な火砕流によって運ばれてきた火山噴出物がたまってできたものです。
中の軽石は、噴出時の形を保っているものがほとんどです。このような溶結構造はあまり見られないものの、わりと締まった堆積物となっています。
火山の噴火は今から25000年ほど前に起こったとされています。
赤色土(ラテライト)
広島県庄原市吾妻山
亜熱帯地方で岩石が風化を受けると赤い色をした土に変わっていきます。このようにしてできたのが赤色土(ラテライト)です。
近畿から中国地方にある、山頂付近が平らになっている、山や高い丘陵の頂部の岩石は、間氷期に起こった風化によって赤色土になっていることがあります。
写真のものはまだ岩の形が残っています。赤色土になる直前のものでしょう。赤色土化を受けている(している)といいかたをします。
さらし首構造
宮崎県日南市鵜戸神宮
何か物騒な名前ですが、海岸に巨大な礫が転がっているようすがそのように見えたのでこういう名前がつけられたようです。
ここでは、地層の断面もわかります。泥質の地層の中に、巨礫がまばらに入っていますが、
地層の上面近くでは、集まって入っています。 その後、地層の上面近くまで削られた時に、巨礫が残されたできたものだとわかります。
巨礫を取り込んだ泥水がものすごい勢いで流れ込んできた後、
たまった土砂が弱い流れで削られていきます。流れが弱いので、泥は削られてなくなっていきます。
ところが、巨礫は運び去ることができないので、地層の上面に集まってきます。
このようにして地層の上面に巨礫の密集した部分ができます。
ケーブコーラル(洞窟サンゴ)
沖縄県南大東村星野洞
鍾乳洞の壁から成長する、樹枝上の生成物です。形が枝サンゴに似ているのでこの名前がつけられています。
似たようなもので、ぶどう状鍾乳石とか色々な名前で呼ばれているものがありますが、その区別はないようです。
ここのものは、ケーブコーラルと呼ぶには小さいのですが、突起状構造とか中には枝分かれしているようになっているものができています。
ヘリクタイト
沖縄県南大東村星野洞
持っている本(洞くつの地学:1971年刊)には、ヘリクタイトは天井や鍾乳石から曲がりくねってのびる結晶質方解石と書かれています。
載せられている図版も、ダイコンから伸びるひげ根のようなものになっています。写真のいくつかの鍾乳石にも同じ様なものがみられます。
天井からもこれによく似たひものようなものができています。
下に示したヘリクタイトとは大きさと言い何となく違うようにも見えます。ヘリクタイト(曲がり石)と呼ばれているものにも何種類かありそうです。
ヘリクタイト(曲がり石)
沖縄県南大東村星野洞
天井から曲がりくねって伸びる鍾乳石の仲間です。どうしてこのように曲がりくねるのかはよくわかっていません。
水の表面張力によるとか、風の影響によるとか色々いわれていますが、決定的とまでは言いがたいようです。
洞床から伸びるものはヘリグマイト(もやし石)と呼ばれ区別されています。
星野洞では、できている場所も多く、数もたくさん見ることができます。
鍾乳管
沖縄県南大東村星野洞
直径が1−2mmほどの細長い鍾乳石です。鍾乳石は、表面を水が流れるのに対して、鍾乳管は中を水が流れています。
管の先で、水が垂れ落ちるときに管が伸びていくので、鍾乳石より成長は早くなります。
星野洞のものは、長いものがたくさんあるのと、ものすごく密集しているところがあるのが特徴です。
長いものでは、1m以上になるものがあります。いくつかの鍾乳管が真っ直ぐ並んでいるところがあります。
ケーブパール(洞窟真珠)
沖縄県南大東村星野洞
洞窟真珠ともいいます。鍾乳洞内の水たまりなどで、小さな石が転がることによってできるといわれています。
表面のきれいなものがケーブパール、あまりきれいでないものはケーブピソライトと区別することもあります。
表面が濡れているときれいに見えるので、この区別は意味がないのかも知れません。
ここのものは、壁にへばりついています。水のたまっていたところからあふれ出してきたのでしょうか。
流理構造
島根県隠岐の島町奥津戸
流紋岩は、流れたような模様が見られることからその名前がつけられています。この模様は、流紋岩に取り込まれた軽石などの部分が、
流紋岩溶岩として流れるときに、引き伸ばされてできたすじです。
水飴に気泡を入れてかき混ぜると、空気が引き伸ばされてすじのようになるのと同じ原理でできます。
この模様は、流理構造と呼ばれています。すじがはっきり見えなくても、鉱物の長い方向がそろっていたりした場合もこの名前で呼ばれます。
縁辺急冷層
長崎県壱岐市郷ノ浦町初瀬
マグマが地下を上昇してくるとき、その通り道の縁ではマグマが急激に冷やされ、中心部より早く固結します。
この部分は、縁辺急冷層と呼ばれいくつかの特徴があります。
まず、岩石はガラス質になります。その部分風化を受けてちょっと赤っぽい色で写っています。それから、岩石が細かく砕かれる場合もあります。
この時、周辺の岩石を取り込むことがあります。黒い小石状のものの間に転々と白い小石が入っています。
教科書には周辺の岩石が、変成作用を受けると書かれていますが、この場合は、流紋岩なのでどうなっているか見分けは容易ではありません。
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