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散歩道の四方山話 


地震と活断層


 日本列島の内陸部で地震が起こる度に、活断層が話題になってきます。 活断層が地震を引き起こしその近辺では地震の揺れが大きくなりそれに伴って被害が大きくなるからです。 ここでは活断層とと地震の関係について詳しく見ていくことにします


内 容

1.地震断層

水鳥断層  1891年にあった濃尾地震は内陸部であった地震では非常に大きなものでした。 この地震で、被害状況を調べている時に地面(地盤)が大きく食い違っているところがたくさん見つかりました。 その中で最も大きずれた場所が根尾村水鳥地区(現在の本巣市根尾水鳥)のものです(右写真)。
 写真の右手前から左奥に向かって延びる崖は、地震前にはありませんでした。 向こう側の地盤が、上に6m左(向こう側)に2m持ち上がるように動いてできたものです。
 一般に地盤のずれた場所を断層といいます。この崖のあるところが断層ということになります。 断層は地層のずれとして確認されることがほとんどで、地盤がずれ動いたところがわかった最初の例です。
 この地盤のずれたところは、近くを流れている根尾川にぞいの上流部にたくさん見つかりました。 これらのずれのある場所は、ひとつながりであると考えられる事から、それらのある地域の名前をとって「根尾谷断層」と呼ばれています。 他の場所で見つかった根尾谷断層の写真はここにもあります。

 発見されてしばらくの間は、こういう現象もあるのだという程度にしか見られていませんでした。 その後国内でいくつかの地震が起こり、その調査をしていると動いたのではないかとみられる断層が見つかってきました。 その例を、最近のものも含めてあげていきます。
 昭和2年(1927)北丹後地震です。

 丹後半島の付け根の部分を横断するように、断層ができました。郷村断層といいます。 写真の場所では、側溝がまっすぐだったものが断層の動きで、手前側が右斜め下にずれています。 2本の石柱は元々隣同士だった場所を示しています。
 この地震の調査後始めて活断層という言葉が使われたそうです。
郷村震断層

 昭和5年(1930)北伊豆地震です。

 この地震で、開削中だった東海道本線の丹那トンネルがずれたというので有名になりました。 断層は丹那断層といいます。
 写真の場所では、石積の並びがまっすぐだったものが、断層運動で向こう側が左にずれています。 郷村断層と同じように2本の石柱で元々隣同士だった場所を示しています。
 ここにも他の地点のものを載せています
丹那断層

 昭和49年(1974)伊豆半島沖地震です。

 石廊崎の民家の裏にある崖が、半分だけ前にせり出してきた様子が観察され、詳しく報告されました。 これ以外にも、ずれの確認できたところがここから震央方向に向かって多数見つかり、石廊崎断層と名付けられました。 地震が起こる前から断層があったことがわかっていて、それが再び動いたものだということが確認されました。
石廊崎断層

 平成7年(1995)兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)です。

 震央の明石海峡から淡路島の西岸に沿って地面のずれが見つかりました。 そこは前から断層があるとされていた場所です。野島断層といいます。
 シートがかぶっているところの左側の地面が40cmほど盛り上がっています。遠方の民家の塀もずれているのがわかります。
野島断層

 平成28年(2016年)熊本地震です。

 布田川・日奈久断層帯で起こった地震とされています。何本かの断層が動いたとみられ、地表付近でずれの確認できたところは広範囲に分布しています。
 道路が補修されわかりにくくなっていますが、センターラインの曲がりなどから向こう側が右にずれながら盛り上がっていることがわかります。
熊本地震地震断層



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2.地震と断層の関係

 地震が起こると、断層の運動が観察されます。 1回だけならたまたまということもありそうですが、何回も見つかってくると何かの関係があるように思われてきます。 地震が起こって断層が動くという理由はなさそうです。断層が動いたときに、その動きによって地震が発生するのではと考えた方が良さそうです。 このように考えてみると、地震がどうして起こるのかという問題は、 断層はどうしてずれるのか、あるいは、どうしてできるのかという問題に置き換えることができます。
地震でできた壁のひび割れ  右写真は、地震の時にコンクリートの建物の壁にできたひび割れです。「X」の字型に入っています。 かたいものに力が加わった時のひびの入り方は、だいたいこのようになります。岩石の一方向から大きな圧力をかけて破壊する実験をしてみます。 片側だけの「/」や「\」のようになることもありますが、「X」型に割れ目ができるのが普通です。
 この時のひびは「+」ではなく「X」です。力を加えた方向に対して、斜め(45度)の方向になります。 岩石を圧縮しようとすると、コンニャクをつぶそうとしたときと同じように、加わっている力が弱い方向に膨らもうとします。 この時に膨らむ方向にも力が発生しますから、岩石に加わる力(実際にはねじれようとする力)は斜めの方向に伝わっていきます。 この力によって岩石が破壊されると、力の加わった方向※1に対して(加わる力の一番弱かった方向に)斜めにひび割れができます。 このことからわかるのは、岩石(岩盤)に大きなひびが入る方向は、力の加わった方向に対して斜め(45度)の方向である事です。 これを逆に見れば、岩石(岩盤)にひびが入った場合、ひびの方向に対して斜め(45度)の方向に力が加わった事がわかります。 写真の場合は、上下方向か左右方向のどちらかに力が加わった事が読み取れます※2
※1 一番大きな力が加わった方向を最大圧縮応力軸、一番弱い方向を最小圧縮応力軸(地学では引張力は基本的には働かないので)といいます。
※2どちらの場合も同じようなひび割れができますから、これだけではどちらであるかの判断はできません。

 岩石の圧縮破壊実験をすると、岩石が割れるときに大きな音がします。音は空気の振動が伝わったものです。 岩石が破壊されると、岩石で大きな振動が発生し、それが空気にも伝わってたのでしょう(他にも原因はあります)。 これが岩石を伝わってきてその表面で観測されたのなら、地震としてとらえられるでしょう。 このように、断層運動で発生した岩盤の振動が地震の原因とする考え方を「弾性反発説」といいます。
 正しくいうと、断層が動く前に力で変形していた岩石が、元の形に戻る時の振動が地震の原因と考えます。

 実験で壊れた岩石をよく見ると、岩石の全体の長さが圧力を加える前と比べて、圧力を加えた方向に縮んでいるのがわかります。 これは、できたひび割れに沿って、割れた石がずれていったからです。ひび割れに沿って岩石(岩盤)がずれたものが断層といいますから、 圧力が加わることによって断層ができるといえます。
 岩石に上下方向に力を加えたとします。この時にできる「/」型のひびでは左上側が左下にずれていきます。 「\」型のひびでは右上側が右下にずれていきます。どちらも正断層です。これは裏側から見ても同じですね。 横方向に力が加わった時は、横に倒して考えるとわかります。この場合は、どちらも逆断層になります。 もう一つの見方があります。図を真上の方向から見ていると考える場合です。この場合圧縮応力軸は最大、最小のものとも水平方向であると示しています。 できる断層は、右横ずれ断層と左横ずれ断層の組み合わせになります。
 岩盤に「X」型に断層が入っていて、ずれの方向の組み合わせも先ほど書いたようになっていれば、この断層の組み合わせは「共役断層」といいます。

 ひび割れの写真にもどりす。このひび割れがどのようにしてできたのかを考えてみます。
 ひび割れをよく見るとまっすぐ一直線に入っているのではなく、「/\/\/\/\」のようにジグザグになっています。 このひび割れのすき間をよく見ると、横向きに近いものはすき間が狭くてひびがあまりはっきりしないのに対して、 縦向きに近い物はすき間が広く、ひび割れがはっきりわかります。
 「/\/\/\/\」に入ったひび割れの上側が右に動いたとします。その場合、「/」のひびは狭くなり。「\」のひびは広がっていくことになります。 このよう形に、すき間を広げたり狭めたりする方向を考えてみると、写真のひび割れの場合どちらも正断層になるように動いたことがわかります。
 交点のすぐ左上にある「\\」の形のひび割れに注目します。 この部分をよく見ると、剥がれた塗装が、膨らみ盛り上がっています。これは、ひびで挟まれた部分の長さが短くなっていることを示しています。 そのような動きになるのは、上側が右に動いた場合です。この方法での解析結果でも、正断層型の動きである事がわかります。
 杉型雁行配列(「彡」型といった方がいいのかも知れませんが読めません)とは反対の関係になっています。原因は不明です。
 写真の場合の動きは、ずれが小さいので断層といっていいのかどうかわかりませんが、共役断層に相当します。 また、最大圧縮応力軸の方向は上下方向だったということがわかります。

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3.地震からわかる断層

 地震は震源で発生し、そこから四方八方に広がるように地震波が伝わっていきます。 各地には、P波の方が早く到着します。この時の揺れ(初動)は震源から遠ざかるか近づくかのどちらかになります。 遠ざかる場合を「押し波」、近づく場合を「引き波」といいます。押し波になるか引き波になるかは震源の手前側の岩盤が、 近づくように動いた(押し波)か遠ざかるように動いた(引き波)かによって決まります。
 ここで、地震計の記録から簡単に押し波か引き波かを見分ける方法があります。 地震は、必ず地下から伝わってきます。上下方向だけを考えると震源は地下にあります。 初動が上向きの場合を考えてみます。地下方向を見ていると、地面の最初の揺れは近づくようだったので押し波ということになります。 逆に初動が下向きの場合引き波になります。押し引き分布図といいます。

 地図上にその地点が押し波であったか引き波であったかどうかを記入してみます。 下の図は、阪神大震災の時、押し波であった場所を●、引き波であった場所を○で印をつけてみたものです。
阪神大震災押し引き分布図
(この図は、高校生向けの実習としてよく使われるものです)
 ここで●と○の分布域に注目します。よくみるとほぼ直交する2本の直線が分布域の境界になっているのがわかります。 また2直線の交点が、震央である明石海峡にあることも注目できます。 さらに、北東−南西方向に引かれた線は、地震断層である野島断層と平行になっています。 このように見ると、この図は地震断層と関係していることが想像できます。
断層解析図
 押し引き分布図が、地震断層と関係があるのかどうかを考えてみます。
 例として、地表で右横ずれ断層が動いて地震が発生したとします。このとき遠方の観測点でP波がどのように観測されるか考えてみます。 図は上空から見た様子で、F−F’が断層、白矢印のように地盤が動いたとします。 ×印が震央(地表で起こったから震源)で、地震波はAの方向に伝わっていくとします。
 このときP波は、波の伝わっていく方向にしかゆれませんから、白矢印で表されている地震によるゆれのうち、 震源とAを結ぶ方向の成分だけを持って行くことになります。この大きさは、黒矢印で示されています。
 黒矢印の大きさは、AがF−F’と直角方向の位置(破線上)にあるときは大きさが0になります。 そして、それよりF’側にあるときは、P波の伝わる方向に揺れます(黒矢印の向き)から押し波になります。 逆にF側にあるときは引き波となります。また、断層に対して反対側に位置は震源に対して点対称になります。 押しの地域と引きの地域の境界線は、2本の直交する直線で分けられることになります。 2本の直線のうちどちらかが地震断層の方向になるのですが、この図だけではどちらなのかを決めることはできません。
発震機構解解析図
 ここで、図では震源までの距離は関係ないので、代わりに震源を中心とする球面上に投影するとして考えます。 地図上の位置の代わりに、その場所に向かってP波が進んで行く方向の面上に点を打ちます。 こうするともう少し立体的な図を書くことができます。ただこのままでは見づらいので球面の上半分を取り除いてしまいます。 ちょうど、お椀の中を上から覗くような感じになります。このお椀を震源球といい、こうして書かれた図を発震機構解といいます。
 同じような図は、各地の揺れかたなどを詳しく解析することでも作ることができます。モーメントテンソル解(MT解)といいます。 右図は、平成19年能登半島地震の時のものです。 この図では、揺れの中心でのものを示しますので、初動から求めたものと少し違う場合があります。 初動から求めたものを初動発震機構解(初動解)、計算で求めたものをCMT解として区別しています。
 発震機構解は解析から求められたデータをいいますが、震源球で代表させることもあります。


<発震機構解(震源球)の見方>
 押し波域と引き波域の境界は平面になります。これは断層面(かそれに垂直な面)を表しています。 震源球に表した場合は、この平面と球面との交線で表されます。一般的には楕円形の線になります。 ただし、平面が垂直の場合は直線で、水平な場合は外周の円に重なります。大きく曲がった線は傾斜の緩い断層、まっすぐに近い線は垂直に近い断層です。
 震源球に引かれた線によって震源球は2つから4つの領域に分けられます。 この領域の内、押し波の領域は、模様や色で塗りつぶしたりして区別しています。 この中心に印がつけられている事があります。ここが最小圧縮応力軸の方向を示します。 この場合塗られていない(白色の)ところにも印があります。これが最大圧縮応力軸の方向になります。
 ふつう、震源球では最大圧縮応力軸を圧力軸として記号Pで、最小圧縮応力軸を張力軸として記号Tで、 これらに直交する方向を中立軸として記号Nで表します。
 断層の走向方向(どちらの方向につながっていくか)は、外周円との交点どうしを結んだ方向になります。 能登半島沖地震の図では、A−A'かB−B'を結んだ方向のどちらかになります。発震機構解からはそのどちらであるかを判定することはできません。
 下に主な断層に対して発震機構解の図がどうなるかを示します。 ただし、断層の走向は東西方向(横方向)として考えています。
発震機構解模式図
 右横ずれ断層の図を、右に90度回転させた図を考えてみます。左横ずれ断層と全く同じ図になります。 これは、右横ずれ断層か左横ずれ断層かは発震機構解からはわからないことを示しています。 断層が2本の線のうちどちらか確定できないからです。 正断層・逆断層の場合でも、同様に断層面がが北落ちなのか南落ちなのかは区別できません。 それでも、最大圧縮応力軸の方向はわかります(色の塗られていないところの中心です)から、 どのような力によってできた断層(地震)か確定することができます。

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4.平成30年(2018年)大阪府北部の地震

 平成30年(2018年)6月18日午前7時58分に大阪府北部を震央とする地震がありました。 地震のマグニチュードは6.1、震源の深さ13km、最大震度6弱です。この地震について、断層との関係を見ていくことにします。
 図は気象庁から発表された発震機構解です。左側が初動解、右側がCMT解になります。
発震機構解
 どちらの図も塗りつぶされた部分の形に注目してください。初動解では葉っぱのような形になっています。これは逆断層を示しています。 詳しくいうと、走向(断層の伸びの方向)が南北で東上がりの断層か、走向が北北東−南南西で西上がりの断層かどちらかになります。
 CMT解です。線を境にして塗りつぶされていません。線のところで塗りつぶされているとみて考えてください。 「⧗」に近い形ですが、交わっているところが真ん中ではなく下(南)にずれています。 基本的には横ずれ断層です。ちょっと逆断層の動きが入っています。 走向が北東−南西で南東側が上がった逆断層ぎみの右横ずれ断層か、北北西−南南東で西側が上がった逆断層ぎみの左横ずれ断層かのどちらかになります。
 どちらの図からも、Pと書かれた場所が西または東に近い場所にあります。地震は東西方向に圧縮されたことによって発生した事をしめしています。

 2つの発震機構解の示す断層が違っています。これはどういうことでしょうか。 初動解でわかるのは最初に地盤がどのように動き始めたかということです。 CMT解では地震の時に地盤全体がどのような動きをしたかということがわかります。あわせて考えるとこの地震では、 動き始めは逆断層的に動いたものの、地震全体では横ずれ断層であったことを示しています。

余震分布  次に地震の断層を確認することにします。最初に、前震・本震・余震の震央分布図を書いてみます。 気象庁のサイトから本震前日から約2週間分の震源データをダウンロードし、 震央近辺区域内の震央分布図を書き、地理院地図の該当区域に重ね合わせてみました。 震源データは、発表直後のもので暫定値とされています。大きな地震は大きな円で、浅い地震ほど黄色っぽい色になるように書いています。 分布図が格子点になっているのは、発表されている震源の経緯度が角度の分の単位で小数第1位までの精度で書かれているからです。
 震央分布図を見ると、震央は半径約3kmの範囲内にかたまっていて、直線的な分布はないように見えます。 それでも眺めていると、本震の震央から南西方向と北西方向へ伸びているように見えます。「>」の字型に分布しているようです。 さらにうっすらですが、その反対方向でもやや余震が多くなっているようです。 なんとなく、「X」の字型にも見えてきます。

 そのように見ると、共役断層の交差部を中心にして西側の2つの断層が動いたようにみえます。 本震は交差している場所近くで揺れ始めています。 その後の動きはCMT解とあわせて考えてみると、南西側に延びる断層は右横ずれ運動、北西側に延びる断層は左横ずれ運動になります。 「>」で挟まれた西側の部分は、外側に比べて東側に移動します。 これは、国土地理院が発表した箕面−宇治間で距離が縮まった(5mm)という観測結果とも一致します。
※大阪府北部の地震に伴う地殻変動(第3報);交野−亀岡間(南北方向)で4mm伸びたとも記されています

余震分布と震源球  共役断層の交差部では地盤の動きはどうなるのでしょうか。このあたりについては、詳しいことはよくわかっていません。 そこで今回の地震について、入手できるデータから読みとれる範囲でどうなったのかを考えてみることにします。
まずは、気象庁から発表のあった初動発震機構解(約1ヶ月間の暫定値)をその経緯度の位置に置いてみました。 軸の数値は経緯度の分の値、大きな球が本震で、残りのものは余震です。震源が深くなるにつれて黄→赤と色を変えています。
 どのように読み取るかは様々あるかも知れませんが、感じたとおりに書いていきます。
 防災科学技術研究所は、地震発生直後の発表で、震央より南では横ずれ断層が北側では逆断層型の地震が発生していると書いていました。 その後の発表文ではこの文面は削除されています。以下の内容はほぼこれからの考察になっています。

 まず震源球の種類に注目します。横ずれ断層型と逆断層型の2種類が混在しています。 本震の震央を中心にしてみると、南側の3地点は横ずれ断層型です。 この3つ震源球から読み取れる断層の走向方向は2つあります。 そのうち、3地点の震央の並びやこの区域の余震の震央分布と一致するのは、北東−南西方向のものです。 これが断層をあらわしているでしょう。断層は北東−南西方向にのびる右横ずれ断層になります。
 本震の震央より北側に注目します。本震の震央から北西方向に並ぶ7地点の震源球は逆断層型です。 震源球の示す断層の走向方向のうち、この方向に近いのは、北北西−南南東方向です。この場合は東側が持ち上がった逆断層になります。 わずかに余震の震央分布の方向とずれています。
 残った3地点は横ずれ断層型になっています。ほとんど単独の分布なので、右ずれか左ずれかは判別できません。
この文章の掲載直前に起こった8月28日の余震は、本震の震央のすぐ北北東側が震央になりますが、横ずれ断層型の初動発震機構解が発表されています。


 本震の発震機構解とあわせてみると、本震は北側の逆断層と南側の右横ずれ断層が同時に動いたといえます。 一般的には2本の断層が動いたと解釈されますが、断層は真っ直ぐ伸びるもので変位(ずれ)もほぼ同じであるという考えに縛られたものです。 単に「>」字型の割れ目に沿って東側の地盤が一体となって西側に乗り上げながら移動していっただけなのかも知れません。

 どのように動いたとしても、断層ができた各部分では、ほぼ東西方向に圧縮力が加わっている点は共通しています。 この力によって、横ずれ断層ができるか、逆断層ができるかの違いを考えてみます。
 横ずれ断層は最小圧縮応力軸が水平方向の場合にできるのに対して、正断層は垂直方向の場合にできます。 岩盤に加わる上下方向の力は、基本的には上にある岩石の重み(圧力)による力です。同じ深さなら、同じ大きさであるといっていいでしょう。 これが最小圧縮応力軸になるかならないかの違いは、南北方向の力がこれより大きいか小さいかによります。
 断層のずれによって地盤が動いた先では、その方向に圧縮力が加わります。2方向ある断層の交わるところでは特に大きくなります。 この力が大きくなって、上下方向の力よりも大きくなれば、逆断層となるでしょう。
 南北方向の力が同じでも、上下方向に加わる力が小さくなれば、最小圧縮応力軸が垂直方向となり、逆断層となります。 浅い場所では、岩石による圧力は小さくなります。同じ断層でも、地表に近くなれば逆断層となることもあります。 この地震では、余震の震源球を見る限りでは、深さによって断層の様子が変わっているようには見えません。


この節で使ったり参考にしたデータの入手元です。(2018年8月最終閲覧)
震源リスト
http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/daily_map/index.html
発震機構解(震源球)
http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/mech/ini/top.html
http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/bulletin/eqdoc.html#table5
http://www.hinet.bosai.go.jp/AQUA/aqua_catalogue.php?LANG=ja
http://www.fnet.bosai.go.jp/event/joho.php?LANG=ja

2018.08.31ここまで掲載
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5.活断層を見つける

 活断層が動くことによって地震が発生するとなると、活断層がどこにあるのかということが気になってきます。 活断層を見つける方法がないのか、あるいは活断層のありそうな場所を知る手がかりのようなものはないのかということについてまとめてみます。
 活断層は、この数十万年の間に活動したことのある断層または、または将来再び動く可能性がある断層をいいます。 この数十万年の間に活動した断層は、一般的には将来動く可能性があると考えられます。 一般的な地殻変動は数百万年の間に渡って起こることが知られています。数十万年以内ならその範囲に収まっている上に、 その地殻変動の期間がまだまだ続くであろうことが予測されるからです。
 断層がいつ活動したのかは、その断層によってずれ(変位といいます)のできた地層の年代を測定することによって求められます。 実際には活動した可能性がある年代よりも古い数値になりますが、 少なくとも地層から求められた値が数十万年前なら活断層と言える範囲に収まっています。

<断層の特徴>
 断層というのは、鉱山で鉱脈を採掘しながら追いかけていると突然その鉱脈がなくなってしまう現象をfaultと呼んでいたことに由来します。 鉱脈が途切れていても、その破断面に沿って上か下の方に掘り進めていくと再び鉱脈に出合うことができる事もわかってきました。
断層  この現象は、鉱脈が破断面に沿ってずれているために生じたと考えることができます。 断層とは地層が破断面に沿ってずれている現象と言い換えることができます。 英語ではfaultをそのまま使っていますが、日本語では断層と訳されています。 破断面を断層ということもありますが、ここは断層面と呼んだ方が正確でしょう。
 右写真は、鹿児島県薩摩川内市下甑島夜萩円山公園に見られた地層中の断層です。 黒い地層(泥岩層)の中に挟まっている白っぽい層(砂質泥岩層)が途中で途切れているのがわかります。 マウスを図に重ねると、断層の位置と地層のずれのようすが示されます。

断層  断層がずれ動くときに、断層面の両側にある岩石が強く擦りあわされ、岩石が砕かれることがあります。 断層面には、このようにして砕かれてできた岩片や粘土状の物質が詰まっていることがあります。 このような場所を断層破砕帯といいます。
 右写真は、大阪府茨木市の安威川ダム建設現場近くの崖に露出していた馬場断層です。 右斜め上方向にまっすぐ木が生えていないところに断層があります。 この場所の場合は川の流れがぶつかるところにあるため、木が生えても破砕帯のある所はすぐに崩れ落ち、断層が露出します。 崩れた土砂は、川の流れですぐに運び去られていきます。
断層破砕帯  断層破砕帯に詰まっている、粘土状の物質を「断層粘土」、砕かれてできた石を「断層角レキ」といいます。 右写真は、馬場断層の断層破砕帯部分の拡大です。
 灰色で縞模様の見える部分はジュラ紀付加体の岩石です。薄い青色をしたところが断層破砕帯のうち断層粘土が多い部分、 その上の薄い灰色の部分には断層角レキが詰まっています。
 断層破砕帯の粘土や角レキを取り除いて断層面を露出させてみると、つるつるに磨かれていたり、 一方方向にに細かい筋がいくつも並んでいたりすることがあります。磨かれた面は「断層鏡肌」、細かい筋は「断層擦痕」といいます。 このようなものを見つけることで断層を確認することがあります。
   写真2枚は「大阪の生い立ち(DVD板)」大阪地学教師グループ編の原板から引用しています。


 当サイト内、他のページなどに載せられている、断層関連の写真をあげてみます。
断層破砕帯
和歌山県橋本市中央構造線の断層破砕帯です
断層破砕帯
新潟県糸魚川市の糸魚川静岡構造線
看板の間に破砕帯があります
断層破砕帯
広島県三段峡の断層破砕帯
削り去られて溝状になっています
断層擦痕
熊本県天草市の断層擦痕
縦方向に筋が見えます


撓曲  百万年ほど前に堆積した地層は、地殻変動の影響をそれほど受けていないので、ほとんど水平な地層として観察されます。 ところがまれに、大きく傾いていることがあります。傾いている方向や反対の方向に地層を見るとすぐに水平に近くなるのに対して、 傾いているのと直角の方向(走向といいます)には地層の傾きが延々と続きます。
 地層はスコップで掘ることができるほどやわらかいのが特徴です。 そのために、断層の上に乗っている部分が切れずに引きずられて傾いたと考えられます。 このような地質構造を「撓曲(とうきょく・フレクシャー)」といいます。
 右写真は、大阪府箕面市の宅地造成中に見られた大阪層群(100万年ほど前の地層)が傾いているようすです。 この地下には断層があると考えられます。大阪層群を変形させているので、断層の活動はこれより新しいといえます。これは活断層でしょう
撓曲  大分県姫島で見られた撓曲です。水平な地層が曲げられているようすがわかります。  曲がっているところでは地層がずれているようすも見られます。

 断層破砕帯は地下水の通り道となることがあります。そのために、断層に沿って湧水や温泉が湧き出しているところも見られます。 大阪府箕面温泉や兵庫県宝塚温泉・有馬温泉は高槻有馬構造線の断層に沿って湧き出したものといわれています。

<地形に現れる断層>
 断層は地層だけではなく、地形をもずらすことがあります。実際にずれることによってできた地形も確認できます。その例を挙げてみます。 このようにしてできた地形は、数十万年もすると侵食によって形が崩れてしまったりしますので、 形がきれいなものであれば活断層と推定できます。

垂直ずれ断層による地形 垂直方向の変位によってできる地形 平らだった地面が前を横切る断層によって向こう側が盛り上がったとします。 向こう側の地面は高台となり、その間に崖ができます。この崖は「断層崖」と呼ばれます。
 盛り上がった部分は、降った雨が集まって流れることで谷ができだんだん浸食されていきます。 断層崖も「V」の字型に削られ、形が台形から三角形へと変化していきます。このようになったものは「三角末端面」といいます。
 断層崖や三角末端面に似ている地形は、断層でなくてもできる事があるので、最終的には断層を見つけることで確定する必要があります。 長い距離に渡ってたくさん並んでいるというようなことがあれば、断層である可能性は高くなります。
断層崖
福井県南越前町の断層崖です
甲楽城断層が通っています
中央構造線四国
上空から見た四国東部の中央構造線です。


右横ずれ断層による地形 水平方向の変位によってできる地形 谷や尾根を横切るように横ずれ断層が動いたとすると、 断層によって尾根線や谷線にずれが生じます。単に谷や尾根の食い違いとかずれと呼んでいます。正式な用語はないようです。 このようなものがいくつも横に並んだ場合は断層があると推定できます。 右図に右横ずれ断層によって谷や尾根がずれたようすを模式的に書いてみました。
 尾根がずれて谷をふさぐ場合があります。このような尾根を「閉塞丘」といいます。 閉塞丘によって上流側にある谷の流れが悪くなり水がたまることがあります。堰き止め性断層池と呼ばれることがあります。 逆に谷の上流部がなくなってしまった場合は截頭谷(せっとうだに)といいます。 ふつう水が流れなくなった谷を風隙(ふうげき)といいます。截頭谷は風隙になっていることもあります。
山崎断層  右図は、兵庫県中国自動車道揖保川PA付近の地形図です。地理院地図から転載しています。 自動車道を横切るように谷や尾根がいくつか見られます。この谷や尾根は自動車道の山側で左側にずれているのがわかります。 ずれている場所をつないでみると自動車道の山側に平行に延びていることがわかります。 この場所に山崎断層が通っています。断層のずれは左横ずれと読み取ることができます。 マウスを重ねると、尾根線(オレンジ色)、谷線(青色)、断層線(黒色)を表示します。

ケルンコル 断層破砕帯の侵食によってできる地形  断層破砕帯は岩石が粉々に砕かれてできています。そのために、侵食に弱く、雨水や川の流れによって削られて低くなっていることが普通です。
 尾根を断層が横切っている場合を考えてみます(右図)。断層部分は削られて低くなり鞍部になります。 ここから尾根の先はふたたび高くなって丘のようになります。 鞍部をケルンコル、丘状の部分をケルンバットと呼んでいます。
 このような地形は、断層がなくてもできることの方が多いのでこれ単独では断層があるかどうかの判定はできません。
いくつも並んでいるといったことで断層があると推定します。少なくとも断層があるという場所の候補を見つけることができます。
 地理関係者は、ケルンコル・ケルンバットは外国では通用しないから、断層鞍部・断層突起(断層小丘)と呼ぼうと提案しています。 ここではアメリカの地質学者が提唱したこともありケルンコル・ケルンバットを使うことにします。 断層鞍部とかにすると断層を確認できるまではそう呼べないことになります。 なお、ケルンバットに対する用語はあまり定着していないようです。

中央構造線  断層のある所は侵食されやすいので谷になっている事がよくあります。 また、断層は真っ直ぐ延びますから断層によってできた谷もまっすぐになります。「断層谷」ということもあります。  谷が途切れた先でケルンコルを越えて、別のまっすぐな谷につながるっていくこともあります。 このようなものを、地形図や航空写真でみるとまっすぐな線を確認することができます。このような線を「リニアメント」といいます。
 リニアメントも断層のある場所の候補を見つけるのに使われます。 延々と続いているとか、他の断層地形も見られるといったことがあれば活断層と考えることができます。
 右写真は、長野県大鹿村から飯田市にかけての中央構造線が作る谷の写真です。飛行機と平行に谷が続いています。  

 次に、2007年能登半島地震を起こした断層を探してみることにします。この地震の発生後には、活断層がどこにあるかと問題になりました。 カシミール3Dで、震源球から推定できる断層の延び(走向)の方向に震央付近が来るように、上空からから見た図を作図させてみました。 高さを2.5倍に強調しています。
 図中で、矢印を結ぶ線上に真っ直ぐに谷が延びているのがわかります。 この場所は、門前町舘分から小石にかけての場所で、地形図からは約15kmにわたってリニアメントが認められます。 地形図からは、これと平行なリニアメントが多数見られること、震源球から推定される断層の傾斜が緩いことから これが地震を起こした活断層であるとは考えにくいようです。
 2007年3月29日にこの北5kmの門前町中野屋・安代原・道下・鹿磯で見つかったという新聞報道がありました。
震央からの鳥瞰図
2021.08.15この節掲載
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  2007.03.27「能登半島地震と活断層」として掲載
2007.03.29   一 部 修 正      
2018.08.31「地震と活断層」に全面書換え開始 
2021.08.15「5.断層をみつける」を追加掲載 





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