今から何年前というように、数値で表した時代の呼び方を絶対年代といいます。これに対して、ある特徴のあった時代に名前をつけて呼ぶ方法は相対年代です。
たとえば、西暦1782年という言い方は絶対年代ですが、江戸時代という言い方では相対年代になります。
時間に限らず、位置や重さなどでもそれを表す方法には、数値で表す場合と名前で表す方法があり、前者が絶対尺度、後者を相対尺度といいます。
この言い方を使えば、絶対尺度を用いて表した時代は絶対年代で、相対尺度を用いて表した年代は相対年代という事になります。
当然のことですが、絶対に正しいとかいった意味ではありません。いずれにしても、混乱するので、絶対年代という言い方をやめようという議論もあります。
その場合は、年代値あるいは年代推定値とよびます。
地質時代の絶対年代は、桁数が大きくなります。下位の桁は誤差の範囲で意味がないので、百万年をひとまとめとして呼びます。
たとえば1億年前は、100(百万)年前となります。英語では、100 million years before present となり、略して100m.y.(BP)となります。
ここでいう1年は、暦の1年とは一致しないかも知れません(誤差を含んでいる事を考えないといけない)。
そのため、年を使うのはどうかということで、代わりにageを使われます。英語で100million ages です。
これを略すと100m.a.となります。現在では、時代の長さの単位をa(age または année)として、単位に100万を表す冠詞M(Mega)
をつけ100Maと書くようです。数万年以下の時は冠詞はk(kilo: 1000)で、1万年なら10kaと書きます。
今からの「今」も何年かするとずれて困るので1950年と定義されています。
(単位がm.a.といっていた頃の話でMaになったときに変わったかも知れない)
地質時代の場合、相対年代は化石から求められています(他のものを使うときもある)。
それでは、絶対年代はどのようにして求められているのでしょうか。その方法を見ていくことにします。
1.年輪や氷縞粘土
木の年輪は、成長の早い夏場は大きな細胞が、成長の遅い冬場は小さな細胞が主体となることで、1年ごとに縞模様を作ります。
この模様は年輪と呼ばれています。この年輪の数を数えることで、この木のこの部分は年前に作られたものかを知ることができます。
樹木は数百年程度しか生きることができませんので、数百年前まで遡るのが限界のように思えます。
ところが、古い遺跡や土中に埋まっている樹木に見られる外側の年輪のパターンが、 今まで知られている一番古いパターンと一致すれば、
その樹木の内側の年輪パターンから、さらに古い時代まで遡ることができます。今ではこの方法で、1万年以上前まで知ることができるようです。
このような方法が使えるのは、年輪ので着方に関係しているからです。
年輪の間隔は、寒くなるなどその植物にとって生育条件が悪くなるとつまり、逆によくなった年は開くことが知られています。
そのため年輪が詰まったり開いたりといったパターンはだいたい年代が同じであれば似通ったものになるからです。
年輪に限らず1年あるいは一定の期間単位で規則正しくできる縞模様があれば年輪と同じ方法で、絶対年代を決定することができます。
氷河のある地域では、氷河の先に湖ができていることがあります。この湖に氷河から溶けてできた水が流れ込んでいると、
この湖底に氷縞粘土と呼ばれる縞状の地層ができます。夏になると、氷河は溶けそれに伴って土砂や泥水が流れ込んできて粗い粒子がたまります。
これに対して冬になってくると、氷河が溶ける割合は減っていきます。土砂がだんだん少なくなり流れ込まなくなっていきます。
こうなると水中の泥だけがたまっていきます。このようにして1年で土砂・粘土が繰り返した地層ができます。
これが氷縞粘土です。この地層も年輪と同じ方法で遡っていけば、絶対年代を決定することができます。
残念ながら、この方法で求められるのは、地球上に現在ある氷河ができ始めた数十万年前が限界です。
それ以前は、氷縞粘土が作られていないため、年代決定の手がかりが途切れてしまっています。
福井県の三方五湖の一つ水月湖(右写真)の湖底では、氷縞粘土と同じような理由で、1年ごとに繰り返す縞模様ができているそうです。
年輪にしても氷縞粘土にしても、数えはじめが現在であれば、その資料から直接年数が求められます。
ところが、数えはじめの年代がわかっていない場合、その資料だけから年数を求めることができません。
中にあるパターンが用いられます。ところで、このパターンに名前をつけて呼んだとしたどうなるでしょうか。
たとえば、この年輪の詰まっているパターンは天明年間というようにです。これは明らかに相対年代になります。
名前で呼んでいないだけで、相対年代から絶対年代を導き出している事になります。従ってこのような求め方を、相対的(絶対)年代測定法といいます。
他の相対年代と大きく異なるのは、パターンやパターン間の年数が求められることです。
そのため、年輪や氷縞粘土の場合は、単独で絶対年代に到達することができるのが特長です。
もう一つの大きな特長は、何年前というようにきっぱりとした数値で表すことができることです。
他の絶対測定法に比べて、測定結果が何年から何年の間というような測定誤差がでない事は大きな利点です。
誤差があると、最後の最後でどちらが古いとか決められなくなることだって生じてきます。
2.相対的(絶対)年代測定法
相対年代を決定して、そこから絶対年代を求める方法です。たとえば、天明の大飢饉といえば1782年というように求める方法です。。
最後に絶対年代に直すときに、この方法の中に絶対年代を決定する手段を持っていない点で、絶対年代測定法と言ってよいのか疑問が残るところです。
よく使われる相対年代の決定方法にいくつかありますので、例とともにあげてみます。
火山灰(広域テフラ)など | : |
火山灰層などを利用する アカホヤ火山灰層があると7300年前のように求められる
津波堆積物なども利用できる
|
花粉 | : |
気候変動にともなって花粉の種類と比が変わる |
微化石 | : |
気候変動に伴って種類や形態(巻の方向など)の変わるものを利用 浮遊性有孔虫など |
岩石残留磁化方位 | : |
岩石に残された古地磁気の方位の変化のようす |
安定同位体組成比 | : |
温度変化の様子がわかる |
火山灰層はその層単独で相対年代が決定できますが、それ以外のものは時代が連続する資料を用いて変化のようすを調べる必要があります。
3.定速で変化するものを利用
時間あたりどれくらい変化するか推定できて、変化した量もわかれば変化にかかった時間を求めることができます。
たとえば、車で移動していて、その速度と移動した距離から走った時間を求めるのと同じような方法です。
最初に地球の年齢を求めた方法は、地層のたまる速さを測定し、現在ある地層の量から求めています(かなり強引だと思う)。
非常に若く求められたということで失敗だったことになっています。
深海底といった特殊な環境ではこの方法でもじゅうぶんに年代を求めることができます。他に岩石の年齢を求める方法をあげます。
熱ルミネッセンス法 | : |
放射線に被曝される事によってたまった電子の量を求める |
黒曜石水和層法 | : |
黒曜石(火山ガラス)と水との反応層の厚さを利用 |
炭化状態 | : |
植物化石が有機溶剤に溶け出す量から炭化している割合を求める 古いほど炭化度は大きい |
地層の置かれた条件によって、速度がかわる事が考えられ厳密な年数を出すのは難しいようです。
これ以外でも、ものすごくおおざっぱになりますが、地層の固さなどで岩石のおおよその年代がわかることもあります。
4.放射年代
放射性元素は、一定の速さで別の元素に変わっていきます。その速さは、環境条件によらず変化しないのが大きな特徴です。
そのため、岩石の年齢を求めるのに普通に用いられています。
別の元素に変わる(崩壊する)速さは、放射性元素が初めの半分になる時間で表すことがあり、これを半減期といいます。
これ以外にも、1秒間に崩壊する確率で表す事もあり、これを壊変(崩壊)定数といいます。
半減期(T)と壊変定数(λ)の関係は
2e
−λT=1
になります。
放射性元素の半減期や壊変定数は、正確とは言い切れません。値が変わったことだってあります。
そのために実際には求めた数値からずれているかも知れません。
どうやって求めたかがわかるように、放射性元素を利用して求めた年代を絶対年代といわずに、放射年代といいます。
放射年代は、利用した元素によって、すれているかも知れない幅が違いますので、
そのために、炭素14法といったように利用されるそれぞれの元素によって名前がつけられています。
どのように計算するかを考えてみます。壊変定数を使えば、放射性元素の数(N)と時間(t)の関係は、最初の数(N
0)を用いて
N=N
0×e
−λt (eはネイピア数)
で表されます。式を見てわかるのは、最初の数と現在の数がわかれば時間(年数)が求められることになります。
壊変定数(半減期でも同じ)は現在求められている値が使えます。ここで問題になるのが、最初の数をどうやって求めるかということです。
それぞれの元素によって様々な方法がとられています。それぞれの放射元素によって年代を求める方法を詳しく見ていくことにします。
4-1 炭素14法
炭素14を用いる方法です。C14法ともいいます。
炭素14は半減期5370年で窒素14に崩壊(β崩壊)していきます。
半減期が非常に短いので地球ができたときにあった炭素14はないといっていいでしょう。
それでも、現在の地球上に炭素14がわずかに含まれているのは、地球大気上層で、太陽放射によって窒素14が反応することで作られているからです。
年間に作られる量はほぼ一定なので、炭素全体に占める炭素14の割合は一定になります(おおよそ100万分の1)。
これが生物活動で、体内に取り込まれると、体内にある炭素14の割合も一定になってきます。
この値は、現在でも大昔でもあまり変わらないと考えられます。
生物生物活動が停止した時点では、現在と同じ割合で炭素14が含まれていたはずですから、現在の残っている炭素14の割合と比べることで年数を求めることができます。
活動がなくなって炭素が体内に取り込まれなくなると、その時点から炭素14の量は減っていきます。
この方法は、地球上で作られている炭素1はが時代に関係なく一定としています。
実際には太陽活動の変化によって作られる量が変わることがあり、特定の年数で特定のずれがあることが知れています。
その補正も行われているようです。
炭素14の半減期は絶対年代を求める他の放射性元素に比べて非常に短いのが特徴です。
そのために、測定される年数は非常に短くて6万年程度が限界とされています。
4-2 フィッショントラック法
ウラン238は、普通の核崩壊以外に、自発核分裂といって、ある一定の確率で真っ2つに割れる分裂が起こります。
自発核分裂が起こると、分かれた原子核は鉱物中を高速で移動し、周囲の鉱物に傷をつけます。
これがフィッショントラックです。古い岩石はこれによって特定の色がついて見えるそうです(
ここの右下の石)。
この傷は非常に小さいので、顕微鏡で見ることはできませんが、薬品で処理することで見ることができるようになります。
傷の数を数えることによって壊れたウラン238の量を求めることができます。
現在の量は、中性子を当てウラン235を強制的に核分裂をさせることで、トラックを作ることができ、現在あるウラン235の量を求めることができます。
ウラン235、238とも半減期は比較的長いので、新しい時代なら同位体比は現在とそれほど変わらないとして、現在あるウラン238の量を推定します。
4-3 カリウムアルゴン法
カリウム40がアルゴン40に崩壊(逆β崩壊)する反応を利用します。
カリウム40は、その大半がカルシウム40に崩壊(β崩壊)しますが、一定の割合でアルゴン40もできます。
この時カリウム40は半減期が13億年で減っていきます。この反応の時にできるアルゴン40は気体です。
火成岩や変成岩ができたときには岩石から取り除かれ、含まれていなかったと考えられます。
従って、現在の岩石中にアルゴン40が含まれていれば、岩石ができた後にカリウム40が崩壊して作られたものだといえます。
この量から、崩壊してできたカルシウム40の量がわかり、崩壊したカリウム40の量を求めることができます。
この方法の欠点は、ちょっとした地殻変動があると、岩石中からアルゴン40が取り除かれてしまうことがあることです。
逆にこのことを利用して、最後の地殻変動が起こった年代を求めることもできます。
同様な方法は、原子核のα崩壊で放出されるヘリウムを測定する事でも可能です。
α崩壊によるヘリウムは、ウランやトリウムなどいくつかの放射性元素から放出されますから、
どの分がどの元素から放出されたか考える必要があり、計算は少し複雑になります。
4-4 ルビジウムストロンチウム法(アイソクロン法)
ルビジウム87がストロンチウム87に崩壊(β崩壊)する反応を利用します。この時の半減期は488億年と非常に長いものです。
計算には、ルビジウム85とストロンチウム88という安定同位体(他にもいくつかあります)がある事を利用します。
求め方の基本は次のようになっています。
岩石ができたときには、ストロンチウム87とストロンチウム88は均一に混ざっていますので、どこにあっても、どの鉱物でも同じ割合で含まれます。
ところで岩石中では、ルビジウムはカリウムの多い鉱物に、ストロンチウムはカルシウムの多い鉱物に集まる性質があります。
ここで、年代が経っていった後を考えます。
ルビジウムの多い鉱物からは、ルビジウム87によってたくさんのストロンチウム87が作られます。
そうなると、ストロンチウム88(ストロンチウム全体と考えてもよい)に占めるストロンチウム87の割合が増加していきます。
これに対して、ルビジウムの少ない鉱物では、割合の増加が少なくなります。
現在の岩石で、ストロンチウム同位体の割合が2種類の鉱物の間で違っていても、過去に遡っていけば同じになるときがあります。
この時が、岩石が均一に混ざっていた時代、言い換えれば、岩石ができた時代となります。
このようすを、シミュレートできるようにしてみました。
使われている数値は適当です。年数を変化させて、ストロンチウム同位体比が2種の鉱物で同じになる時を探してみてください。
ルビジウム同位体比は変わらないでストロンチウム同位体比が変わることがわかります。このページを再読み込みした後は、使う前に「データの作成」ボタンを押してください。
これと同様な方法を利用して、ウランやトリウムから鉛ができる反応でも年代を測定しています。
2016.6.10